⑤ 帰り道からの
「成る程。同じ理由で、私たち"アヌンナキ"も神ですものね?」
若き カグヤ・イシュタルが、相槌を打った。
「……つまり、そういう事実から察するに、神や悪魔などと、ニンゲンに呼ばれている当事者どうしは、"必ずしも敵対関係に有るとは限らない"、って事になりませんか?」
成雪が呟くようにそう言った。
「……ああ、確かに!」
カグヤも気がついたようだ。
それに対して、サン・ジェルマンは……黙っていた。
やがて黒いビートルは、照和の時間軸の、真田研究所内にある、中庭に到着した。
「お疲れ様。着きましたよ。」
伯爵が運転席を前に倒して、さり気なく、後席のカグヤをエスコートする。
「ありがとうございます。」
レディとしての扱いに、お礼を言うカグヤ。
「……ああ、そうそう、お二人とも。」
帰り際に、思い出したように、サン・ジェルマンが言った。
「せっかく私の、ポータブルタイムマシンを貸してあるのですから、今後はお二人だけで、"照和"の時間軸内の、歴史探索をしてみては如何ですか?」
「えっ、いいんですか?」
思わず成雪が訊き返す。
「今日見たところ、キミも、自分のチカラを使いこなせているようてす。カグヤさんが一緒なら……多分、大丈夫でしょう。」
「ありがとうございます。」
カグヤと成雪が、ユニゾンでお礼の言葉を述べた。
「他ならぬこの私が、正式に許可しましょう。サン・ジェルマンの名の元にね?」
伯爵がニヤリと笑いながら、冗談めいた感じでそう言った。
「……それ、ご自身でも言うんですね?」
カグヤが笑った。
「じゃあ、私はコレにて。お二人とも、お元気で。」
伯爵はそう言うと、クルマに乗り込み、すぐに垂直上昇して消えてしまった。
二人は部屋に戻ると、食事を摂り、シャワーを浴びて一息ついた。
カグヤが、バスタオルを巻いて、浴室から出ると、先にシャワーを済ませた成雪が、早速、歴史の資料とにらめっこして、次の予定を検討していた。
「あら、熱心なのね?」
髪を拭きながら声を掛けるカグヤ。
「世界には、不思議な事がこんなに有るのに、どうして一般のニンゲンたちは、調べようとしないんでしょう?」
成雪が疑問を投げ掛ける。
「みんな、日々の生活に忙しいのよ。だから、過ぎ去った歴史の謎になんか、構っていられないのね。」
カグヤが、そんな見解を述べる。
「……それに、誰もがみんなタイムマシンを持っている訳ではないしね?」
「ああ、確かに。そりゃあ、そうか。」
成雪は、今更ながらに、その事実に思い当たって、
笑ったのだった。




