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「神と悪魔とサン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第26巻)  作者: サナダムシオ


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㉘ 帰還の前に

「分かった。考えておこう。」侯爵は素直にそう答えた。

「私たちはここを離れても、ずっと貴方の事を観察することが可能なのよ。それをよく覚えておくようにしなさい。」

 京子は念を押すように、彼にそう言った。


「ああ、そうかい。そう言えばヤツも、似たような事を言っていたな……。」

「ヤツって、フルカネルリ卿の事ね?」

「うん、うん、そうだ。最近アイツ、まったく姿を見せなくなったな。俺の友人の中でも、特に面白いヤツだったが、一体どうしているのやら……。」

(最近はすっかり、ウチのサロンに入り浸っているけどねえ。)

 由理子はそう思ったが、黙っておいた。


「ところで、もういいだろう?この脚についた氷の塊を、そろそろ何とかしてくれないかな?冷たくて仕方がない。」

 気がつけばすっかり唇を青くして、侯爵は本当に寒そうだった。

「階下のメイドに頼んで、お湯を運んでもらいなさい。バネ付きの靴を見られたら、口止め料でも渡せば済む事だわ。カネなら有るんでしょ?……ああ、このメイドはダメよ。ウチの大切なメンバーなんだから。」


 京子は、自分のカラダで由理子をガードしながら、そう言った。言われた由理子は、嬉しそうに胸を張って、誇らしげだった。


「じゃあね、侯爵さん。もう会う事も無いでしょう。立派な義賊になるのよ……ああ、それから今後は、貴方の模倣犯が多数現れて、その全ての犯罪が貴方のせいにされるけど、仕方の無いことよねえ?」


 京子はそんな捨てゼリフを残して、怪人だった男に手を振った。そしてアッと言う間に、その場に氷の階段を作り、それを使って、由理子とともに、天窓から屋根の上に出て行ってしまった。


「見たことも無い黄色い服を着て、メイドを連れた、高飛車で、不思議な術を使うアジアの女め……だが、嫌いじゃないな。」

 二人を見送りながら、性懲りも無くそんな事を呟く、女好きのウォーターフォード侯爵であった。


 京子はその後、由理子と二人でビートルに戻ると、ナビのリセットボタンを押して、帰路に就いた。

 時空転移中、京子が由理子に語り掛ける。


「あんなお貴族様の悪ふざけの余波が、その後100年近くも続くのよ。迷惑な話よね?それに加担した、フルカネルリ卿にも腹が立つわ。」


「でも、悪魔とかじゃなくて良かったです……ニンゲンなら話せば分かるから。」

「そうかしら?私はどんなバケモノよりも、この世で一番恐ろしいのは、ニンゲンだと思っているのだけれど……。」


「或る意味、そうかもしれませんね。」

 由理子も、寂しそうに笑って同意した。

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