㉒ 干渉する者
フルカネルリ卿は、まだ語る。
「私が衛星軌道上から、キミたちの時間軸の、地球の歴史を見つめ始めて、はや、1万3000年余り。キミたちは何度も、人類滅亡の危機を迎えた。」
黙ったまま、話を聞くサン・ジェルマン。
「だがその度に、私が干渉して、数々の危機を乗り越えて来たのだ。それなのに、未だに核兵器の開発をやめない。いや、むしろ、世界中に増える一方だ。どうしてこの時間軸のニンゲンたちは、死に急ぐのか。さっぱり解らない。」
「……それは、否定出来ない。耳が痛い話だ。」
サン・ジェルマンは、やっとそれだけのセリフを言った。
言いたい事を、言うだけ言ったフルカネルリ卿は、伯爵を言い負かした形になって、すっかりご満悦の様子だ。
「まあ、キミを責めても、仕方の無い事だ。我ながら大人げ無かった。キミも言わば、コチラ側の立場のニンゲンだからな。これまでも、さぞや、気苦労が絶えなかった事だろう。心中お察しするよ。」
フルカネルリ卿は、最後に同情の言葉を付け加えた。
「……それで、そんな英雄のような行ないを、これまでずっと続けてくれたキミから見て、現時点から一番近い、この時間軸の危機は、やはり?」と伯爵が尋ねると、彼はこう答えた。「そうだ。次にキミたちに危機が訪れるのは、もちろん……"1999年7月某日"だ。」
「……"アンゴルモアの大王"か。それがナニを意味するのか、流石のキミにも解らないんだな?だからあの日、わざわざ名護屋のテレビ塔まで来て、私にも警戒するように、ヒントを与えた。そうだな?」
「らしくなって来たじゃないか、伯爵。私は嬉しいぞ。ひょっとしたらソレは、核兵器による危機かもしれないし、異星人や異世界人による侵略かもしれない。だから、天使や神の存在ばかりを追うのではなく、悪魔にも着目するように、キミの思考を誘導したのだよ。」
「……それは、つまり、いざとなったら、我々のチカラになってくれる、という解釈で合っているのかな?」
眼を薄く開けて、サン・ジェルマンが尋ねる。
「今更ナニを言っているのだ?キミ自身が、いつも言っているではないか。" Heaven helps those who help themselves .(天は自ら助くる者を助く)"だよ。」
フルカネルリ卿は、そんな風にうそぶいて笑った。
「……成る程。私より数段上の科学力を持ち、神に近い振る舞いをしているキミにこそ、相応しいセリフ、という訳かな?」
伯爵も、そんな言葉を返した。




