㉑ またもやキミか
少し待っていると、部屋の自動ドアが開き、この人工衛星の船長が、颯爽とやって来た。それは、サン・ジェルマンが、ある程度予想していた人物だった。
「やあ、よく来たね……いや、むしろ、"やっと来たね"と言うべきかな?」
ニヤニヤしながら、入ってきたのは、これまたヴィクトリア調の衣装を着た、フルカネルリ卿だったのだ。燕尾服のようなスーツに合わせて、ご丁寧にシルクハットまでかぶり、今日も右目に片眼鏡をかけている。
「やあ、フルカネルリ卿。なかなかイイ船じゃないか。ところでコレは、いつ頃、拿捕したんだい?」
特に驚く事も無く、言葉を返す伯爵。一方、鷹志は、眼を白黒させていた。
「えっ?フルカネルリ卿が……何故こんな所に!?」
「ほらほら、リアクションが薄いぞ、伯爵。そちらの坊やのように、もっと驚いてくれないと!」
そんな事を言いながら、まだニヤニヤしているフルカネルリ卿。
「いや、私以外の誰かが、コレに干渉するなら、キミしか居ないと思っていたからね。だから、さほど意外でもないのだよ。私よりキミの方が、一歩早かったという訳だ……それより、私の質問の、答えを訊きたいな。」
「失礼。何だったかな?……ああ、そうそう、その質問に対する答えは、"不正解、再提出"だよ。」
そう言うと、更にニヤニヤするフルカネルリ卿。
するとサン・ジェルマンは、少し考えてから、こう言った。
「……まさかこのブラックナイトは、"キミ自身の作品"だと言いいたいのか?」
「もちろん、その通りさ。」
彼はいよいよ、得意げにニヤニヤする。
「伯爵、キミが地球という、"地べた限定"の並行世界の旅で満足している間に、この私が先に、キミたちの世界の、宇宙空間の制空権を掌握したという訳さ。」
「でも、この衛星は、1万3000年程前から、地球の軌道上に有ったって……あっ、まさか!?」
鷹志が何か言いかけて、やめた。
「……その通り。私がその時代に、コレをキミたちの地球の軌道上に、"歴史監視衛星"として設置したのさ。つまり私自身は、他の時間軸からやって来たのだ。そしてこれまでずっと、キミたちの"昭和"の時間軸の過去に、干渉していたという訳なのだよ。だからそこに居る、この時間軸上の伯爵とは、たった50年程の付き合いに過ぎないのさ。」
フルカネルリ卿が、自慢げにそう語った。




