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「神と悪魔とサン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第26巻)  作者: サナダムシオ


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19/31

⑲ 元神童の本懐

 それは、西暦1994年2月10日の木曜日。

 時刻は、午前10時頃の事である。


 あの日、後方支援に徹すると決めた杉浦鷹志は、ナニか吹っ切れたように、それから毎日、技術開発に没頭した。そしてその成果は、サン・ジェルマン伯爵専用の、黒いワーゲンビートルの改造アップデート版として、結実したのだった。


「伯爵、遂に完成しました。今日辺り、試運転するのは、如何でしょうか?」

 或る日、鷹志はそんな風に提案した。


「鷹志君、お疲れ様。よく頑張ってくれましたね。やはりキミは、私がかねてから睨んでいた通りの、天才ですよ。今日はちょうど、他のメンバーも出払っている事ですし、二人きりの秘密実験と行きましょうか。」

 伯爵もそれを、快く承諾した。


 名護屋テレビ塔の地下駐車場には、いつも通り、伯爵の黒いビートルが置かれていた。

「パッと見た感じ、特に変わり無いようですが……?」と伯爵。


「如何にも改造しました感のあるチューニングは、ボクの好みに反するので……良くあるじゃないですか?大げさなスポイラーやウイングを付けた改造車が。」

と鷹志。


「ああ、成る程ね。」

「目立ちませんが、隙間という隙間には、念入りなシーリングが施されていますし、内部のフレームも、軽くて丈夫なモノに交換済みです。もちろん、専用のエンジンを積んでいます。中身で勝負なんですよ。」


「まさに、"羊の皮を被った狼"という訳ですね?」

「はい。先ずは是非、お試しになって下さい。」

 伯爵は運転席、鷹志は助手席に乗り込むと、伯爵が座標をセットする。緯度、経度はテレビ塔のままだ。


 彼はクルマを地下駐車場から出すと、光学迷彩を掛けたまま、垂直上昇させた。ただ、いつもと違うのは、何処までも上がって行くのだ。


 やがて、黒いワーゲンビートルは、衛星軌道上まで来ると、そこで姿勢を安定させた。

 そうなのだ。今回の鷹志の発明品は、ビートルに宇宙まで、飛び出す機能を持たせる事だったのだ。


 これでついに、サン・ジェルマンのチームも、犬族・猫族・鳥族・爬虫類族に続いて、宇宙空間を含めた、全ての時空移動のチカラを、手に入れたのである。


 もちろん試運転と言えども、今回もちゃんと、調査対象となる、アヤシイヤツが居るのだ。

 それは、何を隠そう、1万3000年前から地球の衛星軌道上に存在して居るとされている、有名な謎の人工衛星"ブラックナイト"なのである。


挿絵(By みてみん)

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