⑮ 二人の発明品
その一部始終を見ていたサン・ジェルマンは、ビートルをジープの後ろに停めた。そして頭にナイトスコープ付きのヘッドギヤを装着し、ガジェットの入ったカバンを背負った鷹志と二人でクルマから出ると、ジョンの後を追って行く。
因みにこのヘッドギヤも、二人の発明品だ。下手に懐中電灯など使ったら、こちらの所在がバレてしまう。色々と不都合な事になるので、それは避けたかったのだ。
先を行くジョン・アーウィンを見失わないように、しかし気づかれないよう、慎重に距離を取ってついて行く。やがて行く手の道が開けて、広場のようになった場所に出た。
そこでは、先程のバケモノとジョンが、少し離れて睨み合いになっていた。彼はライフルを構えている。当然の事である。相手は彼の長年の経験の中でも、およそ見た事の無い、生き物なのだ。
状況を確認した鷹志は、早速、持って来た光学迷彩ネットを出し、発射装置のターゲットを、ジャージーデビルにセットして、発射した。すると、ネットは正確に飛んで行き、バケモノに被さると、その姿をすっかり隠してしまった。
キョロキョロと辺りを見回すジョン。しかし、やがて捜すのを諦めて、彼は去って行った。
それを見届けた二人は、ゆっくりと光学迷彩ネットに近づいて行く。そして慎重に、その透明モードを解除した。中のジャージーデビルの姿が露わになる。
成る程、確かに"デビル"と言われるだけの事はある。見るからに不気味な姿だ。しかし、もしも毛並みが白く、翼も白い白鳥のようなモノなら、ペガサスと呼ばれただろうに……。
所詮はニンゲンの都合の、ルッキズムなのではないのか?鷹志は、何だかそのバケモノの事が気の毒になった。そして思わず、その赤い瞳を見つめながら、フラフラとソレに近づいて行ったのだ。
「危ない!」
伯爵がそう叫ぶのと同時に、ネットに電撃が走った。中に居るバケモノが、不気味な叫び声を上げる。間一髪だった。もう少しで、そのバケモノの細長い腕についた鋭い爪が、鷹志に突き刺さるところだったのだ。
「鷹志君、気を確かに!そいつの眼を、そんな風に見つめて危険だ。残念ながらその生き物は、ドーバーデーモンと違って、友好的なモノではないのだよ。」
「あ、ありがとうございます。」
鷹志は、催眠から解放された気分だった。
「むしろそいつは、英国デヴォン州のバケモノに近いモノだ。ニンゲンの魂のエネルギーを食い物にする、いわゆる悪魔だよ。不本意ながら我々の手で、始末しなければならない。」




