第十九 法華経を馬鹿にして読んだら、口が曲がって悪報を受けた話
昔、山背国(やましろのくに=今の京都府南部)に、名前もわからない一人の男がいた。
この男は囲碁が大好きで、毎日囲碁ばかり打っていた。ある日、沙弥(僧の卵)と在家の白衣(在俗の人)が一緒に囲碁を打っていた。
そこへ托鉢の僧がやってきて、『法華経』の一品を読みながら物乞いをした。
沙弥はそれを聞いて、軽蔑したように笑いながら、僧の読み方を真似してわざと変な声で読み上げた。
「へへっ、こんな読み方だろ?」
一緒に囲碁を打っていた白衣の人は、それを聞いて顔色を変え、恐ろしそうに言った。
「やめろ……怖いぞ!」
その後、不思議なことに——
囲碁の勝負では、白衣の人が毎回勝ち、沙弥は毎回負けていた。
ところがその時から、沙弥の口が急に曲がってしまった(口が斜めになった)。薬を塗ったり治療したりしてみたが、まったく直らなかった。
『法華経』にはこう書いてある。
「もし法華経を軽く笑い、馬鹿にする者がいれば、その人は来世来世で歯が抜け落ち、唇が醜く裂け、鼻が平べったくなり、手足がねじれ、目が斜視になるだろう」
まさに、この沙弥の話はその通りになったのだ。
たとえ悪鬼にでも頼むような、でたらめなことをたくさん言ったとしても、法華経を唱える人だけは、絶対に馬鹿にしてはいけない。口の業(言葉の罪)は、特に気をつけなければならない。
解説
この第十九話は、『法華経』自身が「経を軽んじるとこんな恐ろしい報いがある」と警告している部分を、実際の出来事として示していた巻です。




