クレイの言い付けは守られてない
新人扱いされている為、俺はこの船のなかを自由に歩き回れる許可が出されていた。
なので、そのお供としてジルハと一緒にドルチェットを探し始めた。
どうやらあの豪華に飾り付けられた部屋が嫌で逃げ出したらしい。
わからなくはない。
「ディラどこ行くんだ?」
「ディリーさん」
途中、大量の荷物を持ったディリーと遭遇。
「ここらで白銀の髪の女の子見ませんでした?」
「いんや?見てねぇ」
「そうですか」
見てたら止めるか戻れと言うもんな。
というか。
「前見える?それ」
明らかに視界を阻害しているほど積まれた荷物。
ディリーは、ふ…と笑いながら首を横にゆっくり振った。
だよね。
「半分持とうか?」
「たすかるぜー」
ジルハも手伝い荷物の1/3ずつ持って歩く。
大半が干す前の洗濯物。
「白銀の髪の女の子見ませんでした?」
「さあ?」
通りすがりに船員達に訊ねるも誰も見てない知らないという。
あんなに目立つのにな。
探すと見付からないもんだな。
下部の倉庫に食糧を置きに来た。
その際にノクターンが鐡馬とロエテムの二体と戯れている様子を目撃。
イキイキとノクターンがフリスビーを投げ、それを追い掛けて捕獲次第戻ってくるという遊びだ。
「……うん」
ツッコミを入れちゃダメな奴だと判断。
ふと隣のジルハを見ると目をキラキラさせていた。
ん?俺の常識がおかしい?
「!! …あっ、…ディラさんに…ジルハさん…」
こちらに気付くやそそくさとフリスビーを背中に隠した。
遊びが中断されてされてあからさまにテンションが下がる鐡馬とロエテム。ごめんね。
「ノクターンさん、ドルチェット知りません?」
今度はジルハが訊ねた。
「いえ…、見てないですね…」
「んんー?えー、じゃあどこだ?」
此処でもないならまったく見当がつかない。
「ドルチェットさん…いないのですか…?」
「うん、ちょっと姿がないから心配になって」
「……」
ノクターンが考える。
「……役に立つか分かりませんが…、お昼頃にそちらの部屋で何か探し物をしてましたよ…」
「探し物?」
「はい…、何やら服をお探しのようで…」
「服???」
なんで男子部屋で??意味が分からない。
「ありがとう、一応参考にしてみる」
ドルチェットに関する意味不明の情報を得て、そのまま洗濯物を干しにディリーの後について行った。
大きな窓のある部屋で洗濯物を干した。
バタバタと布が激しく風ではためくから、飛んでいかないようにしっかり留めないといけない。
「ふぅー、助かったぜ。あんがとな」
「いえいえ」
「手伝ってくれたお礼に、夕飯は肉を多くいれるよう言っておくから」
「わーい!」
「ほんとうですか!?」
めっちゃ嬉しい。
「あと皆に特別にその兄ちゃんも今日は歩き回れるように言っとくから、安心して探し回って良いぞ」
「おおおお、太っ腹」
「よせやい、照れるじゃねーか。んじゃ、また明日な」
そうしてディリーは去っていった。
明日なってことは、きっと明日も新人としてしごかれるのだろう。
まぁいいか。
「じゃあ捜索活動の続きといきますか」
船内はあらかたさがしまわったが見付からなかった。
「とすると残りは外ってことになっちゃうな」
「……まさか落ちたりとかしてないですよね…」
「…………シテナイトオモイタイ」
落下してたら洒落にならないぞ。
でも“ない”って言い切れない。なんせ船内にドルチェットの匂いが全然無かったから。
「……」
朝方に駆け回っていた甲板へと出た。
とても風が強い。
「これ落ちたらどうしようもないですね…」
真っ暗な下を見ながらジルハが言う。やめろ縁起でもない。
船員達の話では必ず誰か見張り役がいるはずだけど。
「?」
暗い甲板の後ろの方になんだかみたことのある服を着た人がいた。
いや、みたことある服っつーか、あれ俺の服じゃね?
「んお?…あ」
赤髪の少年がこっちにやってくる。
「何してんだお前ら」
「え?」
「は?」
ちょっとまって、この声。
「ドルチェット!?」
「おー、他に誰に見えんだよ」
「いやでも髪の毛…」
「髪の毛?……あ、忘れてた」
ずるりと赤髪が取れていつもの髪色に戻るドルチェット。
カツラ?
「それ、え、ボクの」
「ジルハのカツラかい」
なんでそんなもん持ってんの。
「てか、なんで俺の服」
「いやーだってさぁ、1日中部屋に籠もってんのはキツいぜ。しかもなんかキラキラに改造されるわ、変な野郎に買収みたいなことされるわ。息詰まるっつーの」
「それで変装を?」
「そー。しかしいいなお前の服。サイズも良い感じだし、なによりお前だと勘違いしてくれてるのか変に呼び止められないしな」
「それは、よかったね…」
「おーよ」
明日にでもクレイに頼み込んでドルチェットも歩き回れるようにして貰えないか相談してみようかな。替えがあるとはいえ、服一つ持っていかれるとちょっと厳しいぞ。
「そろそろ戻ろう。今日は肉多めみたいだし」
「まじで!?へっへーい!お肉お肉!」
「ちょっと!走るなって!」
俺達を置いてドルチェットは先に部屋へと走っていき、ジルハが慌てて追い掛けていった。
落ちてなくて良かった。
「!」
ゴロゴロと雷の音に前方を見ると、大きな雷雲の壁が行く手を遮っていた。




