あの手この手
「なんでおれが部屋にいろって言ってたか、その意味を理解したか?」
「ごめんなさい……考え方が浅はかすぎました……」
若干泣きべそかきながらもう反省した。
本当に酷い目に遭った。トラウマになりかけた。
あの後、ダッチとその仲間に揉みくちゃにされ、俵担ぎのまま船内を隈無く連れ回され。(恐らく凱旋のつもり)クレイに武力行使で救出されるまで延々と勧誘され続けたのだ。
ちなみに今も角の方から隙を伺っている視線をヒシヒシと感じる。
バルバロのところもそうだけどさ、強引じゃない?色々。
と、目の前にある皆よりもはるかに豪勢な食事を見て思う。
いらんよワインなんて。飲まないわ。
「飲む?」
「飲む」
その食事をみんなにお裾分けしているとワインを受け取ったアスティベラート。
「貴様の食事が物凄いことになっているのはそのせいか」
うぐっ。
「なんでそう厄介事に突っ込んでいくんだお前は」
ドルチェットにまで言われてしまった。
しかも完全な呆れ顔。
そして先程からクレイの視線が刺さって痛い。ごめんってー。
「過ぎたことは仕方がないがな。ディラ」
「ん?」
「明日から地獄だぞ、覚悟しとけよ」
「げー」
翌日。
何故か早朝から叩き起こされ、当たり前のように新人教育を施されていた。
いやおかしくない?
入団しないよ?おかしくない??
「なんで?」
思わず自問。
そして自答。
自業自得だよ、俺。……はい。
「ディラ!このロープ引いてくれ!!」
「へーい!」
「ちょっとこっち来て手伝ってくれ!」
「へいへーい!」
しかし、悲しいかな。
バルバロ時代の条件反射で手伝ってしまうし馴染んでしまう。
ちっくしょー!
そんなディラの様子を遠くから眺めている人達がいた。
ダッチとクレイだった。
「馴染んでんなー」
確か前に山賊のところで少しお世話になっていたとか言ってたな。
それにしてもあっさり馴染みすぎだが、もともとそういう素質があったのかもしれないとクレイはぼんやり思った。
「ねぇ、やっぱりあの子いいわぁー。こっちに頂戴な」
「やらねーって言ってんだろ。また殴り合いしたいのか?」
「やぁーよ、なんかあんた変に筋力も防御力も上がっているし。なによりその盾痛いのよね。盾の癖に生意気だわ」
「はっはっはっ」
前方ではディラが船の整備の仕方や制御の仕方を教え込まれている。
今後使うことは無いだろうけど、覚えていれば何かの役には立つだろう。
「……つ、つかれた……」
凄まじい疲労感でハンモックに倒れ込み起き上がれない。
といってもハンモックに乗っかっているの上半身だけで、下半身ははみ出てるがな。
のすりと腰に重み。
トクルだ。
なんでわざわざ俺に止まりに来るのか。
「お疲れ様です。飲みます?」
大人しく部屋に引きこもっているジルハが冷たいコップを差し出してくれた。
トクルを脇にずらして受け取った。
烏龍茶かな?
「なにこのお茶うまっ!」
スーパーのめっちゃ高いお茶飲んでいる感じ。
ぷはぁっ!疲れた体に沁みるー!
ていうか。
「こんなお茶買ってたっけ?」
俺が軟禁状態の時に買ったのかな?
するとジルハ。
ブラックボーンマークの茶葉筒を取り出した。
「買収されてます」
お茶噴くかと思った。
「やめてね」
「わかってますよ。というよりボクなんて全然良い方ですよ。見ました?隣の部屋」
「部屋?」
「大変なことになってますよ」
「……ほう?」
どんなことになってんだ?
興味が湧いて覗いてみた。
「……おっかしいな、この一室だけ高級ホテルになってるぞ?
ハンモックからベッドへランクアップし、鏡とか絵画とか、なんか色々飾り付けられていた。
そしてその豪華な一室のベッドの上で、船酔いしてダウン中のアスティベラート。
「…………ディラか……」
起きてた。
「えーと、体調大丈夫?」
「に、見えるか……?」
「見えないです…、お大事に」
扉を閉めた。
昨日は体調良さそうだったのにな。可哀想に。
「ん?そういえばドルチェットは?」
姿がなかった。
視線が泳ぐジルハ。
「そのー、……脱走しました」
なんて?




