背骨が悲鳴
「お前さっき俺っち達の船をべた褒めしてくれたろ?お返しに良いもん見せたるぜ。着いてこい」
ラッキー、とんだ棚ぼただ。
といっても先にクレイに出るなと言われたからコソコソと隠れないとな。
ドムドムの後を着いて船板へと出た。
上にはハンマーヘッド型の大型機械(中が気球になってて、周りの外装は推進力を生み出したり方向転換する装置がついているらしい。)だからちょうど船の真ん中の空間なのだが。
その船板にはたくさんの乗組員が忙しなく離陸の準備をしている。
「思ったよりも乗組員がいるんだな」
「ははは!まさかたった3人で飛ばせると思ったのか? それよりもほら、あっちだ」
ドムドムが指差す方を見ると、岩場の天井が開いていっていた。
開くんだ。すげえ。
「おお!」
突然の浮遊感。
船にガスが入れられ高く浮かび上がっていた。
プロペラが回り、天井の穴に向かって船が進む。
「わあ」
山脈が夕陽を受けて赤く染まっていた。
「帆を広げろーー!!!」
更に上昇したところで帯状の帆が次々に広げられ、それに風を受けた船がどんどんと加速していく。
「あとは上を流れている気流に乗せちまえば、あっという間に魔界だ」
ふふんと誇らしげにドムドムが言う。
「あの山脈の中間にも絶景があるんだ。そん時にまた外見せてやるよ」
「本当ですか!ありがとうございま──」
言いきる前に船に何かが直撃して船が激しく揺れた。
なんだと思う間もなく更に三度大きな衝突音と揺れ。
「敵襲ゥゥゥ!!!」
「ちくしょう!待ち構えだ!!右後方に“オルカ”がいるぞ!!!」
オルカ?
船の右後方に視線をやると、大きなシャチ型の飛行船が物凄い勢いで接近してきていた。
その船から見えない弾が発射され、被弾。
「え?え?何あれ!?」
「“オルカ”だよ!知らねぇー……か、あー、あれは空軍っつー奴だ。空の警備だとか、なんか色々やってる奴ら。特にあのオルカ隊はな、俺っち達みたいな空賊を襲うのが三度の飯より好きっつーイカれたクソヤローどもだよ!!」
絶えず撃ち込まれる風の弾で船が大きく揺らされて体勢が崩されそうになっている。
必死に逃げるが、機動力はあちらのが上だった。
「ちぃ、この撃ち方………。あのやろう、さんざんなぶるつもりだ…」
「なぶってどうするの?逮捕?」
「いいや。追撃して残骸にも撃ち込んで木っ端にするんだ」
「…………」
それは…良くないな。
せっかくここまで来たのに、追撃なんかされたら俺達の計画も全部水の泡じゃん。
「~~~つ。あーもう!!仕方ねぇ!!腹括ってやる!!」
「お、おい!?お前何を!?」
隠れていた木箱の影から飛び出し、背負っていたエクスカリバーを持ち直す。
すぐさま【弓矢生成】で矢を生み出すと【千里眼/点穴】で次々にやってくる風の弾を破壊していった。
やっぱりあれ魔法か。
異変に気が付いたオルカが、今度はロープ付きの槍を発射してきたが、それも弾き飛ばす。
だが、どんなに攻撃を無効化しても、接近してアンカー撃ち込まれでもしたら堪ったもんじゃない。
実際にその戦術に切り替えようとしているのか、オルカが速度を上げた。
「何処狙えば被害を少なくできる……?」
できることならば死者を出したくない。
なにか無いかと【千里眼/見極め】を使うと、船の複数の箇所に推進力を生み出すプロペラを見付けた。
あれを破壊すれば、撒けるかもしれない。
【風乗り】を発動。
更に【同時標的補足】と【攻撃力増大】も発動し、狙いを付けた。
「せいっ!!」
放った矢がプロペラに命中し、破壊した。
「もう一丁!!」
追加で空気砲を発射していた大砲も破壊した。
オルカがどんどん失速していく。
そして小さくなって。遂には雲に紛れて見えなくなった。
「ふぅー……」
あっぶなー。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「!!?」
上がる歓声に思わずビビった。
「……………ぁ」
その中に一人、頭を抱えた奴が一人。
クレイだった。
しまった。バレた。
「ぅうううううううーーーーーーーーん!!!! はぁっっっ!!!!」
「おぐぅ!?」
突然横から巨大な何かにタックルされてぶっ飛びそうになったのを、太縄みたいなので拘束された。
いや違うこれ。腕。ダッチだった。
「んもう!!何この子即戦力ぅぅ!!!」
「うぶぉあああ!!」
ギリギリと締め上げられる。
抱きしめられているっぽいが、背骨が折れそうになっていた。
潰れるぅ!!潰れるぅ!!クレイ助けて!!
「絶対にこの子入団させるわぁあーーーーー!!!!」




