ハンマーヘッド
しばらくするとガチャガチャと金属音と共に馬車の音が聞こえ始めた。
「おーい!」
声を掛けると馬車からクロイノがニュッと顔を出した。
かわいいな。
「よっと」
アスティベラート達が馬車から降りてダッチ達と向き合った。
「餓鬼ばっかだな」
「もしかして年長者クレイ?マジ?」
「静にしなっ!!」
「「へい!」」
なんだろうな、バルバロを思い出してきた。
「初めまして、私はダッチ。ダッチ・サンソン。隣のがドムドムとディリー。そっちの子達の名前は聞いたわ。あなた達のお名前を教えてちょうだいな」
アスティベラートとノクターンの視線がこっちを向く。
大丈夫と頷くとそれぞれ自己紹介を始めた。
途中ロエテムの番になってノクターンが通訳していたが、人形と思わなかったようで。
ダッチが「無口なのねえ」と首を傾けていた。
なんにも知らない人がロエテムを見ると人間に見えるんだな。
「それにしてもこの馬!!!なにこの馬!!スッゴいゴージャス!!!どこのブランド!!?ギランデリッシュ!!?」
ダッチが鐡馬を見て大はしゃぎしてる。
でか盛りスイーツを前にした女子のように。
実際はガタイの良いオネエだが。
「お「しっ」むぐ!?」
俺ですと言おうとした瞬間にクレイに口を塞がれた。
そして小声で黙っとけと言われた。
なぜ?
何か訳アリなのだろうか?
「ダッチもういいだろ?早くしないと夜になっちまう」
急かすようにクレイがそう言えば「それもそうね」とダッチが鐡馬から離れ、自分の馬に乗り直した。
「着いてらっしゃい」
ダッチが馬で誘導し始めたのを見て慌てて馬車に乗り込み、ノクターンが鐡馬を歩かせた。
ガチャガチャと音を立てながら馬車が進んでいく。
あんまり気にしてなかったけど、これ少し音を小さくした方がいいかもしれないなぁ。
途中、小川に架けてある橋を渡り少し行ったところに大きな岩の塊を見付けた。
「でっか……」
その岩はどんどん大きくなり、ついには大型ショッピングモール並みになっていた。
「岩礁、って私たちは呼んでるわ。中は迷路になっているからちゃんとよそ見しないで着いてきなさい」
ダッチが言う。
ちょっとした隙間から“岩礁”の中に入ると、確かに迷路になっていた。
薄暗い道をダッチ達は馬に下げたランタンのわずかな明かりでもスイスイ進んでいく。
「!」
視線を感じて迷路の上を何気に見てみると、ひとの目が。
…………ホラーかよ。
多分あそこで侵入者を確認して攻撃するなり罠を張ったりするんだろうな。
「着いた」
ダッチが前方の重厚な戸を叩くと、ゆっくりと開かれた。
入ってくる明かりに少し目が眩んだ。
「いらっしゃい。そして紹介するわ」
ダッチがこちらを向いて、手のひらを扉の向こうへと向けた。
そこには大きな黒い鮫が宙に浮かんでいた。
しかしその鮫は船であった。
空飛ぶ鮫を模した飛行船、それが俺達を待ち構えていた。
「私が管理する黒い鮫。通称『ハンマーヘッド』よ」




