止める奴がいない
「おはよう」
昨日、質問責めにしようとマーリンガンを呼び出そうと思ったけどさすがに夜中だから可哀想だなと思ってそのまま寝たんだけど。
スッゲー眠い。
ブリテニアスオンラインで徹夜した時みたいになってる。
後でコーヒー飲もう。
「奴とはお昼に約束をしている。2手に分かれて馬車を取りに行く組とおれと行動を共にする組とに分かれよう」
頷く。
「まずディラはおれのところ。で、ドルチェットもだ。あとは馬車組にする」
「何故私が馬車組なのだ。そっちと行きたい」
「訳があるんだよ」
へぇ。なんだろう。
「この編成で行かないとダメ…。てか、パッと見では攻撃力高いのから連れていくよね」
うちのパーティー攻撃力一位と二位だ。
クロイノは除く。
「もしかして?」
「……治安がちょっとな」
一気に納得。
納得したけど嫌な予感しかしない。
「ディラ」
「ん?」
アスティベラートに呼ばれてそちらを向くとトクルを手渡された。
トクルは大人しく俺の頭の上に。
「こいつを連れていけ。何かあれば飛ばして私に助けを求めることもできるし、帰る時に飛ばせばそちらの状況を事細かに教え時間の短縮にもなる」
「へー、役に立つんだなお前」
トクルのお腹を撫でると「ケケケケケ」との声。
それは喜んでるの?威嚇なの?
「昼までは自由だから各自準備をしておくように。あ、ディラは宿から出るなよ」
「へーい」
いいし、どーせ引き込もって作業を進めておきますよーっだ。
宿を引き払ってクレイの後を着いていく。
フードをしっかり被り、【隠密】を発動。
ポート街を傍目にそそくさと通り過ぎる。
聞いてはいたけど、教会関係者も兵士も多いなぁ。
「……!」
突然【千里眼/探知】に何かが引っ掛かり振り返る。
「…………」
何もない。
探知がバグるなんてそうそう無いのに。
昨日の疲れが残っているのかな?
ポート街が遠くなり、だんだんと街並みが良くない雰囲気の場所になってきた。
娼婦やらゴロツキやら目がイっている奴らがゴロゴロとし始め、その誰もが俺達を品定めするように見ている。
お互いに観察をしていて空気がピリついている。
手を出せば終わり。
そんな空気。
ドルチェットが未だに剣を抜かないのが奇跡。
なのにクレイは自分の庭のように気にもとめずにスイスイ進んでいく。
うーん。
過去が気になるところ。
しばらく歩いて辿り着いた場所は、とてつもなく酒臭い建物だった。
「ここだ」
「居酒屋?」
にしては、とんでもない既視感。
俺知ってるぞこれ。
中に入ると昼間っから酒飲んで騒いでいた人相の悪い野郎共が一斉に静かになりこちらを凝視。
こっちみんな無視してろよ。
机からはみ出している脚を避けたり、何かのテストしているのか飛んでくる酒瓶を避けたりしながらカウンターへ行き、ドルチェットのお尻を狙ったオッサンの額に蹴りが入ってぶっ飛んだ辺りで目的の場所に辿り着いた。
てかクレイさん。
いいの?後ろが凄いことになっているんだけど。
激しい喧騒の中、クレイがカウンターの人、恐らくマスターに話し掛けた。
あ、無視の方向ですか。
「ダッチはいるか?クレイが来たって伝えてくれ」
マスターは近くにいるスタッフにボソボソと話し掛け、そのスタッフは後ろへと引っ込んでいった。
「あと後ろの請求はちょっかいかけた奴に乗せてくれよ。こっちは正当防衛だ」
「……へいへい」
うーん、慣れていらっしゃる。
しばらくすると野郎の服で拳の血を拭うドルチェットが戻ってきて、それとほぼ同時にスタッフも戻ってきた。
「その入り口入って左の倉庫。右に回って下だ」
「?」
なんて?
「わかった」
クレイは理解したらしく、言われた通りに示された入り口へと向かった。
後に続く途中になんとなく後ろを振り返ると、あんなにいたゴロツキ達の屍の山が出来ていた。




