踏み台にしよう
宿に戻った。
「…おお…」
みんなして体のチェックを始める。
服は汚れているし、あちこち擦り傷切り傷打撲の後。
ひどい怪我はしてないから結果オーライって感じかな。
「……とりあえず風呂いきたい」
「わかる」
ドルチェット即答。
君の攻撃方法はどうしても汗掻くもんな。
「近くにあるっけ?」
トクルが何故か俺の頭にとまる。
『ケーイ』
「あの…あります…」
ノクターンの言葉にクレイが立ち上がる。
「まずは体の治療をして、終わり次第銭湯に行こう。異論は?」
一同「無し」と一致。
ジルハが持ってた回復の魔法具を使って傷を治し、みんなして銭湯へと向かった。
「はぁー…、身に沁みる…」
疲れが湯船に解けていく。
この世界は日本と同じようなお風呂文化がある。
石鹸もある。
ただしシャンプーリンスは無いから、風呂上がりに髪がごわつく。
ジルハよりはマシかな。
あいつ、風呂上がりに獣毛が大変なことになると油を全身に塗らないといけないらしい。
「……」
ガヤガヤと人の声が反響する浴場で天井を眺めながら考えた。
危なかったときに聞こえた声。
「誰なんだろう……?」
風呂から戻った。
体を温めたからかみんな少し元気になっていた。
「……」
「……」
「……」
誰も喋らない。
気まずい。
シーンとしているなか、クレイが口を開けた。
「…すまねぇ、まさかあんな死にそうな戦いを強いられているんだと、ようやく理解した……それなのに…」
ん?なに急に?
クレイの方向を向くと神妙な顔をしている。
「…気軽に力になりたいとか、簡単に言っちまって…」
重っ!?空気が重いよ!!
「いいっていいって!てかね、今回はほんとにヤバかったから、皆がいてくれたからこんな助かったっつーか、いなかったら多分」
殺されてたかも。
ただ殺されるんじゃなく、なぶり殺し。
「…だから、本当にありがとう」
心を込めてそう言うと皆がジーンと感動したような顔。
特にクレイ。アスティベラートは何故か誇らしげだった。
そういえばゴーストに対して呪いか発動しても無敵だったな。そりゃ誇らしげになるか。
「まー、確かに大変だったけどな」
場の空気を変えるようにドルチェットが話し出す。
「今回の事で得られたものはあったんだ。そこは良い方にとらえようぜ」
ドルチェットが右手を握ったり開いたりして感覚を確かめていた。その横でジルハがその通りと頷いていた。
「弱点が分かりゃーこっちのもんだ。ぜってー克服して次はもっと上手く立ち回ってみせる」
この男前め。
「そうだな」
アスティベラートも同意した。
「次はチリも残らず消し飛ばす」
「……」
フハハハハと高笑いするアスティベラートにノクターンが小さく拍手していた。
うん。
めっちゃ期待しておこう。




