腕力だけで吹っ飛ばした
人間ロケットの影響で目的地到達までの安全が保証される。
だが、それには限度がある。
例えば飛行中に鳥と接触しても怪我とかしないし、例え人間ロケット中の別の人間と接近したとしても、意識的に(連携技とかの場合を除いて)自動的に軌道修正してくれる。
でも、それ以外。
目の前には氷で面積を広げた腕を交差させて進路を妨害しているガブリエリス。
『目を狙っていることくらいお見通しだ!!』
ああやって妨害された場合、勝手に『敵と戦闘中、任意で突撃している』と判断して保護機能が外れる。
つまり…。
「風穴を開けるしかない」
目の前の氷の膜から鋭い刺が伸び始めた。
厚みは増していき、全力で射ち抜かないと辿り着けない。
「空中は狙いが付けにくいけど…しかたない」
ガブリエリスの腕に狙いを定めようとしたとき、突然ガブリエリスの周囲で不思議な光る形の線が大量に発生し、高速で回り始めた。
ガブリエリスの腕が強制的に開かれ、水平に固定された。
『な、っ!!!?』
なんだ?誰の攻撃だ?
どんなにもがいてもガブリエリスの体の自由が利かないらしく、更に苦痛の表情。
「よくわからんが丁度良い、助かった!」
あっという間にガブリエリスの目の前に来ると、ガブリエリスの両目に向かって打ち出した。
【火焔属性付与】【貫通】【攻撃力増大】【爆発属性付与】のスキルを上乗せされた二本の矢は白く発光しながら、魔力を溜めきって発動直前の眼球へと突き刺さった。
ズドンと矢が眼球の内側から破裂。
『 ーーーーーーーッッッ!!!!!! 』
人のものでもない獣のような叫び声を上げる。
眼球にヒビが入る、破壊まではいかなかったが、功太の攻撃が通りやすくなるだろう。
あとは、未だに動けないガブリエリスの元へと功太を打ち上げれば。
「おおおおおおおおおお!!!」
「!?」
下から聞こえるのはドルチェットの声。
え?まさか。
見ると、ドルチェットが功太を剣に乗せて狙いを定めていた。
剣が光っている。
まさか、ドルチェットは自力で【人間ロケット】を獲得したのか!?
「どっせえええええええいいいい!!!!」
雄叫びと共に功太が打ち上げられた。
だが【人間ロケット】特有の光エフェクトがない。
んん?え?
腕力だけで吹っ飛ばした???
空中で功太とすれ違う。
交差する視線。
「 。」
功太の口から何か発せられたが、聞き取れなかった。
輝く功太の剣から光の帯が伸び、ガブリエリスの上半身が縦に両断。続いて横断した。
皮膚が布のように捲れる。
中は空洞で、黒いラメのある煙の中で、輝いている二つの丸い光が砕け散った。
モヤが実態もないのに砕けながら消えていった。
「お?」
ガブリエリスの方から暖かい風が吹いてきて、後方へと流れた。
「!」
着地しようと身を捻ると、ボスンと思ってもみなかった場所にあった柔らかいものに落ちた。
「クロイノ!」
ゆっくり尻尾が揺れる。
アスティベラードがいないからクロイノ一匹だけで来たらしい。
上を見ると功太がゆっくりと下降してくる。
何かの魔法が掛かっているのか、足が淡く光っている。
というか。
「見えてる」
あの変な景色は消えて、代わりにいつもの光景が戻っていた。
よかったー!ということはみんなの呪いも解除されたのか。
よしよしとクロイノを撫でてから地面に降りる。
するとすぐ近くに功太も降りた。
心なしか顔色か良くなっていた。
「頭痛は治まったか?」
「………ああ…」
だが、痛みの余韻が残っているのかテンションが低く、目も合わせようとしない。
疲れているんだろうな。
俺も疲れた。
早く帰りたい。
「!」
ズンズンと乱暴な足音がやって来た。
確認しなくても分かる。あいつだろう。
めんどくさいけどそっちを見るとやはりガンウッド。
やっぱあの丸太おまえか。




