強制的勉強会
クレイ達が戻ってきた。
「どうだった?」
「駄目だ。さすがにあんなに厳重体制だとアスティベラードの影潜りでも難しいかもしれない」
「うわ、まじで?」
どんだけ教会関係者がいたんだろうか。
頭の中に浮かび上がるあのときの教会関係者の男どもが群れているイメージが浮かんできて気持ち悪くなった。
考えるの止めよう。
ジルハもため息をついていた。
「実はこっそり飛行船の中に侵入してきたのですが、中の方にも常に教会関係者がいて、即座に連絡できるようになってました。しかも探査犬も配備です」
「犬はよくないね」
ブリテニアスオンラインでも探査犬『ポチ』というのがあって、【隠密】スキルを無効化するものがあった。
そのポチを無効化する為には『チシャ猫』シリーズで猫の幻覚を見せて『ポチ』の注意をそらすというのがあったけど、残念なことに俺は習得していなかった。
「犬の嗅覚を封じるにしても、そんなことしたら余計に怪しまれるしねぇ…」
困った。
「ていうか、そろそろ聖戦も始まりそうな予感がするんだよ」
確証はないけど、勘的なものが働いている。
多分五日以内に来そう。
「それだよ。その問題もある」
クレイがビシリと俺を指差す。
「聖戦時は時間が止まるが、全て無かったことにならない。服についた血もそのままだし、恐らく怪我をすれば…」
そうだよな。
今までは運良く怪我とかあんまりなかったし。
首は痛かったけど。
それがもし大怪我だったら医者や病院のない空中は辛い。
俺の持ってる魔法具だってあまりの大ケガだと駄目かもしれないもん。
それが教会関係者がいて、発見されたとすれば大変なことになるだろう。
…てか……あれ?そう言えばジルハに渡したままだったっけ?
「本当はもう少し早く着ければ良かったんだがな」
クレイの言葉にドルチェットがやって来た。
「ブツブツ言ってもしかたねーだろ。じゃあどうすんだ?山脈越えでもするか?」
「いや、そこは考えがあるから何とかするさ。…ただな」
ただ、なんだ?
「正規じゃねーし、完全な違法なんだけど」
思わずドルチェット、それからアスティベラードと顔を向き合わせた。
ちなみにノクターンは馬車の中で疲れて寝ている。
「違法っつってもなぁ。今さらって感じ」
「ドルチェットと同意見。そもそも追われている身だしね」
「だいたい違法とは何をするのだ。飛行船を奪い取るのか?」
アスティベラードの過激派発言。
でもそれに近いことでもするのかな。
「空賊の手を借りるって方法だ。それなら教会関係者が関われないだろうし、見付かることもない」
俺も過激派だったらしい。
「空賊か」
なるほどとアスティベラードが納得する。
「でもどうやって手を借りるの?」
「…この近くに住んでるおれの知り合いがな、そっちの繋がりを持ってるんだ…。どうにかして説得できれば不可能じゃない」
「へえー」
意外な繋がりもあったもんだ。
「ただ、説得に時間がかかると思う。だから、どうせ聖戦が来ることはわかってるから、地上で聖戦を迎え、なんとか無傷で戻りそのまま山脈越えをするって方針でどうだ?」
「賛成!」
「異論はない」
全員一致で賛成。
というか、それしかない。
山脈越えとかどう見ても大変そうだし。
そう思いながら目の前に聳え立つガイエン山脈を見上げる。
壁だよ、壁。白と黒の壁。
これを越えるとなると…。
多分、半月以上掛かりそう。
「決まりだな。じゃあ近くの街に泊まるとして、おれは明日からその知り合いに交渉に行ってくる。少し暇になるかもしれないが、ディラは出来る限り宿から出ないようにしてくれ」
「えええー」
「えーじゃない。リーダー命令だ!」
「ぶーっ!」
抗議したが、理解はできたので程ほどにしておいた。
仕方がない。
その間マーリンガンを呼び出して新作の作戦会議と勉強でもしますかね。




