念願のあいつ
「うおお!!?」
巨人の頭と足が再生され始める。
そうか、無機物って、頭吹き飛ばしたら終わりとかじゃないんだ。
『お?あれ?』
ガクンと巨人の動きが止まる。
『ちょ、ちょちょちょちょ…っ!マジ!?まさか君が【魔力】を選んでいたとは思わなかった…っっ!!ぐうううう、重っっ!!!』
何があったのか、ベートが困惑しながら必死に巨人を動かそうとしていた。だけど、何故だか巨人はブルブル震えるけれど動かない。
「させっません…っ!」
ノクターンが巨人の体に手を置いて直接干渉して動かせないようにしていた。
普通にすごい。
全ての魔法陣を破壊し、その間に二人のジルハとクレイの補佐によってベートがだんだんと追い詰められていっていた。
『仕方ないっ! 奥の手を使おう!』
ベートがそう言うや、ベートの体から衝撃波が発生してジルハ達を吹き飛ばした。
そのダメージで片方の姿が消える。
「ジルハ!!」
クレイが叫び落下地点にクッション状の盾を出現させた。
衝撃波がこちらにも到達した。
思わず受け身の姿勢を取ってしまうくらいの強い衝撃が体を襲う。
巨人は使えないならという事なのか、この衝撃で砕け散ってしまった。
再びベートの姿を捉えると、俺は思わず歓声を上げてしまった。
「ふおおおおおおおおおおおう!!!!!」
ベートが水色のドラゴンへと姿を変えていっていた。
「ドラゴン!!!!!」
夢にまで見たドラゴンがすぐそこに!!
そうだよ当初の目的はドラゴンツアーだよ!!
まさかこんなところでお目にかかるとは!!
「…不味くない?あいつあんなにドラゴン好きだから倒すの嫌だとか言い出したらヤバイぞ」
「……そういえばあいつ元々はドラゴン見に行くって目的だったな…」
「ええ…、どうするんですか?そうなったら大事な火力が一人減りますよ」
後ろでこそこそクレイとドルチェットとジルハが話している。
安心してほしい。
俺はやるときはやる男だ。
例え目の前にいるのが大好きなドラゴンだとしても、それを倒さないといけないのなら倒すのみ。
悲しいけどね。
ああ、でも記録には残しておきたいから写真は撮っておこう。
特殊スキル【撮影術】で脳内撮影。
残念ながらカメラがないから写真化はできないけど、これでいつでも脳内で見られる。
ドスンと強く背中を押された。
なんだと思ったらクロイノだった。
「泣くなディラ。安心するがよい。クロイノがいつでもドラゴンよりもカッコいいからと言っておる」
「? 良くわかんないけどありがとう?」
慰めてくれているのかな?
『うーん、まさかそんなに喜ぶとは思ってなかった。ドラゴンは普通畏怖の象徴なんだけどなー、おかしいなー』
ベートはベートでドラゴンのまま首を捻って不思議そうにしていた。
畏怖の象徴っていってもカッコいいのには変わり無いしな。
『まー、でも手は抜かないぞー!』
ベートが喉を膨らませ、口を開く。
「みんな!!おれの後ろに!!」
ちらつく炎が急激に巨大化するのを目にし、急いでクレイの後ろへと避難した。
放たれた炎が襲ってくる。
一応あれも魔法なら相殺できるんじゃないかと【千里眼/点穴】【千里眼/見極め】を発動したが、すぐさま無理だと分かった。
点穴が無い。
無いのなら掻き消せない。
「はぁっ!!」
クレイの前に出現した巨大な盾が炎を受け止めた。
いつもならこれくらいの威力の攻撃だと軽くひび割れたり、後退したりするはずだけど。
「おお、耐えてる」
視界一杯の炎だというのに盾はびくともせず、しかも心なしか熱さも軽減されていた。
元から温度が低い訳じゃないのは見てわかる。
炎が当たっている地面が黒く煤こけ、一番温度が高いところは赤く溶け始めていたから。
「けどこのままじゃ埒が明かないな」
ドルチェットの言う通りだ。
「…ん?」
熱風が渦を巻いている。
「………」
その時、一つの可能性を思い付いた。
でもそれに感付かれたらベートは何らかの策を講じてくるかもしれない。
「ねぇ皆、ちょっといいかな?」
「なんだ?」
「ん?」
「少し手伝ってもらいたいんだけど」
俺は作戦を話した。
クレイが面白いと笑う。
「いいな、乗ったぜ!しかもちょうどいい練習場じゃないか」
ドルチェットとジルハも頷く。
「じぶんがあまり役に立てないのは悔しいが、バックアップくらいはしてやらぁ!」
「僕も出来る限り頑張ります」
ノクターンが強張った顔でスススとクレイに近付く。
「頑張ります…っ!!」
一番の負担をスミマセン。
そしてアスティベラードとクロイノ。
「ふふふふ、任せるがよい」
よし、じゃあ作戦開始だ。




