動きが五月蝿い
正方形の欠片が体すれすれを流れていく。
「結構きついなこれ…」
全力で矢を引き絞らないと、射ち漏らした破片が体を引き裂いた。
目に見える外傷はないけど、確実なダメージは入っている。
攻撃はまだ光の箱だけだけど、きっとこれで終わりじゃない。
『攻撃変化、形状』
「いっ!?」
飛んできた箱が突然形を変え、小さなナイフが空間を埋め尽くすようなものに姿を変えた。
しまった、射ち漏らし──。
無数のナイフが体を貫き、吹っ飛ばした。
背後の見えない壁に叩き付けられて止まる。
「げほっ!」
肺が刺激されて咳が出るが、すぐさま立ち上がり次弾を射ち落とした。
油断するな。
これはいつものレベルアップ試験と同じと思え!!
気を引き締め直すと、更に速度がパワーアップ。
「なんで!!?」という突っ込みもむなしく攻撃方法は多様になり、とうとう属性までもが変化してきた。
だけど。
「なんで属性付加できないの!!?」
何故だか魔法が一切使えなくなっていた。
普通火の玉が飛んできたら水の属性付加で打ち消すのだが、それができない為に力業で自分の体サイズの穴を無理矢理開けるという鬼畜じみた所業を行うことになっていた。
しかし、そんなアホみたいな迎撃方法を死に物狂いで行っていると突然不思議なモノが見え始めた。
光の点である。
ぼんやりとした光の点はぶれたり消えたりしているが、集中してその光に当てるように射つと、高確率で攻撃が崩壊して霧散する。
現に、その光の点へと射ち込んだ衝撃で飛んできていた氷河が砕け、バラバラになって消えた。
目が焼けるように熱い。
《 スキル【千里眼/点穴】を獲得しました。 》
「ん!?」
バァン!!!と龍の形をしていた水の攻撃が、俺の矢で光の点を正確に貫いた瞬間に発生した。
雨のようになった水しぶきが消えていき、攻撃が止んだ。
「…? 終わった…のか?」
広場の縁を取り囲んでいた光が体にまとわり付いていき、見えないが傷付いたであろう箇所を治していった。
治療が終わると光は体から離れ、再び道を作る。
「進め、か」
次は何が来るのだろうか。
ワクワクしながら進むと、途中で道がなくなった。
なんだろう。止まれってことだろうか?
ぶつ切りにされた道で足を止めると、真正面に門が現れた。
光で枠組みされた真っ暗な空間にドアノブが浮かんでいる。
それをひねって開くと、まるで万華鏡の中のような空間に出た。
「おお…」
どこからかシャリンシャリンと音がしている。
「ディラ!無事だったのか!」
「アスティベラード!」
すぐとなりに出現した長方形の穴からアスティベラードが姿を表した。
それを合図にしたかのように、次々に穴が開いて仲間たちが出てくる。
「………」
「…………」
なんでかクレイとドルチェットが疲れ果てていたが。
「みんな無事みたいですね」
ジルハだ。
「? なんかダブってない?」
姿がなんだかボヤけている気がする。
「ええと、まだ影響があるみたいで…。大丈夫です、もう少ししたら治まるので」
「そお?」
なんだか変な感じだけど。
「ノクターンがまだのようだが」
「ほんとだ」
ノクターンがいない。
「ひぃ…、ひぃ……」
噂をしていると杖にもたれ掛かり死にそうなノクターンが現れた。
「大丈夫?」
「あ…足にキテます…」
生まれたての小鹿のようだ。
『勇者とその仲間よ!!よくぞこの部屋に辿り着いた!!』
ボーン!!と大きな音と共に紙吹雪が空間一杯に巻き起こった。
頭に乗ったそれを見る。
パーティーグッズでよく見るやつ。
キラキラとした白い煙が晴れ、この中に人影が現れた。
『こんにちは!!はじめまして!!』
風が巻き起こり、残った煙さえも吹き飛ぶ。
海のような色の長い髪を靡かせた青年が現れた。
んん?なんか見たことのあるような顔。
『僕の名前はベート!パスダンジョンの第二の門の主、大魔法使いの名を関する主だ!!ヨロシク!!』
「………マーリンガン??」
に良く似た煩い門番ベートが、玉座と思わしきところからワサワサとしたうるさい動きを用いて自己紹介してきたのだった。




