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旧・脇役無双~この弓はエクスカリバーである~  作者: 古嶺こいし
この弓はエクスカリバーである

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パスダンジョン【ベート】

 岩を削って、地面に板を張り、崖下に柵が設置されている。

 うーん、よくもまぁこんな所に道を作ろうと思ったもんだ。といってもここの道は人間しか通らないから問題ないんだけど。


「おっと…」


 あと高所恐怖症の人もダメだな。

 もっともそんな人はいないわけだけど、下を覗き込むと何故か飛び込みたくなる衝動に駆られるのは不思議だ。


 そんなことを言うと。


「タナトスの衝動って言うらしいぜ」


 と、ドルチェットが答えた。


「何それ」

「人間は抑圧されると、反発するように“やってはいけないことをやりたくなる”という感情が現れるらしい。たとえば、これは自分の家で言い聞かされていたやつなんだが」


 背中の大剣を拳で鳴らす。


「剣の重さは命の重さ。手に取るときは刃に命を乗せ、まさしく体の一部となせ。しかし忘れるな、長年連れ添った剣でも、ずっとお前の命を狙っている。隙を見せるなってな」

「どういう意味?」

「なんかな、昔から剣を渡されたばかりの子供は、その剣で自分の体を切ってみたくなるなるんだと。まるでタナトス()の精霊に囁かれるようにって。

 それと同じように崖とか、馬車付近ではタナトスが沸くから気を付けろって言われているんだ」

「タナトスか…」


 気を付けよう。


 崖を登りきり、目的地へと進んでいく。

 森の中なのに大きな岩が増え始めた。


 その中の、大きな岩同士が支え合ったような場所へと辿り着いた。


「ここ?」

「ここだ」


 クレイが地図を見比べながら頷く。


「本当にダンジョンか?」


 アスティベラードが疑っている。

 それもそうだろう。

 どう見たってダンジョンには見えない。


 視界の端でノクターンが辺りを見回している。


「どうしたノクターン」


 クレイが訊ねるとノクターンが首を捻りながら、「いいえ…気のせいです…」とやって来た。


「まぁ、前のアレフのダンジョンも同じような感じだったしな。ディラ、頼む」

「うーい」


 エクスカリバーを取り出して、岩を突く。


 ガゴンと音がして、岩の表面に『ベート』の文字が浮かび上がり、光輝く扉が形作られた。


 パスダンジョン、ベートか。


 更に右上に通るか通らないかの選択肢。

 通らないを押したら通常ダンジョンになるのだろうか。


「なんというか、鍵みたいですよね、ディラさん」

「鍵?」

「パスダンジョン開けるための」

「ああ、確かに」


 もう一度エクスカリバーで右上に表示されている文字の『通る』を突いた。

 とたんに景色が消えた。


「え!!?」


 真っ暗な空間。


「みんな!!?」


 しかも皆の気配も消えた。


 ぼんやりと微かな光が奥の方から沸いてきて、文字を形作る。


“『魔力』『攻撃力』『補佐力』『打消し』どちらかを選び、進め。すべての試験を制し、勝ち取るがよい”


 文字が消え、光る道が四つ出来上がった。


「個人レッスン的な? ええー、どうしよう」


 魔力はある。攻撃力もある、補佐も。なら不安定な打消しに行くべきだが、矢で打消しか。


「……面白そうだから打消しにしよう」


 どんなスキルが来るのか。


 基本的にはこの打消しってのは盾職特有のものなんだけどな。


 打消しと表示された道へと一歩踏み出す。

 踏み込んだところから光が広がり先の道を照らす。


── ガシャン


「!」


 他の道が崩れた。

 つまりは引き戻すことはできない、と。


 まぁ、別にいいけど。


 そのまま進んでいく。


 真っ暗な空間には道の光しかない。

 音は反響しない。

 【千里眼/見通し】でも皆の姿は見えず、【千里眼/見極め】でも五メートル先の光景を確認することはできない。


 コツン。


 ふわりと光がボヤけて、広場を形作った。

 といっても広場の外縁だけで、真ん中は底抜けのようにまっ暗闇。


「これ、落ちたら笑うな」


 しかし落ちることはなかった。

 そりゃそうだ。






『“打消し”を選んだ者よ。これより攻撃を仕掛ける。全て受け止め消すが良い』







 え?それだけ??



 前方から正方形の光の塊が迫ってきた。

 ものすごい速度だ。大きさは一メートル四方。


「これを消せばいいのか!」


 エクスカリバーを構え、狙いを定めた。



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