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旧・脇役無双~この弓はエクスカリバーである~  作者: 古嶺こいし
この弓はエクスカリバーである

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獣人種

 ガタゴトガタゴト馬車が行く。


「うう…」


 快晴でなんとも良い旅日和なのに隣でアスティベラードが撃沈していた。

 昨日の夜までは平気だった。

 馬車の中で雑魚寝し、早朝から出発した辺りからアスティベラードの顔色が悪くなった。


「大丈夫?」

「…に見えるか…?」

「見えないね」


 とはいえ、こういう船酔い的なものは魔法でどうにかなるものではない。

 回復魔法を掛けたとしても効果はせいぜい一時間あるかどうか。


「これを…一週間か…」


 いつも強気なアスティベラードが泣きそうだ。


 チラチラとノクターンが心配そうにこちらを見ている。


 それをじっと見ていたドルチェット。


「そういえば、自分の兄貴の一人がスゲー酔いやすくて、小さい時にめんどくさい思いしたこと思い出した」


 めんどくさいの言葉でアスティベラードがドルチェットを思い切り睨んでいる。


「睨むなって。でー、父上がよくその兄貴にミント食わせたりしてたり、あとは助手席に座らせたりしてたんだよ」

「へー、助手席に」


 何か変わったりするのだろうか?


 すると、ノクターンがアスティベラードを手招きしている。

 ドルチェットの言葉を受けて、助手席に座らせてみる気か。


 なんとかアスティベラードを助手席に座らせた。

 良くなればいいけど。


 クレイが地図を広げ始めた。


「次の目的地なんだが、その前にちょうど良い所がある。ここ、アラド湿地帯だ」


 指差す先には湿地帯の印。


「ここ突っ切っていくの?馬車沈まない?」

「沈まねーよ。橋が掛けてある」

「なーんだ」


 そーなのか。


「そこにバルーンやらスライムの生息地がある。そこでホップバルーンを捕まえて、加工する。なんなら大量にスライム捕まえて天日干しにして売るもの良いだろう」

「売れるの?」


 なんに使うんだ?

 するとジルハが答えた。


「凍らせるとシャーベット状になるので、それをフルーツに添えたりするのが流行っているらしいですよ。わざわざ養殖したりしたりしているそうです」

「へぇ、食べれるんだ」


 俺の天敵スライムも、きっとここの人間は美味しく召し上がってしまうのだろう。差し出されてもご遠慮したいけど。


「でも天日干しする専用の籠がないからな、それは諦めるか」


 と、クレイ。とても助かる。


 ガタガタと馬車は進み、ほんの少しだけアスティベラードが復活した。


「ノクターンよ」

「はい…」

「馬を交代せんか?」

「ええ…?」


 なんでと言わんはかりのノクターン。


「私もクロイノで馬を引っ張ってみたい」


 子供のような要求だった。

 まだ具合悪いのに大丈夫なのか?


「少ししたら変わってください…」


 まさかのノクターンがアスティベラードに席を譲った。


 鐵馬にクロイノが乗り移り、先程よりも早い速度で馬車を引き始めた。

 え、具合悪い人がこの速度大丈夫なの?


「大丈夫?アスティベラード」

「助手席に来た辺りから顔色は良くなってましたし…、恐らくは大丈夫でしょう…」


 座る位置でこうも変わるのか。おもしろ。


「でー?そのバルーンの所で捕まえるのは誰だ?どんくさはすぐ沈むぞ」

「では…辞退いたします…。ロエテムは重いので…」

「そうだな。その方がいいな」


 軽くする魔法使っても、一度沈んだら引き上げるのも大変そう。


「クレイは?」

「おれもきついな。盾職は後方で大人しく足場を作っておくさ」

「自分も立ち回りはうまくできない。その代わり沼を沸騰させておびき寄せてやるぜ」

「なんかで見たことあるな、その漁法」


 もっともそれは電気でだったけど。


「よし、決まりだな。細かな作戦は着いてから決めよう」










 夜。


 あんなにグロッキーだったアスティベラードが、ノクターンと交互に運転をするようになってから体調が良くなった。

 こんなことってあるのでしょうか。


「何が違うのかいまいちわからん」


 というより乗り物酔いしないからどれだけ辛いのかわからないけど、アスティベラードの様子を見る限りインフルエンザ並みに辛そうだというのは分かった。


 家族全員強かったからな。

 乗り物に。


 周辺の景色も変わり初め、森から林になっていっている。


 これまで盗賊の襲撃もなければ獣の襲撃も無かったが。


「!」


 みんなが寝静まった頃に【千里眼/見通し】が発動して目が覚めた。


 身を起こして欠伸をする。

 眠い。


 馬車からノソノソと降りると、 夜番をしていたジルハが気付いて声をかけてきた。


「あれ?ディラさん起きたんですか?」

「うん…。なんか気配を感じて…」

「ああ、そうだったんですか。実は僕もどうしようかと思っていたところです」


 ジルハを見ると、目に違和感を覚えた。

 なんだかいつもと違うような。


「僕が狩ってきますので、ディラさんは此処で馬車を守っていてもらえませんか?」

「俺も一緒に居た方がよくない?」

「いえいえ、大丈夫です。獣型のモンスターは僕がやった方が確実なので」


 ザワリとジルハの体が変わる。


「前に僕に質問があると言っていましたよね」


 獣の耳に狼の尻尾。首もともフサフサとした毛で覆われていく。


「気を遣って聞かないでいてくれたので、僕からお答えします。僕、実はワーウルフ種なんです。といっても純粋なものじゃないんですけど」


 五秒も経たないうちにジルハは立派な人狼へと姿を変えた。黄金色の人狼だ。


「おおお、めっちゃカッコいい」


 そう言えばジルハは狼の顔のまま照れ臭そうな顔をした。


「その感想、予想外で凄く照れますね。それではちゃちゃっと終わらせてくるので」


 言うや、ジルハは夜のなかに消えていった。



 気を遣ってっていっても、実は忘れてただけなんだけどな、言わんどこ。


 それにしてもワーウルフか。

 ブリタニアスオンラインでは確か敵モンスターだった気がする。獣人種全般が敵だったけど、この世界では違うらしい。

 とするなら猫耳にも会えるかもしれない。


「ふぁああー。眠い」


 とにかくジルハが帰ってくるまで頑張って起きておこう。


 






 翌朝。


 朝食にはバードラゴン(四つ足の大鳥)の丸焼きが出てきた。

 とても美味しかった。

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