刺客と遭遇
宿から鐵馬を出したらご主人に馬を連れ込むなと怒られた。
これは人形ですと訴えたが、人間以上の大きさのものは禁止だとさらに怒られた。邪魔なんだと。
ガシュガシュと針金が揺れる音がする。
ちょっとうるさいかもしれない。
それに通行人の視線がみんなこっちを向いていた。
「ゴムの蹄サポーター欲しいな」
そうすれば蹄部分の針金の磨耗が減るかもしれないし音もましになるはず。
そこにドルチェットが食い付く。
「? 蹄なんだって?」
「このままだと針金が悪くなるの早くなるかも」
「ふーん」
同じく聞いていたジルハが何かを思い付いた。
「水辺にいるホップバルーンとかの核なんてどうでしょう?あれはよく跳ねますし、それを使えばゴムと同じようにカバーになるかと」
「ホップバルーンか」
俺の知っているホップバルーンと同じなら使えるはず。
だけど一つ疑問。
「核破壊しないでどうやって捕まえるの?」
基本的にバルーンやスライム等の流動的生物は核を破壊しないと再生しちゃう。
「コツがあるんですよ。捕まえて外側を剥ぐまではめんどくさいですけど。核の停止の方法は結構簡単で、塩を使うんです、こう、核を二日くらい塩に漬けておくと再生しなくなるんですよ」
「へぇ、そんな裏技が…」
ゲームでは二日くらい塩漬けできないもんな。
「今回はドルチェットがいるからからもっと簡単ですね」
ジルハの視線がドルチェットの剣に向いている。
炙る気か。
突然ノクターンが立ち止まった。
「うーん…」
「どうした?ノクターン」
「二体同時はどうにも操りにくくて…」
でしょうね。
口には出さなかったけど、素直にスゲーって思ってたもん。
「よいしょ…」
人指し指をくいっとやって、ロエテムを鐵馬の胴へと跳ばさせた。
力なく鐵馬の背中にぶら下がるロエテム。
とてもシュール。
「ああ…、操りやすくなりました…」
そのシュールの光景のまま、鐵馬を走らせるための広場へと向かった。
「クレイ」
「なんだ?」
「後で馬具買っても良い?いくら人形とはいえ、ロエテムのあの格好は可哀想」
「奇遇だな。おれもそう思っていたところだ」
広場でものすごい速度で駆け抜ける鐵馬(うえにロエテムが走る度に半分浮いてる)。
動きは完全に馬そのもので、どうみても針金の集合体と思えない。
「うーむ。あれではただの馬と同じよ。どれ、動きに変化をつけてやろう。クロイノ!」
眼前で鐵馬がクロイノに追い掛けられ始めた。
「!!? やめ…やめてくださいアスティベラード…っ!危ないです…っ!」
あれ、捕まったら壊れるかもな。
ノクターンはそうはさせまいと必死に逃げ回り、馬とは思えない動きで避けまくり、ついに鐵馬の上でロエテムがアスティベラードにやめてくださいと土下座を始めた。
器用すぎる。
しばらく見守ってたが、洒落にならなくなってきたのでなんとかクロイノを止め、馬車を取りに向かう。
「もう動きバッチリじゃない?」
「そう…ですね…」
とうとう疲労からか鐵馬に運ばれるノクターン。
顔は死んでる。
「遊んでいて分かったが、ノクターンが操り疲れたときにこの中にクロイノが入って動かす事ができるやもしれぬ」
そんなことできるんだ。
「いえ…、つい先程【自動操縦】スキルが出たので大丈夫です…」
ついにノクターンが魔術師のスキルではなく人形師のスキルを獲得し始めた。
「ん?」
突然【千里眼/見通し】が発動。
少し離れた建物からこちらを弓で狙っている輩を発見。
射ち放たれた矢は俺の方にまっすぐ飛んでくる。
ああ、俺の刺客ね。
初めて見たわ。
てかフード被っているのによく分かったな。
飛んできた矢を掴み取り、即座にその矢をエクスカリバーでつがえて射ち返した。
矢は射ってきた奴の弓を破壊して、後ろの壁をも破壊。
腰を抜かしている刺客と、隠れていた奴も衝撃で腰を抜かしたのを確認した。
「ん?どうした?エクスカリバーなんか出して」
「いや、ちょっとね」
二人が慌てて逃げていく。
本当は追い掛けたいんだけど、まぁいいか。
馬車に鐵馬を繋いだ。
馬が派手な以外は良い感じ。
「良さそう?」
「はい…」
回復したアスティベラードが楽しそうに馬車を引いている。
「馬具買ってきたぞー!」
クレイが買ってきた馬具を装着し、そこにロエテムの跨がらせる。
騎士っぽい。カッコいい。
「これいつでも出発できるな」
ワクワクとしているドルチェットが荷台に乗って座り心地を確かめていた。
「じゃあ食料調達と各自荷物を持って、二時間後にここに集合しよう。解散!」
クレイの合図によって一時解散。
「ディラ」
「ん?」
お留守番のアスティベラードが声をかけてきた。
「さっきの奴等は西の方向、酒屋の前にいる」
「バレてたのか」
「目は良いのでな」
「酒屋だね、ありがとう」




