盗人に容赦はしません
「めっちゃ高く売れたんですけどー」
予想の二倍の額で売れた。
主にクレイの手腕である。何あの駆け引き。勉強になるからと同行させられたけど、押して引いてが見事すぎて参考にならない。
お金の入った袋を鞄にしまう。
「クレイさん、【商売人】とかのスキル持ってます?」
そんなスキル聞いたことないけど。
「昔ちょっとな。にしても売る用はお前とアスティベラードが獲った方が良いのがわかった。次からはお願いするぞ」
「了解リーダー!」
宿に戻ると机の上にこの街の地図が置いてあった。そこにはとある場所にペンでマークが書かれている。
どうやら待ちきれずにみんなで馬車とか荷車を見に行ったらしい。
「結構郊外にあるんだね」
「さすがに街中では売ってねーよ。でかいんだぞあれ」
「ああ、そっか」
想像してみたら確かに邪魔だ。
「ケイケーイ」
窓際にトクルがいた。
お留守番ですか?
「お?」
頭に乗ってきた。
「案内シテヤル」
喋った。あー、そうかしゃべるかこいつ。
俺を助けたときも喋ってたし。
…………そういえばあの時魔法使わなかったかこいつ??
「早くいこうぜ。日が暮れる前に見とけるだけ見ておかねーと」
「うーい」
それも後で聞けばいいか。
荷物を一旦置いてと。
「案内よろしくー」
鼻歌を歌いながらクレイとトクルの案内のもとみんなのところへと向かう。
ついでに骨董屋やガラス屋も見る。
「此処ってリクエストしたら何でも作ってくれるんだっけ?」
「強度は値段次第みたいだが。ノクターンの言ってたあれか?」
「そそ。さすがの俺もさ、土台がないとちょっと提案されたの作るの難しいかなーって」
そもそも針金売ってるのかな。
「おわっ」
「失礼…」
後ろから男の人にぶつかられた。
はじめてだよこんなぶつかられ方。
「…………ん?」
【千里眼/探知】が勝手に発動した。
おや?これもしかして。
「何してるんだ?」
ポケットをまさぐり、納得。
マーリンガン特製の村人の証をすられましたね。
あとお金も。
「クレイさんや」
「おう?」
「あの人に大事なの二つほど盗られたので先いってて。ちょっと取り返してくる」
トクルをクレイに手渡す。
「え!?おれも追いかけるぞ!」
「いやいや、ほら、見てあの人。こっちの反応に気付いてめっちゃ逃走してるから」
指差した方にはさっきの男がすごい勢いで駆け出している姿。
あれ絶対【加速】か【俊敏】スキル持ちじゃない?
多分クレイでは追い付けない速度。
なんなら此処で服だけ狙って矢を射っても良いんだけど、ゲームじゃないから街中でそんなことしたら捕まるかもしれないし。
なら、普通に追いかけて追い詰めて取り戻す。
「すぐに追い付くから!」
言うや【身体能力向上】発動して男に向かって思い切り駆け出した。
男は焦っていた。
何故なら男は今生まれてはじめてホラー的な恐怖を味わっていた。
今日もアホそうな二人組の、特に隙だらけの奴から金と金目の物を【掛針】スキルで掠め盗る事に成功した。
だいたいの奴はその時点では気が付きもしないが、そいつは鋭いのか気が付いた。
でも少なくても気が付いてもその時点ではもう遅い。
男は【俊敏】と【加速】スキルを持っていた。
伊達に長年盗みで喰っていた訳じゃない。
奴が気が付いた瞬間はそのスキルを発動して、更に人混みに紛れ込んだ。
こうなるともう見付けられない。
最悪見付かったとしても、男の足に追い付けるやつなんかいなかった。
「っっ!!」
だから男は焦っていた。
なんで奴はずっと俺のことを見失わずに追ってきているのかと。
フェイントを掛けても、塀を乗り越えて屋根を駆けても、【気配遮断】を発動しても奴は一定の距離のままずっと追い掛けてきた。
「ひいっ!ひいっ!」
男が息を切らしても、後ろのそいつは息一つ乱さずに飄々とした様子で追ってくる。しかもちょっとずつ距離を詰めて来ていた!!
(ちくしょう!!獲物を見誤った!!)
男は激しく後悔したが、既に後の祭りで。
「ねぇ、そろそろ返してくれないかな?」
気が付けば、
奴はすぐ真後ろにいた。
「ぎゃああああああああああ!!!!」




