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旧・脇役無双~この弓はエクスカリバーである~  作者: 古嶺こいし
この弓はエクスカリバーである

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上限が条件

「あのさ、あの後…俺どうなったの?」


 無意識に胸をさするが何ともなっていない。と思う。

 少なくとも穴は空いてない。


 涙を拭いながらアスティベラードがポツリポツリと説明を始めた。


「突如、あの女の言葉が終わった瞬間、胸から白いトゲが突き出したのだ。倒れるそなたをなんとか抱き止めた。あの勇者も来ようとしたが、周りのものに止められておった。

女はこれでお前もシステムに組み込まれた。これで、存分に人をかえすことが出来ると言っておった」


 かえす?


「そして、気がついたらここに…」

「……なるほどー…」


 じゃあやっぱりあのやり取りは夢だったのか。

 だよなー。


「ん?じゃあ俺生きているのは変じゃない?」


 死ぬはずじゃない?


「あの…、実は変ではないのです…」


 ノクターンが恐る恐るそう言った。後ろでマーリンガンも頷いている。

 いたんかい。


「シャールフも一度戦いに負けたのです…。最初の聖戦で…。ですが…、何故か生き返ったと書いてありました…」

「そうなんだ」


 起き上がりつつ体を確かめた。

 あれ?首の傷が残っている。

 かさぶただけど。


「死んだ先で何処かに行ったとか無かったかい?」

「ああ、うん。なんか、白い……あれ?」


 うまく思い出すことができない。


 一面白かったというのは覚えているんだけど。


「そこに誰かいて、何かを貰った???」

「記憶が曖昧すぎるだろ」


 ドルチェットに言われてしまった。


「それは仕方ないよ。きっと口に出してはいけない出来事だったんだろう」


 なんだそれ。そんなことある?

 口に出してはいけないあの人みたいな。


 しかしマーリンガンのフォローでみんなは理解したようで、体験した本人だけが理解できないという不思議な事態になっていた。


「とにかく、詳しい説明は後にして、二人ともお風呂に入ってきた方がいい。着替えを置いて置くから」

「混浴じゃないよね?」

「ちゃんと別れているよ。安心しなさい」





 マーリンガンの案内のもと、炎の家の中に浴場みたいなのが出来上がっていた。

 本当になんでもありだな。


 服を脱いで、浴場へと足を踏み入れた。


 窓から見えるのは炎。


「うーん、有り!」


 露天風呂から見える紅葉も粋っていうし、多分この炎も粋だ。


 桶でお湯を掬って体を洗っているとき、腰の一部が何となく痛い。

 虫に刺されたかな?

 凄く見辛いところにあるけど、何となく赤い気がする。


 後で誰かに確認してもらおう。


 さっさとお風呂を済ませ戻ると、新しい服が置かれていた。


 すごいぞマーリンガン仕事が早い。


 服を着てみんなのもとに戻ろうと立て掛けておいたエクスカリバーを手に取り、違和感に気がついた。


「こんな模様あったかな」


 中央から外側にかけてどことなく翼と蔦を連想させる模様が出来上がっていた。

 俺はそんなデザインの弓を知らないし、弄った覚えもない。

 エクスカリバーはエクスカリバーである。

 試しに弦を引いてみた。


「引き具合も異常なし」


 ならばなんの問題もない。


「変なのー」


 これもマーリンガンの仕業かな?

 後で言っておかないと。勝手に弓弄るの止めてくれません?って。


「僕が勝手にそんなことするわけないだろう??」

「あれ?そうなの?」


 みんなのところに戻る前に部屋にいたマーリンガンに訊ねたらそう言われた。


「なんだ。てっきりマーリンガンが犯人かと」

「君は僕のことなんだと思っているんだい?」

「マーリンガン」

「君に聞いた僕が悪かった」


 何その顔。


「そろそろみんなの訓練も終わるはずだよ。作戦会議もあるはずだから先に行ってなさい」

「はーい」


 洞窟に辿り着くとちょうどクレイ達が出てきたところだった。

 んん?どうした?そんなにボロボロで。


「ディラ、もう体は大丈夫なのか?」

「うん。元気元気ー!」


 スキル乱用で気持ち悪くなると思ったけど、何故だか全然平気。


「そうか、よかったな」


 あれ?なんだかクレイ達の方が元気なさそう。


「それより、今回はどんな敵だったのか教えてくれないか?アスティベラードの話は興奮しすぎなのかよくわからなくてな」

「いいよ!」


 というかアスティベラード見てたのか。どこにいたんだろう。


 最近食事とかするときの丸太に腰掛けると、ドルチェットとジルハ、そしてクレイが同じように腰掛けた。


「ノクターンは?まだ修行?」

「いや、アスティベラードと風呂にいったぞ」


 と、ドルチェット。


「ふーん」


 そうか。


 そっから、クレイ達に起こった出来事を全て話した。

 初めは冒険話を聞くように目を輝かせていたドルチェットもだんだん表情を険しくしていく。


「なんだろーな。おれ達も随分と強くなったと思ったんだが、お前の話を聞くと落ち込むよ」

「ああ。なるほど、きっとそんな高レベルの戦いに挑めるものをその鐘の音は選別しているんだろうな」

「でもなんでアスティベラードは行けたんでしょう?」

「おそらく、最低限のレベルが40なのだろう」


 アスティベラードがやって来た。

 その後ろからノクターンがワタワタとアスティベラードの髪をタオルで拭いながら付いてくる。


「私の上限が40だ。それに、そこらにいた兵どもも40かそこらだったからな」

「そうなんだ。てかそんなこと分かるんだ」

「うむ。視える」


 アスティベラードに【鑑定】スキルがある疑惑浮上。

 やべー、下手すればステータス丸見えになっちゃう。


「それか、上限がついているっていう条件もあるよ」

「マーリンガン」


 え?ダジャレ?


「あの、言おうとしてダジャレっぽくなった訳じゃないから」

「気付いていたんだ」

「その上限っての、どういう意味なんですか?」


 クレイが質問。


「ごくたまーに『上限』が付いてないと開かないダンジョンがあったりするんだ。そもそも上限っていうのはその生物の本来の限界値だから、それを世界の一般的なルールをねじ曲げて上に行こうとすると魂に歪みが出てくる」

「歪み」


 じゃあ俺の魂歪みまくり?


「その歪みが鍵になって開くんだ。今回一緒にいったアスティベラードは上限達成してただろ?ディラは、なんかよくわかんないけど向こうの世界では上限達成者なんだろうし、可能性としては捨てきれない」

「あの開かないダンジョンってもしかしてそれですか?」

「多分ね」


 ジルハがそんなダンジョンを知っているようだ。


「じゃあみんな上限になったらそっちのダンジョンに行く感じ?」


 するとマーリンガン。隣でポンと掌を打つ。


「それがいい。しかも運のいいことにこの近くにその上限付きでしか開かないダンジョンがある。残念ながら僕はここから動けないけど、そこまでの地図を出してあげよう」

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