蔦と砂漠
凍った蔓を踏み台にして高く跳んだ。
既に【身体能力向上】や【千里眼/見渡し】【千里眼/見極め】を発動している。
アスティベラードの所に人が集まってきている。
もちろん蔦やハーピーも追いかけてきているが、クロイノが撃退をしてくれている。
一応アスティベラードに治癒の魔法具を渡しておいたけど、さっさとボスを倒さなくちゃ。
「……それに、もしかしてクレイ達も遅れて来るかもしれない…」
アスティベラードが一緒に来たんだ。
あいつらが時間差で来る可能性もある。
迫ってくる蔦やハーピーを【氷結属性付与】の矢で凍り付かせたり撃ち落とす。
町の中は壊滅状態だった。
蔦が容赦なく覆い尽くし、建物を破壊していく。
「人!?」
慌ててその場所へと向かう。
着地地点に【氷結属性付与】の矢を射ち込み、なんとか着地した。
「たす、たすけて!!」
ひどい怪我だが生きている。
すぐさま付近の蔦を凍らせて傷の具合を確かめた。
脚の骨が折られている。これではアスティベラードのところまで逃げられない。
かといって俺が連れていくのも時間が掛かる。
「………、あの、恨まないで下さいね」
「へ?」
【弓矢生成】で縄付きの矢を造り上げ、それをその人の胴体にくくりつけた。
そしてエクスカリバーを攻撃力と飛距離が段違いのクロスボウ型へと変更すると、その矢をつがえた。
「あの、何をしているんです?」
不安そうな顔でこっちを見ている。
何となく察しているけど、まさか本当にやるわけ無いよね?出来ないよね?と言いたげな表情。
ごめんなさいね。やります。
思い切り弓を引く。
このクロスボウ・流星は攻撃力特化の優れものだが、発射まで時間が掛かる上に調整が難しく、そしてすごい体力を消費する。
おまけに今回は久しぶりの人間付きだ。
着地はクロイノに任せるとして、上手くいってくれよ。
スキル【人間ロケット】を発動。
これで飛んでいる間この人の負荷は1/10にまで減少してくれる。
「舌を噛みますので口は閉じていてください!!」
「やめてください貴方正気で──」
言い切る前にその人は矢と共に空高く飛んでいった。
エクスカリバーにすかさず戻して通常の矢を五連射。これで上空でハーピーに襲われてもなんとかなる。
「さて」
凍ってない丈夫な蔦がうごうご出てきた。
アスティベラードが凍らせた根っこみたいな蔦以外にも先の方が瘤になった変な形の蔦も出てきた。
恐らくあれでハンマーみたいにして骨を折って捕まえるのだろう。さっきの人の折れた箇所にそういう感じの後が付いていた。
「にしても気色悪いな」
改めて見回すと、ここは酷いところだった。
人間が逆さ釣りにされて胸に穴を開けられていたり、何故か腹が異様に膨らませられたものや、繭みたいにされていたり、そして気付きたくなかったが、蔦に性的に襲われた後みたいなのも大量にいた。
「……思い出した。これ、あれだ。年齢制限の禁域にいるって噂のやつそっくりだ。胸くそ悪い」
噂だけではプレイヤーが襲われたあと負けたら苗床にされ、能力値半年間半減ペナルティ喰らうってやつ。俺は年齢制限対象外だからあんまり詳しくは知らないが、先輩が面白半分で挑んで泣かされて帰ってきたのを知っている。
「もっとも、向こうでは串刺しだったけど、さ!!」
特殊スキル【砂漠属性付与】の矢を一面に連射する。
相手がわかればこっちのもんだ。
弱点の乾燥化を喰らいやがれ!!
射ち抜かれた蔦がみるみる内に枯れていく。
「生きている人は??走れる人はどのくらいいる!?」
たったの七名が生きている、が、走れそうにない。
これは矢で飛ばせそうになさそうだ。
「これ、持ってて。蔦が来たらこれを刺すだけで近付かなくなるから。でも隙を狙ってくるから固まって、そう、絶対に離れたら駄目だよ」
【砂漠属性付与】の矢を14本預け、さらに地面にも四ヶ所射ち込んだ。
結界みたいになったのか、新しい蔦が近付くのを躊躇している。
「あ…ありがとうございます…」
「すぐに元凶倒してきますから」
「待ってください!!行かないで!!」
「此処にいれば大丈夫ですよ。それに…これ以上、被害を出すわけにいかないんです」
そう言えば、掴んでいた服を離してくれた。
再び周辺を凍らせながらまた屋根の上へと躍り出ると、俺を倒すべき敵と認識した蔦とハーピーが襲い掛かってくる。
それを【砂漠属性付与】と【氷結属性付与】の矢で迎撃していく。
「!」
前方に蔦が壁のように競り上がってくる。
「そんなんで俺が立ち止まると…、!!?」
人間が編み込まれている。なるほど、肉壁とか卑怯なり。
だけど。
「そろそろちゃんと戦おう。これは出し惜しみしている場合なんかじゃない」
【砂漠属性付与】【雨状放射】【弓矢生成】【動作加速】
更に。
【波紋式効果拡大】【特殊スキル/非情な太陽】【攻撃有効範囲レベル5】【筋力向上】【衝撃受け流し】【特殊スキル/流星群】【効果倍増】
突き出した脚で急ブレーキをしつつ、エクスカリバーから広範囲攻撃特化型の白雪ノ琴へと切り替えた。
弓が六つ重なりあった形状になり、弦も同様に六本。
ピンと張った銅線のように硬い弦を引き絞る度に矢が増えていく。弓にも、周りにも。
限界まで引き絞った時の矢の数はもはや千を超えていた。
「いくぞ!!」
それを真上へと射ち放った。
放たれた矢は上空で起動を変え、流星のように光輝き、次いで雨のように町に降り注いだ。
町にあった蔦が消滅していく。
萎れて黒く、そして砂になる。
バシャンと町は黒い砂に満たされた。
蔦の肉壁にされていた人達は砂の中に落ちていった。
あ、鼻血。
くそー、なんかゲームよりも体力の消費が激しいのだが。
「でもこれで邪魔物はハーピーしか居なくなったわけだし、この隙に…、!!!」
光の玉が飛んできて避けた俺の体のスレスレを通過していった。
『あら、避けられてしまったわ』
【千里眼/見極め】が発動し、視界が絞られる。
そこには見たことのないモンスターが笑いながらこちらを見ていた。
女性の声が空から響いてくる。
『さぁ、おいで、稚児や。母が相手をしてあげますわ』




