ビグ・マネーバ
「マーリンガンてめぇふざけんじゃねーーぞおおおおお!!!!!」
気を抜けば即死しそうな攻撃の雨を掻い潜りながら俺は目の前のゆるキャラのような仮想敵に向かって叫んだ。
俺の仲間は既に死に戻り中で、ペナルティとして俺一人で俺用にレベル調整された&不利属性と一騎討ちで戦う羽目になっていた。
なんでそうなったのか。
原因は数時間前に逆戻る。
「レベルアップを手伝う?」
ドルチェットが胡散臭い笑顔のマーリンガンへ言った。
「正確には、次の敵に無駄に殺されないように、予習をするって事です」
あー、なんとなく分かった。
「君たちはどうやってレベルを上げるのか理解しているかい?」
ム、とアスティベラードが不機嫌顔になった。
バカにされたと思ったのか。
「モンスターを狩って経験値を積めば上がる。そんなこと子供でもわかるわ」
「そう。でも実は職人でもレベルの概念は存在する。生産者ギルドに登録していないと知らない人も多いけど。その人たちは戦ってないよね?でもレベルは上がるんだ。なんでかな?」
「………」
考え込むアスティベラード。
「あの…、もしかして挑戦の数…とかでしょうか…?」
おずおずとノクターンが答える。
魔法職は戦わずにレベルアップする人達がいるから思い付きやすかったのか。
「それも半分当たっている。簡単にいうならば、自分という存在の熟練度を上げる行為をすると経験値が溜まるんだ。聞かないかい?同じ相手ばかりではレベルが途中で止まるっての。あれは、その存在に対しての対処を全て知ってしまったことによるレベルの打ち止めなんだ」
クレイがハッとする。
「ああ、もしかしてギルドの推奨している、相手にするなら自分のレベルの一つ上を目安にしろっていうの」
「そうそれ。格上ならば得られるものが多い。だから経験値を溜めるにはもってこいなんだ。ちなみに人によっては同じ相手でも自分にわざと不利な属性を選んだり、デバフを山盛りにしていくやつもいる」
「イカれてるな」
うええ、とドルチェットが舌を出す。
俺はなにも言えない。それ、やってたから。
ブリテニアスオンラインで。
「つまりそれをやるんですか?」
ジルハもなんとなく察して言うと。
「そそ」
とマーリンガンは肯定した。
「でも実際に戦うってなるとどうしても時間も掛かるし、危険だからね。だから」
机の下からマーリンガンはあるものを取り出した。
四角いゼリー状の物体。中には赤いタピオカみたいなの。
それを見た瞬間、俺は固まった。
え、まってそれまさか。
「これを使う。場所は良いところがあるからそこを使うと良い」
とにかくもやることはレベルアップ。その手助けをしてくれるなら断る理由もないと承諾。
「待って、行く前におばあちゃんに挨拶してから」
で、俺だけおばあちゃんと無事再開してお喋りしてから、マーリンガンに連れられてついた場所がここ。
「洞窟やんけ」
「ただの洞窟じゃないよ。中を凄い弄っているからね」
洞窟の側にマーリンガン特製の杭が打ち込まれていた。
「じゃあ、試しに俺行くよ」
「え」
クレイが突然間抜けな声を出した。
「マーリンガンが作ったものだし、お試しして安全確認できたら教えるよ」
「ディラくん酷いなぁ」
マーリンガンの言葉を無視して中へ。
一面白い空間が広がっていた。
【千里眼/感知】で視てみたら一面魔法陣がびっしり。
「大丈夫そうだったよ。修練の間みたいな感じだった」
何の面白味もない見覚えのある空間だった。
「普段は僕の大型の作品を造るときに使う部屋なんだけど。はいこれ」
「?」
マーリンガンから渦巻きの丸い玉の付いたアクセサリーを配られる。
「君も」
トクルにも。
「なんですか?これ」
クレイが訊ねるとマーリンガンが答えた。
「簡単にいうなら復活の魔法具かな?」
「それ、違法じゃ…っ!」
「しーっ」
ジルハの口を遮りマーリンガンが首を横に振った。
「なにもこれで商売をしているわけでもなければ、流してもいない。あくまでも私有地で遊ぶだけだ。いいかい?」
「やっぱりそんな人間だったんだなマーリンガン」
「過去にも同じようなものでレベルアップしていた君に言われたくないね」
「本当にどこまで俺の記憶を見たんだマーリンガン」
なにも言えなくなっちゃったじゃん。
やめてみんなもそんな顔しないで。合法のゲーム内でのやつだから。
「それ、中に入ると消えちゃうけど、死んじゃってもここに戻ってこれるから安心して戦ってくれて良いからね」
「死んじゃっても!!??」
「マジかよ!おもしれぇな!!」
「し…しん……っ」
「………」
クレイが突っ込み、ドルチェットは面白がり、ジルハはアクセサリーを無言で見つめ、ノクターンは青ざめ、アスティベラードは虚無な表情でこっちを見ていた。
様々な反応ありがとう。
「レベルは、そうだなー。まずは君が見たレベル30からにして、回復したら君の想定するレベル40、50、60って感じにしていこうか」
「質問して良い?なんで毎回俺の記憶から引きずり出すの?」
「だって君の方がモンスターのバラエティー豊かなんだもん」
当たり前じゃん?みたいな顔された。
「ちなみにみんな死に戻りすると君だけ強敵と戦う羽目になるから気を付けてね」
「はぁ」
強敵ねぇ。なんだろう。
「これもって、ほらほら。中で遠くに投げてね」
そして手に置かれた四角いゼリー。
「ねぇ、やっぱりこれって「ささ!入って入って!」
言葉を遮られ中に押し込まれた。
やっぱり見たことあるよこれ。
手のひらの四角いゼリーが揺らせばブルブル震えている。
「きゃあ…っ」
「何をしておるのだノクターン」
中に着いたときに躓いたノクターンをアスティベラードが立ち上がらせている後ろからドルチェットが現れた。
「へぇー、なかなか広いんだな」
「先が見えない…」
最後にクレイが入ってきた。
「みんないるか?」
「うぃーす」
みんな揃ったのを確認して、投げる体勢にはいる。
「すぐに武器用意しておいて、多分すぐに襲ってくるから!!」
思い切りソレ投げ、弓を構えた。
もしアレが俺の知っているものだったなら。
ゼリーが三度バウンドして一気に膨れ上がった。
「やっぱり、ビグ・マネーバ!」




