額に『肉』
外に出るとアスティベラードがキレていた。
よくもあやつにあんな酷い事をしてくれたな!!となにか色々怒鳴っているが、残念ながらアスティベラードの周りには倒れた奴しかいないので聞いているのはおれと皆だけである。
……死んでないよな?
「あの……大丈夫ですか…?」
「食べ物ないですか?空腹すぎて死にそうです。水でも良いです」
「これ飲んどけ。ノクターン、どのくらい魔法は持つか?」
クレイに口に突っ込まれた物を飲む。
なにこれ美味い。ヤク○トみたいな味がする。
「あと…、持って7分程度です…。でもアスティベラードが上乗せしているみたいなので…13分ほどでしょうか…?」
「撹乱させていれば逃げ切れるか。よし、行くぞ」
「待って俺のエクスカリバー取り上げられた」
「は?えく?なに?」
「弓」
マジかこいつみたいな顔されたけど。
「もし村がなんかなってたら形見的な感じになっているからどうしても取り戻したい」
「そんなこと言っても探している時間なんか殆どないぞ」
「場所は分かる」
さっきから【千里眼/見極め】を発動しなくても視線が突き刺さっている。
「あそこにある」
鋼鉄車の前方を走っていた豪華な馬車の後ろの部分。
「丁寧に開けている時間はないな。ドルチェット!」
「なんだ?」
見張りをしていたドルチェットがやってくる。
「あの馬車の後ろの部分を破壊できるか?出来るだけ端の方を」
ドルチェットがそこを確認してニヤリと笑った。
「はっ!任せろ!」
大剣を抜き、思い切り馬車に振り下ろした。
「わお」
切れすぎて車輪まで割れた。
「俺のエクスカリバー大丈夫かな」
「ドルチェットは、一応腕は良い方ではありますけど、加減が苦手で」
「そんな感じはする」
ジルハのフォローがフォローになってない件。
「お?変な箱があるぞ。これか?」
ガチガチに拘束された箱をドルチェットが掲げてきた。
視線はその中から。
「それです」
「おーけー。よっと」
馬車に繋がれてた鎖を大剣の切っ先で切断し抱えて持ってくる。
「ほらよ」
「うーわ、ガッチガチ」
激しく同情。これボルガがやっただろこれ。
「解いてる時間ないな。あとでやろう」
「ちょっと待って。ボルガとあの見張りに仕返しだけしたい。すぐ済むから」
此処でも使えるか分からないけど試しに季節イベント参加記念スキル【ネタスキンスタンプ】を発動。
手に現れたマジックペン型銃。
出来た。
それをボルガと見張りの方向に向かって発射。
「なんですか?それ」
珍しくジルハが興味津々で聞いてきた。
「正月イベントに配布されたやつなんだけど、ムカついたから額に肉ってスタンプ張り付けてやった」
「??」
どんなに擦っても洗っても一週間は落ちないスタンプだ。皆に笑われちまえ。ざまーみろ。
「よし、逃げるぞ。ノクターン、アスティベラードを呼んでこい」
クレイに担がれ森を進み、川原までやって来た。
「ここを下っていきましょう。臭いで追跡の確率が低くなります」
先導するジルハの後に続いていく。
「介護されてる気分…」
てか凄いなクレイ。俺と殆ど背丈変わらないのに俺を担いでこの速度って。シールダーの職業補正?
「実際そうだろ。まぁ、3日間あの状態だったと思えば同情しかないからな。体が治るまでゆっくりしてろ」
「わーい……、…3日?」
なに?3日って。
「気付いてなかったのか?お前が連れ去られてから3日経ってんだぞ」
「全然気が付かなかった…」
外見えなかったし。あ、でも確かに見張りがやたらとパンと水を目の前で見せびらかすように飲食してたり、すぐに寝転がってイビキ掻いてるなと思ってた。
「多分、馬車に掛けられた結界か、もしくはそういう毒を盛られた可能性が高いな。ソウツ毒とかか、体の機能を限界まで低下させるヤツな。一日の体感時間がずれたり意識が飛び飛びになったりする。覚醒剤に使わる有名な毒だ」
「げぇー、こっわ」
「しばらく後遺症が残るかもしれんが、そこはなんとかなる。対処法を知ってるからな」
「さすがリーダー心強い」
てか毒の知識凄いな。
俺も勉強しよう。
「………」
「あの、アスティベラードさん」
あのあとずっと無言のアスティベラードが俺の方に視線を向けた。
黒いのも。
「ごめん、警告してくれてたのに油断してた」
「良い。許す」
許してくれた。
「私も追跡しか出来なかった。それに三日も掛かってしまった…。今もあやつらを消し炭にしたい気持ちで一杯である」
「アスティベラード凄かったんだぜ!クロイノからお前が危険だと報告があったってトクルがノクターンに報せてさ、すぐさまクロイノとトクルが追跡交代して常に場所を教えてきたんだ。ちょーっと足を確保するのに手間取ったが、間に合ってよかったぜ」
ドルチェットが目をキラキラさせながら説明してくれた。
そうか。黒いのがちゃんとヘルプミーと教えてくれたのか。…て。
「クロイノ?」
アスティベラードに視線を向けると。
「貴様が名付けただろう。後ろのこやつだ」
と黒いのを示す。
やっべ。名前になっちゃった。もっとカッコいいので読んでいればよかった。ブラックとか。
てか名前なかったんかい。
「…クロイノありがとう」
ほわほわとした感情が伝わってきた。
「………やばい。…ちょっと眠い…」
「おう、寝とけ寝とけ」
安心したからなのか凄く眠くなり、悪いなと思いつつも少し眠ることにした。
「寝たか」
後ろの重みが増した。
寝たらしい。
「死んではないですよね…??」
ノクターンの不安げな言葉にアスティベラードがソワソワとし始める。
「大丈夫だ。しばらく解毒のために眠ることが多いだろうがおれがなんとかする。リーダーとしてな」
「ヒューッ!かっこいいな」
「ドルチェット」
「褒めただけだろ?」
しかし、まさかこのアンポンタンが教会に目を付けられているなんてな。
今さら見捨てるなんて事もできやしねぇ。
何か訳ありかもしれないとは思ってたけど。
はぁー、なんとかするしかねぇ。リーダーとして。
「なに笑ってるのだ」
「いいや?別に。それよりも皆、約束したの覚えているよな」
得体の知れないこいつと関わるのは骨が折れるぞって。
それでも助けると皆付いてきた。
お前は恵まれてる。
「たわけ」
「あったりまえだ」
「ええ」
「はい…」
どんな理由であれ、とことん付き合ってやるぞ。
覚悟しとけ。




