念には念を過ぎる。
体が動かないけど意識はあるのが辛い。
荷物のように運ばれていく俺を、ギルドスタッフがなんとも言えない顔で見送っていた。
黒いの。
俺に着いてくるよりもまず皆に知らせてくれないか?
ヘルプミーって。
さすがに心の中の声は聞こえないか。
「ボルガ様。これはどうされますか?」
ターミ○ーターみたいな人が俺のエクスカリバーを教会関係者の男、ボルガに見せた。
「邪悪な武器に変えられているが、それも神具だ。樹液と混ぜた聖水に浸し、厳重に保管せよ」
「はい」
エクスカリバーも取り上げられちゃったし。どうしようかな。スキル使うにも俺のスキルは戦闘特化タイプだからこういうときに使えるの無いんだよな。
せめて【解毒】スキルとかあればよかったんだけど、あれって発動条件が厳しいから難しくて取らなかったんだよ。
デメリットもあるし。
でも取ってればよかったー。
今になって後悔だよ。
「……」
せめて足が動けばなぁー。
「全く、勇者の聖戦にも潜り込んだというし、奴の報告がなければ危うく見逃していただろう。それにしてもタグの不具合も恐らくこやつの仕業であろうし、勇者やその仲間に対しての暴言や暴行も報告されておる」
なにそれ。
「これは罪が更に積み重なるな。ホホホホホ」
だからなにそれ!?全然知らない罪が出てきたぞ!!
「一応ガンウッドから要危険人物だと念を押されたからな。首都に着くまではガチガチに拘束させて貰うがね」
扉が開き、野次馬がなんだなんだ?と集まる中、厳重な鋼鉄馬車に入れられた。
馬車といってもただの鉄の箱。椅子なんてない。
その中で動けないのに手足を鉄の板や鎖で拘束されて轡を付けられ、更に絶対に暴れないように馬車の鎖にも繋がれた。
え?念には念をってのは分かるけど、ここまでする?
心配性過ぎない??
虎とかライオンみたいな猛獣とか思われてるの??
「ガンウッドによればこいつは口から光線を吐いたらしいからな」
なんの話!?吐かないよ!!
そんなスキル持ってないよ!!
「レベル80近い奴だとこれでも破る奴もいるというし」
マジで!?俺87だけど出来なかったよ!
あ、でも知り合いに同レベルでそんなやつ居たわ。最もアイツ職業トリックスターだからこういうの専門なんだけど。
というかボルガの満足そうな顔むかつく。
「念には念をだ。視線で人を混乱させる事も踏まえて血もギリギリまで抜いておきたいが」
やめろ。
「さすがにそれでは死にます。尋問する前に死なれても命令違反です」
「分かっとる。代わりに馬車の方に結界を張り巡らす。絶対に取り逃がさないようにな。しっかり見張っとけ」
バタンと扉が閉められた。
そして、外で凄いガチャガチャ鍵を閉める音がして、外の音が聞こえなくなった。
「……」
「……」
ゴットンと大きく部屋が揺れて、馬車が進んでいく。
ゲームオーバーってか?
せっかく仲間もできたしこれから楽しもうって思ってたのに。
「はぁー……」
全く残念過ぎる。
せいぜい殺されないよう祈るばかりだ。絶望的だけど。
「もうため息吐けるほど回復したのか。その毒は一日ひたすら呼吸に専念しないといけなくなるほどの強力な麻痺毒だが、さすがは規格外の化け物というわけか」
突然話し始めたぞ、この見張り。
「尤も俺は殺すつもりでその三倍入れたがな。生きてるなんて予想外だ」
お前さっき殺したら命令違反とか言ってたじゃん!
てかこんな所で寛ぐな。
マイペースかお前。
「はぁー、疲れたぜー。お前喋れるようになっても喚くなよ。どうせ外に音は漏れやしないんだ、無駄なことはするな」
そして寝転ぶ見張り。
「さて、寝るか。これだけが楽しみなんだよ…。…………グォォー…」
寝た。
イビキまで掻いて。
声出るかな。
「………、……ぁ …あーー……」
おお!音が出せるようになった。だけどまだ喋れない。
黒いのは見えない。
居る居ないのかも分からない。
「……」
ためしに拘束が取れないかやってみたが、音がめっちゃ鳴って、見張りに煩い寝れないだろうと警棒みたいなので凄い殴られたから諦めた。
別の案を考えよう。
「うーわ、拷問だぁ」
どのくらい時間が経ったのか分からないが、突然馬車が止まり、見張りが外に出たと思ったらパンを持ってきて目の前でモシャモシャ食べ始めた。
俺腹減っているのに酷くない?
「俺の分は?」
「罪人にあるわけないだろ」
「空腹で死ぬぞ」
「レベル高いやつは一月食べなくても死にやしねぇーよ」
「さすがに死ぬよ」
水すら飲めないのはきついです。
そしてまた発車。
「ねぇ、俺これからなにされんの?」
「さぁー?尋問という名の拷問か、人体実験か、処刑ショーだな。ショーの主役はお前だぞ」
「やったー!なんて言うわけないだろ。どっちに転がってもバッドエンドじゃないか」
「諦めろ。どちらにしてもお前の存在は教会にとっては煩わしいんだ。……傀儡は1つだけで良い」
クグツ?なんだそれ?
「お喋りは終わりだ。俺は寝る。邪魔したら…分かってるな?」
「へーい」
「ならよし」
そしてイビキを掻き始めた。
さーてと。
「ほっ…」
【縄脱け】【千里眼/見通し】【千里眼/見極め】【隠密】
新しく増えた【縄脱け】と【隠密】スキル。
これを空腹ながらにコソコソと練習して熟練度を上げている。
熟練度は挑戦すればするだけ上がっていく。
俺の予想ではこれを、そうだなー、一週間続ければ抜けられるんじゃないかな?
先が長い。
──コンコン……
「?」
聞こえる筈のない外からの音が聞こえた気がした。
「……ケーイ、ケイ……」
「!!!!???」
屋根からトクルの頭だけが通り抜けてきた。
トクルはぐるりと部屋を見回すと、俺を見た。
こんなみっともない格好で恥ずかしいなぁ。
「……『傾聴せよ…、木漏れ日…揺りかご…霧雨…鈴虫…、真綿の布にくるまれ運ぶ…鳥の雛…。夜のとばりが降りて…星の海に沈む…。ペールス…』…」
グワワワンと強烈な睡魔が襲ってくる。
これ、俺寝たらダメなやつじゃないの??
そうは思うが抵抗できずにそのまま寝た。
「おい、起きろディラ」
ほっぺをペシペシ叩かれて目が覚めた。
なんでこんな所にクレイが?
「…おはようございます…。夢ですか?」
「アホなこといってないで、さっさと起きろ。ジルハ、鍵あったか?」
クレイの後ろで男の服を剥いでいたジルハが鍵の束を見付けた。
「ありました」
「よし。ったくなんだこの拘束。多すぎだろ…」
ガチャガチャと拘束が外されていく。
遂に轡も外れてしっかり空気が吸い込めた。
「自由って感じ」
「アホなこと言ってないで逃げるぞ。早く来い」
「歩けますか?」
無理っぽい。空腹すぎて力入らん。
「世話が焼ける。ジルハ手伝え」
「了解です」




