違和感ない理由
料金を支払い、居酒屋を出た。
「じゃー、すぐに着替えてくる」
宿へと戻ってすぐに着替えた。
血濡れの服を水の張った桶の中に入れ、マーリンガンから教わったものに自分なりの改良を加えた魔法具を浸ける。
吸出しの魔法具。
一晩こうしていれば血や泥は服から水に移る。あとは明日の朝に乾燥の魔法具でくるんでおけばなんとかなるはず。
その時、ふとあることを思い出した。
「…そういえば、あいつ、金髪になってた」
いつからだ?
思い返せば、祭壇に転がっていたときにはもうなってたような気もするし、よく思い出せない。
「金髪はブリテニアスオンラインでのあいつのキャラクターの特徴だから違和感無かったんだよなぁー。
……あ」
俺のキャラクター、頭オレンジだ。
「……………なるほど」
謎が解けた。
……………解けたのか??
「移動しよう。出来るだけ人がいない方がいいだろ?」
合流するなりクレイの提案で移動することになった。
「それなら自分に任せろ!」
と、ドルチェットが主張した。
「どっかいいところあるのか?」
「朝伸したゴロツキの溜まり場を使うのはどうだ?どうせ奴等が無駄に駄弁っているだけの場所だ。誰が使ったって良いだろ?」
「ドルチェットさんジャイアンみたいだね」
お前のものは俺のもの。俺のものも俺のもの。
「ジャイアン?誰だ?」
「そういう有名な奴がいるんですよ」
「へー。いつか会ってみたいもんだ」
ドルチェットの案内で向かう。
裏道に入るときにアスティベラードが心底嫌がったが、それでもしぶしぶ付いてきていた。
てっきりお前たちだけ行けばよかろう。とか、言い出すと思ったが意外だった。
「よぉー!朝ぶりだな!」
目的地近くにいたヤンキーにドルチェットが声をかけた。すると顔を腫らしたヤンキーが悲鳴を上げ、仲間共々逃げていった。
何したんだこの人。
「っしゃ!要件言う前に退いてくれたぜ!ラッキー」
何となくジルハを見ると、死んだ目をしていた。
苦労しているんだね。
「ジルハ、人の気配は?」
「ないよ」
「ノクターン…」
「はい…、ありません…」
ジルハとノクターンがそれぞれ気配察知をしてくれた。
「ほらほら、座れよ。キャベツ。ニンジンもだ」
「だからキャベツじゃねぇって。仕方ないな」
先にドルチェットが座り、仕方ないとクレイが隣に座る。
それに釣られてジルハも続き、アスティベラードがノクターンに消毒しろと命令していた。
ノクターンに魔法で消毒された路地裏に座る俺達。
ぼんやりとした魔法明かりも相まって変な感じだ。
「で?何があった? いつの間にか上着も無くなっているし、顔色も少し悪い…」
「え?そう?」
自分では分からないけど。
「あの…私が視た感じでは…相当氣力消費をしております…。まるでスキルを極限まで使ったような…」
当たっている。
というか、ここではスキル使うのに氣力というのを消費するのか。
「でもアスティベラードやノクターンといたんだろ?喧嘩とかしてた訳でもないし」
「するわけなかろうが」
「ワタシも…ずっとおりましたが…、瞬きした瞬間に…」
ジルハが怪訝な顔をして質問する。
「酷い匂いがした。腐った土の匂いと、血の匂いだ。それもたくさんの人間の。あと、土埃と此処ではない何処かの土地の匂い」
なんだこの人。鼻良すぎない?
「ボクは魔法には疎いからなんとも言えないんだけど。もしかして君、何処かに召喚されてたのか?」
ノクターンとアスティベラードがハッとしたような顔をした。
「あんな一瞬でか?一瞬だけ召喚してどうするんだ。何もできないだろう」
「いいや」
クレイが馬鹿馬鹿しいと言い捨てた瞬間、アスティベラードが否定した。
「皆も知っているはずだ。この現象を」
視線がアスティベラードに集まる。
「かつての勇者の活躍を記したシャールフ勇者伝に出てくる、聖戦だ」
時が止まったからのように静まり返った。
「いや、まぁ言われてみたら確かに状況は似ているがよ」
クレイが俺を見る。
「勇者か?図書館入れなくてションボリしていたこいつが?」
「………勇者って、感じはしねーわな」
「…ごめん。今回ばかりは同意」
「……………」
上からクレイ。ドルチェット。ジルハ。そして目が泳ぐノクターン。
アスティベラードの視線が俺を貫いた。
「実際どうなのだ!ディラ!詳細を教えよ!」
そしてその後ろから黒いのがジワジワ出てきている。
こっわ。
「うまく説明できるか分からないけど。…どっから話せばいいんだ? まぁ、俺もなんだかよくわかってないから支離滅裂かもしれんけど聞いてくれ。実は──」
俺はさっきあった事を洗いざらい話した。
功太の事は考えた結果言わずに勇者としたけど、その話をみんな茶化したりせずに最後まで聞いてくれた。




