【スキル】発動
「矢、矢が欲しい!」
上から襲い掛かってくる餓鬼を弓で叩き落としながら村へと走る。
防御力も攻撃力もないこのコバエは、数の多さだけがが厄介だ。
くそー! スキルってどうやって出すんだ!
ここがブリテニアスオンライン内だったら、【弓矢生成】で使い捨ての矢たくさん出せるのに!!
「いやぁあーー!!!やだやだ!!助けてお兄ちゃーーあん!!!」
「!!」
女の子が餓鬼三匹に襲われているのが木々の間から確認出来た。
待て、あれは何しているんだ!?
目の前で行われている光景は、ブリテニアスオンラインでは絶対に起こらないものだ。
此処での餓鬼は、こんなにも欲望を剥き出しにして行動するのか!?
女の子の服が破かれる傍ら、別の一匹が農具の鎌を持って現れた。マズイ!!このままだと!!
「間に合わない!!」
笑いながら振り上げられる鎌が、少女の首を捉えた。
少女と俺の距離は、15m。
鎌は、既に振り下ろされた。
【身体強化】【動作加速】
突然体に電気が走ったかと思えば、周りの景色がグニョンと伸びて、少女とコバエ達の距離が一気に縮まった。
「!?」
コバエ達が突然空中に現れた俺に驚いて動きが鈍った。
【弓矢生成】【同時標的捕捉】
空いた右手の中に馴染んだ感触が現れた。
四本の細い物体。
求めていた、矢だ!
「ハッ!!」
同時につがえ、射出。
「ギャア!!」
「ピキュッ!?」
「ガグ!」
四体それぞれの頭が吹き飛んで地面に転がる。
奇跡だ。間に合ったぞ!
着地し、少女に駆け寄った。
鎌は衝撃で地面に転がり、コバエ達は泥に変わっていく。
「大丈夫か!?」
「うう……」
深手は無いけれど…。
「……」
上着を脱いで掛ける。
まさかコバエがあんな行動を取るなんて思いもしなかった…。
「このまま森の奥で茂みに隠れてじっとしておけ。こいつらは目が悪いから、動かなければ見付けられないから」
治癒の魔法具での処置を終え、そう教えれば泣きながらも言う通りに森の奥へと逃げていった。
「にしても、良かった。スキルみたいなのが発動して…」
条件は何となく分かった。
特定のスキルを強く望むと発動する。
なら、きっと望めば俺が昔から持っていた“眼”のスキルも使えるはず。
「冷静に、冷静に…」
悲鳴が絶えず聞こえるが、これがなければ始まらない。
「よし、いくぞ!」
【千里眼/見通し】
スキルが発動して森の向こうの惨状が見えてきた。
多くの物が建物に隠れて震えながらじっとしている中、恐怖で耐えられずに村から脱出しようとしたものや、逃げ遅れた人にコバエが群がっている。
【弓矢生成】にて右掌にいくつかの矢が造り出される。
「うまくいってくれよ…」
矢をつがえ、空へと構える。
【同時標的捕捉】
「しっ!!」
解き放った矢が放物線を描いて落ちていく。その先には犠牲になっている人達に群がるコバエ。
五発放って四発当たった。外れた方も、何か危険な物がいると察して人から離れた。
これでちょっとは動きが鈍くなるはず
それよりも。
「一番危険な個体は何処だ?」
コバエには司令塔がいるはずだ。
【千里眼】で探しながら矢を造り出す。
アイツさえ仕留めればこの事態は収まるはずだ。
──ドッゴオオオオオンンン……ッッ!!
「!!」
森の向こう側で大きな土煙が上がった。
「……嘘だろ」
大きな影が見える。その形は俺が探していた司令塔だ。
しかし、あまりにもデカイ。
「ギャアギャア!!」
「キキキキキ!!」
俺を探し当てたコバエが二匹、仲間を呼びながら飛び掛かってくる。
それを二匹とも射ち落とし、コバエに最適な矢を記憶から引きずり出した。
「確か、これが有効だったはず…」
【弓矢改造】スキルでとある矢を生み出した。
「あまり使いたくなかったけど、一番効くんだよな」
人のあまりいない方向を見定めて、射ち放った。
矢は放たれた方向に真っ直ぐ飛んでいき、矢尻が輝きを放ちながら落ちていった。
途端に周辺にいたコバエ達が凄い勢いて矢が落ちていった方へと群がっていく。
「ここでも効くんだ、《ラフレシアの矢》」
ブリテニアスオンラインでも初心者はコバエ対策で持っていくのだが、発動すると、ラフレシアの一定距離内での能力の低下が悩み処だった。
時間は15分程度だが、その間に隠れてくれれば被害がするなくて済む。
自動解除された【身体強化】を再び発動し、村に向かって大きく跳んだ。
木を足掛けに村へと辿り着く。
めちゃくちゃに荒らされているが、俺の発動したラフレシアの矢によってコバエ達は皆いなくなっていた。
空を見ると、穴から沸いて出ているコバエ達もラフレシアの方向へと吸い寄せられている。
屋根に着地し、外にいる人達に向かって言った。
「あのコバエ達は動くものにしか反応しません!!!出来る限り物陰に隠れて、騒ぎがなくなるまでジッとしててください!!!」
あの司令塔を倒せば消えるはずだ。
「あなたは、勇者様のお仲間ですか…!?」
ボロボロの村人の一人が俺にそう言った。
「お助けくだされ…!あの怪物に苦戦しているみたいなのです…!どうか、どうか、勇者様のお力に…っ!」
「功太がいるのか!!」
勇者とは功太の事だろう。
村人の示す方にはあの司令塔。
「わかった!!俺が力になってくるから、皆は早く隠れて!!」
「ありがとうございます…!」
村人達が隠れようと動き始めたのを確認し、俺は司令塔の方へと駆け出した。
屋根を飛び、木を足掛けにし、ショートカットで進んでいく。
「苦手だけど、やるか!」
移動中の【千里眼】発動。
「!!」
司令塔の下の方に三人の小さい影。
一人は功太。なんとか頑張って司令塔の攻撃を凌いでいる感じだ。
そしてその周りには倒れているのが二人、一人はなんとか動けているが、ギリギリといった所だろう。
司令塔が攻撃モーションに入る。
あれは、連続発射のモーション。
剣士の功太には分が悪い攻撃だ!!
「功太ァアアアア!!!!」
【攻撃力増大】を発動し、空中で司令塔に向かって矢を放った。
エクスカリバーがビリビリ震える。
ズドンと司令塔の頭が俺の攻撃によって大きく揺らされた。
ダメージは入ったが、あの様子じゃ装甲持ちか!!
装甲持ちのコバエの司令塔なんか聞いたことないぞ!!
「…!! 朝陽!!」
「無事か!?なんだこれは!!」
功太の近くに着地した。
「良かった…、生きてたんだな…」
頭から血が出てる。
体の方も、結構やられている。前の連続発射の攻撃を食らったらしい。
「そんなこと後でいい。まずはあの雑魚デカハエを倒さないと」
コバエ達を引き留めておける時間は多くない。
それに、ガムキー先輩を倒したそこの大男も突然現れた俺に反応も出来なくなっているしな。
『雑魚?いま雑魚と言ったか?』
「!」
誰だ?
「敵側の、幹部みたいな奴だ」
「なにそれ…」
空中にいる大きな翼を持った女を見つけた。
『おかしいな?この聖戦には勇者とその仲間しか参加資格がないはずだが。貴様、一体何処からこの閉鎖空間へとやって来た』
「閉鎖空間ん??」
何言ってんだ?
「詳しくは説明できないけど、戦闘時の時間の流れが違うアレの事だよ。今、僕らはその中にいるんだ」
「何となく把握」
何でそうなっているのか分かんないけどね。
『まぁいい。その舐め腐った口、そこの芋虫どもと同じく叩き潰してやるわ。やれ!ブランバエノ!!』
司令塔が再び攻撃モーションへと移行していく。
「後でしっかり説明しろよ!功太!!」
「そっちこそ!!でもまずは…」
あいつを仕留める。




