お喋り
町を出て、北へ真っ直ぐ。
森の中を進みながら訊ねてみた。
「レベルリセットやジョブチェンジした方って誰なんですか?」
クレイが挙手。
「俺だ。元々アーチャーだったが、シールダーに武器替えしたときにレベルリセットした。そっちのが成長しやすかったからな。といってもアーチャーも二年くらいだから新人扱いだったけど」
ノクターンがさりげなく挙手。
「アスティベラードが…。諸事情があって詳しく言えませんが…」
「………」
アスティベラードの顔が不機嫌になっている。
何があったのだろうか。
ついでドルチェットも挙手。
「強制的レベルリセット」
「何があったの」
つい聞いてしまった。
ジルハが苦笑している。
「生意気だからって理由で兄上に無理矢理だよ。そのあとボコったがな」
「この人レベルリセットでフラフラしているのに、10人のしているんですよ。笑いますよね。狂犬と笑っていいですよ」
「その髪の毛むしるぞ」
「やめろよ」
そんな理由でレベルリセットされたらたまったもんじゃないな。
「ノクターンやジルハさんは違うんですね」
「私は…、すみません…レベル3です…」
「僕はレベル1ですね。実は登録する気なかったのに、この横の人が原因でせざるを得なくなりました」
横はドルチェット。
君もいわゆる巻き込まれですか。
軽く親近感。
「お前はどうなんだ?ニンジン」
「ニンジン」
何故ニンジン。
「すみませんこの人髪の毛の色でアダ名付けるの好きで」
慌ててジルハがフォローに入るがフォローになってない。
そもそも俺の髪はニンジン色ではない。
「…付けるなら、茄子とかでは?」
「オレンジの茄子なんてあるわけ無いだろ?何言ってんだ?」
ドルチェットに何言ってんだこいつと言わんばかりの顔された。
「……」
無言で一本自分の髪を抜いて、見てみた。
「…ニンジンでした」
オレンジになってた。何故かは分からない。
何せここに来てからあまり鏡見ていなかったから。
「だろ?」
「はい…」
いつからだろう。
ここに来てからだとしたら、よく功太は俺だとわかったものだ。
「自分の髪の色も忘れるって相当自分に無頓着な奴だな」
もはや言われたい放題である。
「話が逸れましたが、どうして登録を?」
脱線していた話をジルハが強制修正。
「図書館に入る為の身分証が欲しかったんです」
「………」
「………自分そんな理由で登録したやつ初めて見たぜ。ネタか?」
先程から無言なアスティベラードとノクターンも嘘だろうと言う顔。
いいや、とクレイ。
「その話はガチだ。実際困っているところを声かけたのおれだからな」
「そんな理由で作る奴もいるんだな」
信じてくれたっぽい。いや、別に信じてもらえなくても良いどうでもない事なんだけど。
「でもその前から弓は持ってたよな」
「村を出て森のなか歩いてたから、護身用で。一通り使えるから足手まといにはならないと思う」
「期待してるぜ、援護射撃」
胸元をドンと叩かれた。
響く!
そっからお喋りしつつ歩き、森の中から目的地である岩場が見えてきた。
「着いた。依頼内容を確認するぞ。ポイズンヴォルフの討伐。推定50頭が群れを成し、近くの道で旅人や商人を襲う事件が多発。全滅させるか、この場所から移動した方が賢明と判断させるほどのダメージを与えて欲しいとの事。
次にポイズンヴォルフの情報だが、聞くか?」
「ください」
昨日図鑑で見たが、情報の擦り合わせとして聞いておきたい。
「ポイズンヴォルフ。青紫色の体毛で、牙に麻痺毒がある。ボスは体毛が赤紫に代わり、毒も麻痺以外にも、出血毒や幻覚が付いてくる。連携で襲ってくるから、絶対に無理な単身突破はやらないようお願いしたい。ノクターンは解毒が出来るんだったか?」
「はい…。念のために戦闘前に補助魔法を掛けておきますが…私自体の戦闘能力は殆んど無いので…、こちらに来たら助けてください…」
攻撃系魔術師ではなかったか。
でも補佐は助かる。
「おれがシールダーだから守っても良いが…。そうするとヘイト集めがやりにくいな」
「すみません…」
守って欲しい人のところに魔物が集まってくるのは可哀想だ。
「助けなど要らぬ」
「!」
突然アスティベラードがそう言った。
いや、でも、本人助けてって言ってるし。
「私の近くに居れば良かろう。何か不満があるのか?」
「いえ…」
目がめっちゃ泳いでますけど。
汗も凄いですけど。大丈夫かな。
「私も戦えぬ事もないが、この通り後方でこやつの守護に徹する事になった。異論はあるか?」
「………ないです」
やっぱり圧が凄いなこの人。
怖いよ。
となると、戦闘要因は俺、クレイ、ドルチェット、そしてジルハか。
ん?ジルハの武器ってなんだ?
ふと見てみると上着からクナイのような物を取り出していた。
忍者?
「よし、いくぞ!」
クレイが合図し、飛び出していく。
次々に飛び出していく中、ノクターンが静かに詠唱を始めた。
「桃の花。梅の花。桜の花。藤の花。四つ角に添えて陣を成し、更に桔梗を添えてかごめと成し、彼の者を守護せよ…。《ネイテ》」
とたんに花の香りと共に防御結界が生成。
「伸びる根には砂を。広がる葉には火を。幹には斧を。花はむしり、水に落として薬となす。12の器に分けて与えよ…。《エトモアール》」
更なる防御結界。これは毒耐性上昇か。
「続けまして…。一つ折りて、二つ。二つ折りて、四つ。三つ折りて、八つ。重なる度に厚みを増し、いずれは月に届く塔の如く…。《ウレナサーク》」
攻撃力向上。
──ウオオオオオオオーーーーン!!!
ポイズンヴォルフがこちらに気付いて咆哮しながら一斉に襲い掛かってきた。
「こっちだ!!」
クレイの左腕のガントレットが変形し、甲高い音を発した。
瞬間に狼たちがクレイの方へと向かっていく。
戦闘開始だ。




