身分証が欲しくてハンター登録しました
図書館を見付けて入ろうとしたら、『身分証がないと入れない』と追い返された。
「身分証…」
どうやって手に入れるの。
「あ、さっきキノコ散歩させてた人じゃん。どうした?キノコに逃げられたのか?」
見知らぬ緑髪の青年が話し掛けてきた。
「キノコは、森に返しました」
「そうなんだ。落ち込んでいるから逃げられたのか盗られたのかと思ったぜ」
「図書館に入りたかったのに身分証がないと入れないと言われたんです」
「…なに?お前流民?」
※流民/定住しない、国を渡り歩く渡り鳥みたいな人達を呼ぶ名称。特徴は生まれた国が不明なので出生証明書がない。
「……みたいな感じです」
ブリテニアスオンラインではアカウントが証明書代わりだったからな。
「じゃあギルドで冒険者登録してくれば良いじゃないか。これだよ」
緑髪が首から下げたタグを見せる。
「これが身分証代わりになるし、自分がどんな状態なのか数値化して見せてくれるから色々楽だぜ」
「へぇー、こんなのが…」
マーリンガンの魔法具とはまた違う。
「金が少しいるけど、一食抜けばなんとかなるくらいだ」
「その冒険者ギルドってどこにあるだ?」
「すぐそこさ。着いてこいよ」
前を歩く青年の後に着いていく。
変な装備つけてるな。
ガントレットではない、なんだろう?
「お前名前何て言うんだ?」
「俺?」
「そうお前」
どっちで言おうか。
こっちで良いや。
「ディラ」
「へぇー、ディラか。おれはクレイ。お互い初心者同士、助け合っていこうぜ。 っと、着いた。ここだ」
辿り着いたのは大きな建物。
グリフィンのシンボルが付いていた。
ブリテニアスオンラインの記憶を引きずり出す。
「デザインが少し違う」
「なにがだ?」
「何でもない。ここの中で登録出来るんだよな?」
クレイが頷く。
「中にクリーム色の髪の可愛い娘がいる。その子に訊ねれば教えてくれるさ」
「ありがとう」
「どーも!また縁があったらな!」
そうしてクレイが去っていった。
「いい人だったな。エクスカリバー」
何かのクエストで組んでみたいものだ。
さてと。クリーム色の髪の娘、クリーム色の髪の娘っと。
「あの娘か」
受付にクレイの言った特徴の女の子がいる。
「すみません」
「はい、なんのご用でしょうか?」
ほんとだ。可愛いこの子。
「冒険者登録をしたいのですが」
「かしこまりました。…はい、あちらの三番で行えます。こちらを持って行ってください」
変な模様の札を貰った。
お礼を言って三番の看板へとやって来た。
受付の女性がにこりと笑う。
「札はお持ちですか?」
渡された札を渡す。
「冒険者登録の方ですね。それではこちらの水晶に手を乗せてください」
「はーい」
水晶に手を乗せた。
女性の前の板が光り、同時に水晶も光輝いた。
「…………え?」
「どうしたんです?」
女性の顔が困惑の色に染まっている。
「申し訳ありません。もう一度乗せ直して貰ってもよろしいですか?」
水晶を取り替えられて再度乗せる。
「…………」
首を捻る女性。
「少々お待ちください」
女性は後ろの扉を開けて男性を連れてきた。
「どうした?」
「あの、数字がおかしくて…」
「どれどれ…。………………」
男性も固まった。
「あの、少しお訊ねしますが、ジョブチェンジやリセットとかなさいました?」
「? いえ。してないですけど」
「……水晶が壊れているわけないよな」
「私もそれを疑ったのですけど、替えてもこれで」
本人の目の前でコソコソされると怖い。
なにかおかしい事になっているの?
「でも、ギルド登録も初めてみたいですし…」
「…これが正常なら、どうすることもできんだろう。元がこれでも初めてだから通常クラスで」
「わかりました」
男性はそのまま後ろに待機した。
「なにか、あったんですか?登録できないとか…」
「いえ、大丈夫です。ああ、もう手を放してもいいですよ」
手を離した。
「こちらに名前と、年齢。それと書ける範囲で構いませんので記入を。…代筆は使われますか?」
「多分平気です」
出された文字も読めるし意味もわかる。
名前をディラと書き、年齢まで書いたが、あとは武器の欄だけ弓と記入して差し出した。
「職業はどうされますか?」
「弓兵?」
「…ハンターという事ですね。登録には20マルダ必要ですが大丈夫ですか?」
「お願いします」
20マルダ手渡した。
「はい、それでは少しお待ちください」
五分ほど待つとカウンターにタグと腕輪が置かれる。
「このタグが冒険者登録証明書で、腕輪がカウンターです。カウンターの経験値蓄積によって通常レベルと冒険者レベルが上がっていきます。レベルが一定水準でレベルリセットすることが可能になり、ボーナスが貰えます」
「ボーナス?」
「能力の引き継ぎです。全ての能力値は半分に下がりますが、その代わり能力限界の上限が引き上げられるのです。いわゆる上限解放です」
へえー、それはブリテニアスオンラインではなかったシステムだ。
ていうか元々レベルが上げにくいのにパアにするやつなんかいないだろう。
その代わりレベル100になると新しいワールドに行くことができるってのがあったけど。
何人いるのやら。
「壊れたりしますか?」
「しますが、レベルに応じて修理代が免除されたりします」
左腕に着けた。
ゴムみたいな質感。
タグも首から下げてみた。
「現在ディラさんはレベル1であちらの掲示板に張り出しているものしか依頼を受注できませんが、レベルを上げればより高度の依頼を受注できるようになります」
そこら辺は同じか。
「ちなみにどうやってレベルはわかりますか?」
「こちらに来て測定すればわかります。ただ、こまめにしないと実力と齟齬が出ますのでご注意下さい」
なるほど。
「他に何か質問はありますか?」
「あとは──」
他にもいくつか確認して満足した。
良かった。大体俺の知っているものと同じだった。
「それでは良い冒険者ライフを」
胸元でチャリチャリとタグが揺れている。
いいなこれ。
やっと巻き込まれ召喚されて良かったと思えるよ。
そんな俺の後ろ姿を見送った受付の二人が、まだ残っているディラの情報を開いた。
そこにはレベル1で恐ろしいくらいのステータスが表示されていた。
レベル無視でステータスだけ見れば、希少価値のレベル50以上のステータス。なのにジョブチェンジやレベルリセットしてないと彼は言った。
ならば考えられる事は一つ。
「とんでもない化け物が来ましたね…」
「そうだな…」




