危険指定の魔法具
蟻塚はちょっとしたビルほどの大きさほどもあった。
そして蟻塚の主である蟻は大型犬サイズ。しかもトンボみたいな羽が生えていた。
一番気になるのはお腹の膨らみだがな。カラフル。
そんな蟻が蟻塚からワサワサと溢れている。
「ダンジョンってこういうパターンもあるの?どうみても蟻塚」
今こうしている間にも無数の蟻が行き来してる。
「マーリンガンさんの地図ではここってなってるからな」
と、前見たのとは違う地形が描かれた地図だった。
「ねぇ、前見たのと違うんだけど」
「この地図魔法が掛かってんのか現在地を中心に色々と変化していくんだ。やっぱスゲーよあの人」
「……そんな機能聞いてない…」
聞いてたらもっと面白い機能を付けて貰ってたのに。
例えば美味しい飲食店サーチ機能とか。
「で?どうするよあれ。あのままじゃ入るどころか近付けないぜ」
早速戦闘モードに入るドルチェットが剣を抜いていた。
「そうだな、あれをなんとかしない限りは……、なんか良いのないか?」
「唐突に俺に振るな」
さすがの俺でも虫を何とかするスキルなんて持ってない。
俺は昆虫収集加でも昆虫学者でもなくアーチャーなんだから。
固有スキルの【虫寄せ】なんかが発現するわけない…、あ。
マーリンガンの魔法具が入った袋を漁る。
「何を探しておるのだ?」
アスティベラートが覗き込んで来たとき、目的のものが見つかった。
「テレレレッテレー♪俺作オリジナル魔法具チョコバースメル!」
説明しよう!
チョコバースメルとはこの世界に来てあまりにもチョコレートが食べたくて堪らなくなったのにチョコレートがどうやっても手に入らずせめて匂いだけでも嗅ぎたいという執念で作り上げた魔法具である!
作ったはいいが余計チョコレート欲を増大させるものになったので布と皮袋で封印していたが、これならば蟻が群がること間違いなしだろう。
「うわっ!?甘っ!!匂い甘っ!!」
ジルハが鼻を押さえて後退する。
そこまでか?
久しぶりに嗅いでみたらビックリするくらい甘かった。
これ作ったときはチョコレート食べたくて限界だったからな。
「おい、蟻の様子が変だぞ」
蟻の観察をしていたクレイが異変を知らせてくれた。
「なにかを探しているみたいな動きをしている」
「これに反応しているのかな?」
だとしたら良いんだけど。
「ちょっとこれ設置してくるね」
蟻塚を中心にぐるりと回りながら良い感じの岩を探した。
実はこれ、強く擦り付けると匂いが移るのだ。
「これとか良いかな?」
蟻に群がられても耐えられそうな岩を見つけた。
その岩に魔法具を強く擦り付けた。まんべんなくムラなくチョコレートの匂いを擦り付ける。
「よーし、こんなもんか!」
目をつぶればあら不思議。
大きなチョコレートが目の前に見えるぞ(幻覚)!
ズゾゾゾと不穏な音が蟻塚の方から聞こえてきた。
『ケーイ!ケーイ!』
いつの間にか近くにいたトクルが急かすように鳴く。
匂いに釣られた蟻が大量に来るらしい。
「急げ急げ!」
慌てて【身体能力向上】と【隠密】【動作加速】を発動させてその場から離れた。
「ディラ早くしろ!!」
皆が焦ったように俺を全力で手招きしてる。
滑り込むように馬車の天蓋内に駆け込むと馬車の周りを大量の蟻が猛スピードで駆け抜けていった。
馬車には見向きもしない。
「…………効果やべーな」
即魔法具を布でグルグル巻きにして皮袋の中へと再び封印した。
恐怖で硬直していたノクターンが、外にいるロエテムからもう大丈夫との連絡が来た。
「蟻の気配は消えました…、どうしますか…?」
息を潜めていたクレイが立ち上がり盾を組み立てた。
「こっから徒歩でダンジョンに向かおう。馬車と鐡馬はここで待機、万が一に備えていつでも迎撃できるようにしておこう」




