2.悪役令嬢
ブクマ付けてくださった方がいたみたいで、本当に嬉しいです!
この場を借りて感謝させて頂きます
「ん……」
雀の囀りと、少し眩しい日差しに目を覚ました。
夢に出てきたイケメン、どんな顔だっけ……。
寝起きの頭は朦朧としていて、布団が恋しいのか、洗面所への道のりが、やけに長く感じる。
だが、そうなのだ。
そうなのだ。
六畳一間の一室が、こんなに広い筈がないのである。
これはあれか、アリス症候群とかいうやつか?と横を振り向いてみても、そこにあるドレッサーの大きさは、異常とは言えなかった。
そもそもそんな所にドレッサーなどあるはずは無く、それ自体が異常であるということには気が付かなかった。
____なぜなら、それ以上の異常を目にしたからである。
「うそ……!?」
そこにいたのは、アラサー社畜OLではなくて、
鏡の中には、青みがかった白髪をした、絶世の美女が映っていた。
***
待って待って待って、どういうこと!?
昨日の婚約破棄だどうのという話は夢じゃなかったの!?
まるで夢のような出来事だった。
というか夢であってくれ。
私は昨日眠りにつくまで、確かにただのOLだったはずだ。
でも、記憶の中には、侯爵令嬢"フィリア・セレネリオン"としての人生が、当然のように存在している。
これはあれか?転生というやつか?
どこに、なんで私が、ていうか死んでるの?
疑問が絶え間なく頭に浮かんでいく。
「待って、この顔、どこかで見たことがあるような……。」
ドレッサーに手を付き、自分の顔を凝視してみる。
白い睫毛は長く上向きに揃っていて、瞳の金色は、まるで満月を閉じ込めたかのようだ。
どう考えたって、私では無い。
「あっ______!!」
「後輩が私に勧めてくれた本だ……!」
確かに私は見たじゃないか、この顔を。
やけに綺麗な表紙だなと思って、じっくりと眺めた記憶がある。
真ん中にはいかにも愛嬌のある可愛い女の子がいて、その後ろ、端の方に、その子を冷たい目で見つめる、白髪の女性。
それと同時に、蘇ってくるフィリアとしての、残酷な記憶。
"あら貴女、こんな紅茶を私に飲ませるつもりなの?クビよクビ。帰ってちょうだい"
"◼️◼️◼️◼️様、日曜の午後、私とお茶をしませんこと?勿論、婚約者には秘密で……♡"
"魔法の使えぬ者など、この世に存在する価値も無いわ。穢らわしいッ"
"私の欲しい物?愚問ね。全てに決まっているじゃない"
嫌でも悟ってしまう。
私はこの物語に於いて"悪役令嬢"なのだと。
終わった……。
美人に転生してワンチャン最高の人生!?とか思ってたのに、全然悪役じゃないか。
断罪とかされちゃうパターンか、知ってるぞ、私それ読んだことある。
あれ、でも本を読んでれば、未来が分かって回避出来るんじゃ……?
しかし、記憶をどれだけ探そうと、本の中身が出てこない。
なんなら本を開いた記憶さえない。
そうだ、昨夜は疲れていて、明日読もうとそのまま寝てしまったんだ。
瞬間、私の脳内に浮かんだ、絶望の二文字。
こういうのって大体読んでたり知ってる話なんじゃないの!?
嫌だ、今生は楽しく生きてやるんだ。
あんなつまらない人生送って来たんだから、ちょっとくらいご褒美があってもいいじゃないか。
幸い、婚約破棄されても私は今こうして家に帰されている。
つまり______
限りなくアウトに近いセーフだということだ。
究極的に穏便に、平和に、自然に、何も問題を起こさなければ、断罪は免れるはず!!
私は元社畜だ。波風を立てずに生き延びるスキルは誰にも負ける気はしない。
ぱんぱんと頬を叩いて、気合を入れる。
「やるぞーーー!!!」
この時の決心は本物だった。
だが、現実はそう上手くはいかないもので。
***
「お嬢様、おはようございます。本日はゆったりとしたお目覚めですね」
私の叫び声に気が付いたのか、侍女のジュリアが紅茶を持って入って来た。
恥ずかしい。忘れて欲しい。
「そういえば、先程までジュード様がこちらにおられましたよ」
「お兄様が?」
「ええ。昨日お倒れになったお嬢様を心配なされたようで、一晩中、付きっきりで。」
「一晩中!?」
昨夜私を連れ帰った時には義務だとか言ってたわよね。
義務なのか?果たしてそれは義務なのか?
でも、この世界じゃそれが普通かもしれないわ……。
フィリアとしての記憶はあるものの、感性は大分元のままのようで、この世界の常識に対応出来る自信がない。
今日はひたすら記憶を纏めることにしよう。
「ねぇ、ジュリア。お兄様はいつ帰ってくるのかしら?」
「ジュード様でしたら、夕方には公務を終えてお戻りになると思いますよ。珍しいですね、お嬢様からジュード様のお話をなさるなんて」
「へ?え、ええ、少し聞きたいことがあるだけよ」
兄妹だから、距離は近いものかと思っていたのだけれど、複雑なのかもしれないわ。
一通りの身支度を終えると、ジュリアは部屋を後にした。
***
ええと、まず……
私はフィリア・セレネリオン。
この国で2番目に地位の高い公爵家の長女だ。
我が家の時期当主であるのが、2つ上の兄、昨日私を連れ帰ってくれたジュード・セレネリオンである。
フィリアの記憶を探ってみても、お兄様に関する記憶がほとんど無い。
かといって仲が悪いようでも無いし、きっと複雑な事情でもあるのだろう。
そして、私に婚約破棄を突き付けてきたのが、この国の王太子、レナード・コンステリア、クズである。
私と言う存在がありながら、公爵家、伯爵家、その他諸々、沢山の女に手を出している。
その上悪びれもせず女の匂いを振り撒いて歩いてる。
まぁ、私も人のことは言えないのだが……。
こんなのが時期国王って、大丈夫かこの国。
ジュードとレナードは同い年の学友で、学園でトップを争っている魔法の実力者だ。
私たちの通う学園は、この国の上位貴族が集まる場所だ。
で、そこで私が色んな男に色目使って、色んな女子、だけじゃなくて男子からも毛嫌いされているのよね……。
レナードが国王、私が王妃の国なんて終わってたわね、国としては良かったんじゃないか?今の状況。
なんて考えてはみるものの、私の状況は全く良くない。
正真正銘、根っからクズの嫌われ者悪役令嬢。唯一の利点である王太子妃の称号も剥奪されて……。
ああ、頭が痛くなってきた。
男を利用し、侍女を見下し、気に入らなければ怒鳴り散らかす。
正直、擁護のしようが全くない。
ここで前世のスキルを活かせれば良いんだけど、残念ながら私にはなんの取り柄も無かった。
フィリアも、魔法はほとんど使えない。国母になる為だけに育てられてきたのだから。
具体的な解決策は今のところ見つからないけれど。
____とりあえず、男に絡むのやめよ……。
決心をした矢先、扉がノックされた。
「お嬢様、ジュード様がお呼びですよ。」
次回投稿直近の予定ですので、楽しみにお待ちください!




