~呪われた幸運の聖杯~ー総集版_1/2
ここはエトワル王国城下町カインの酒場。2人組の男が今日も飲んだくれながら世間話をしていた。
『俺聞いちまったんだよ。やべぇ話をよ』ビールを片手にそう語るのは売れない情報屋のダニエル。
『またどうせしょうもない話なんだろ。前だって森に魔女の家を見つけたって騒いでたのに、兵隊たちが森に確認に行ったら結局何も無かったじゃないか』そうダニエルの話を胡散臭そうに聞くのは、町一番の実直な男ビル。
『あれは……。本当に見たんだよ』そうダニエルは言うとビールを一気に飲み干し、追加のビールを頼むと続けてこう言った。
『この話はもっとやべぇぞ。ビル、この国にある聖杯の話は知ってるか?』
『聖杯?なんだ?聞いたことも無いな』ビルはそう言うと豚バラステーキを切り始めた。ビルは全くダニエルの話には興味が無いようだった。
それを見ながらダニエルはお構いなしに話を続けた。
『その聖杯を持っている国はどんな戦いでも絶対に負けないらしい』
『へぇ~~ぇ』ステーキを食べながらビルが相槌を打つ。
『その聖杯があるのが我らが故郷エトワル王国なんだよ』
『そんなのただの噂だろ?』
ビルの興味ない態度を見ると、ダニエルは立ち上がり大きく身振りをつけてこう言った。
『それがそうでもないらしいんだ。俺らが若いころに起きた第9次エトラン大戦は覚えてるだろ?10万の兵を率いる大国ランエルを相手に、俺らはなんと1000人の兵で勝利を収めた』
ビルはステーキを置き、食い気味に反論した。『あれは運が良かっただけで、敵国内部でクーデターが起きたから。和平を結んで実質は相打ちだろ』
『だが、負けてないだろ?』ダニエルはどうだ!と言わんばかりの顔でビルのことを見ると、椅子に座り話しを続けた。
『その聖杯は大昔に大賢者アレナによって呪いがかけられたんだ。幸運の呪いをな……』
未だ半信半疑のビルが聞いた。
『それでその聖杯がこの国にあるからどうだって言うんだよ。今は平和だ。戦争なんて20年も起きてないって言うのに』
それを聞き待ってましたと言わんばかりにダニエルがビルに聞く。
『この前の事件覚えてるか?』
『国王暗殺未遂だろ?そりゃ、あれだけ大騒ぎしてたからな。夜に王都に忍び込んで寝ている王を暗殺しようとした者がいたって話だったか』食い気味にビルが答える。
『そうそれだよ。それ!』ダニエルから微笑みながら言う。
ビルは話し始めたダニエルの言葉を遮り言う。
『だか、あれは暗殺をあと一歩のところで阻止したって』
ダニエルも食い気味に言う。
『あぁ、そして逃げられたって話だな。だが、暗殺を阻止できた相手を逃すか?阻止できたならその場で殺すこともできたはずだ』
『た、たしかに』ビルは驚きを隠せなかった。ビルはだんだんダニエルのペースに飲まれていた。
そしてダニエルが続ける。『そう、この話嘘なんだよ。聖杯が盗まれたことを他国に隠すためのな。王の暗殺者を探すと言って家の中まで入ってきただろ。暗殺者を探すだけなら家の中に人が隠れてないか見るだけでいいのに、人が入れないところも念入りに確認されたよな』
ビルは腑に落ちたようにつぶやいた『聖杯を……』
『その通り。あれは聖杯がないか調べてたんだよ』徐々に話の信憑性が増してきた。
『まさか、本当なのかその話?』ビルは聞いた。
『あぁ、みんな噂してるよ』ダニエルは答える。
『その聖杯は誰に、どこの国に盗まれたんだ』ビルは焦ったように聞いた。
『そこまではわかんねぇ。だか確かなのはあれだけ警備がいたのに誰一人も犯人を見ていないんだ。つまり、隠蔽魔法が使われた可能性が高いってわけだ。隠蔽魔法が得意な種族と言えば……』
その話を聞きビルは驚いた顔をして言った。『まさか、エルフ!!』
かぶせるようにダニエルが言う。『まだ断定するのは早いぜ。確かに隠蔽魔法はエルフの十八番だが、エルフ以外の種族にだってそのぐらいの魔法は使える。まぁドワーフや巨人族、ゴブリンなんかは無理だろうがな』そういうとダニエルはビールを飲み干し笑った。
『聖杯を奪われて、戦争でも起こされたら勝てない』おびえた顔をしてビルは言う。
『それは大丈夫だ。今すぐ攻撃なんてしてきたら、私たちが盗みました。と言ってるようなもんだからな、まずそれはないだろう』全く恐れていないダニエルは言う。
呑気なダニエルの話に少し不安を覚えるビル。
『そうだと良いんだけど……』
そうビルは信じたかった。戦争なんて起きないと……。
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
ブクマ、評価など頂けると嬉しいです。
章ごとに違うお話なので気になった章だけでも、どうぞ見て言ってください。
同じ世界戦の話なので繋がりはあったりなかったりしますが……。
個人的に好きなのは5章です。
よろしくお願いします。




