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【1・2・3・4・5章完結】Mythical Legends   作者: りゅうせい
第1章 ~悪魔との闘い~
21/101

~悪魔との闘い~ー総集版

悪魔との闘い

神が天界と地上をつなげたほんの一瞬のことだった。


 時空に歪みが生じ魔界の空間にとても小さな亀裂が生じた。図らずも亀裂の近くに1匹の悪魔がいた。


 悪魔は急に表れた亀裂に近づき、中を覗き込むと表情一つ変えずに、ものすごいスピードで亀裂に手をかけ亀裂の裂け目を無理やり広げた。ちょうど悪魔の半分ぐらいの大きさに広がった時、悪魔は亀裂に足を入れ、次に身体、頭と順番に亀裂の中に入っていった。


 そして悪魔が亀裂の中に入り亀裂から手を離すと亀裂はすぐに小さくなり最終的には消えてしまった。



 ここは地上、人間もエルフもドワーフすら住んでいない、まさに生き物が生息できない秘境の山。世界で一番高いこの山の頂上は大気圏ぎりぎりで空気は無い。そんな頂上付近に一つの小さな亀裂が出現した。その亀裂は徐々に大きくなると中から悪魔が出現した。


『亀裂の先に見える景色で予測はしていたが、やはりここは地上か』


 そうつぶやくと、悪魔は拳を2,3回握ると消えた。光にも匹敵する速度でその場から飛んだのだった。


 悪魔が飛んだ衝撃は余りにも凄まじく、衝撃波で半径20Kmの地面が無くなった。そこにはかつて世界一の山があったとは考えられないほどの、深すぎのクレーターのみが残っていた。


 悪魔が飛んだ方角には森に囲まれた小さな村がある。


 悪魔はその村に光にも匹敵する速度で着くと、空中に浮かんだままなんの躊躇もなく腕を大きく振り下ろし村を破壊した。いや消滅させた。悪魔の一振りにより、村から北西の方角にあった木々はすべて無くなり地面はえぐられ、水を抜いた川のような跡がそこに現れた。


 ここがのちに世界最大の深さと長さを誇る大運河になり、数々の冒険者や商人が利用する動線になるのはまだ先の話である。



ものすごい突風で崖の上に建つ小さな家が揺れた。この家にただ一人で住む女が眠い目をこすりながら窓の方に近づく。


『え、何が起こったの!?』


 つい声が出てしまった。目の前に広がるいつもと違った森の形状に驚き、それが誰のせいなのか瞬時に理解した。そこには森のどの木よりも大きく、手を伸ばせば月にも届くであろう大きな存在が浮かんでいた。窓からではその正体を正確にとらえることはできない。


『何アレっ』


 彼女は家の外に出てその正体を確認した。角から上は雲に隠れよく見えないが、完全にこの世の生き物ではないのは確かだった。


 彼女は思考が停止し、状況が整理できずに固まっていると、その恐ろしさの化身は何かを感じ取ったのか、こちらを向いた。悪魔と目が合った。そんなことをこの距離で思うはずもない。だが、間違えなく目が合ったと確信した。その瞬間 本能的に死の危機を感じた彼女は全力で家から離れるように走った。


『森に入って身を隠さなきゃ』


 そう言いながら彼女は禁術の最大防護魔法を唱えた。


 彼女が森に入った瞬間に地面は崩れ落ちた。地面が割れ、彼女は落ちた。家が建っていた崖は跡形もなく無くなり。森は痕跡すら思わせないぐらい崩れていた。


 この女1秒、いやあと0.1秒でも防護魔法を使うのが遅かったら黄泉の国に向かっていただろう。


 そして彼女は防御魔法を張っていたが、衝撃に耐えきれず気絶した。かつてそこにあった地面とともに落下していった。



 彼女は目を覚ますと全身が痛みで動かせなかった。


『何とか命だけは助かった』


 そういうと彼女は治癒魔法を自身にかけた。全身が動かないほどの傷を受けたのだが、魔法のおかげですぐに感知した。彼女は座り込み、両手を思いっきり伸ばすした。


『イタァッ、どれぐらい寝ていたんだろう』


 彼女は上を見上ると薄暗い光を感じた。


『もう夕方だわ』


 顔を崖から突き出し下を除きこむとそこがすごく深い穴だと気づいた。彼女が居た場所はまさに崖っぷちだった。


『一番下まで落ちてたら死んでたわね』


 彼女は二本の指をくわえ”ぴゅ~~”と鳴らす。すると数分後に大きな鷹が空から現れ彼女の横に姿勢を保ち浮遊した。


『生きてたのね。ホーク!』


 彼女はその鷹に飛び乗った。彼女を乗せた鷹は穴を抜けるように上に飛んだ。光が徐々に強くなってきた。そして、彼女は異変に気付いた。


『え、今ってこんなに明るいの!どんだけ深かったのよ』


 彼女は穴を覗き覗き込み、その深さを改めて実感した。そしてようやく穴を抜け出した。


 『噓でしょっ。この穴って、私の家が建っていたとこよね。アレがこの穴を作ったの⁉』


 そこには底の見えない半径10キロほどの穴があった。


 彼女はホークに地面に降ろしてもらうと、腰に付けた小さな角笛を取り外し、軽く吹いた。数分後、凄まじい速度で森から足が6本ある馬が飛び出して、彼女の元に駆け寄ると彼女の顔をなめまわした。

『久しぶりね。スレープ。わかったから、ちょっとやめてよ』


 彼女は久しぶりの友人に会えてうれしそうな表情を浮かべていた。そして、彼女は馬にまたがると森の中に消えていった。


 この馬が数々の戦場を駆け、のちにスレイプニルと恐れられる馬になる話はまた別の機会にするとしよう。



 彼女は一番近くの街”タイナル”に向かってスレープを走らせていた。普通の馬での移動ならば3日はかかるところをスレープは4時間で街についた。


 やはりこの街も襲われており、かつて繁栄をしていた街の様子はどこにもなく、ただ大きなクレーターが何個も広がっているだけだった。


 『なんてひどい、祖国が心配だわ』


 彼女は急に故郷が心配になった。そして、落ちていた石を拾い地面に魔方陣を描いた。


 『ホーリードラゴン!!』


 そう叫ぶと魔方陣の真ん中から火を噴く真っ白なドラゴンが現れた。


 彼女はドラゴンの背中に乗ると、太陽が沈む方に真っ直ぐ飛んで行った。



 彼女の生まれ育った王国”ハレック”は、川がところどころに流れていて交通手段は船を使う。別名”難攻不落の河の都”と呼ばれるほど、水を使った戦闘を得意としている。


 彼女が街を出たのは16歳のころ、幻獣使いとして頭角を現した彼女は国王にその素質を買われ任務を受けていた。任務遂行の旅の先で最愛の人と出会い、子供もいた。だが、幸せは永遠に続くものではなかった。話が長くなるので彼女の生い立ちについては省略するが、彼女が国に戻ってくるのは10年ぶりのことだった。


 彼女がドラゴンに乗り、現れると王国中は大混乱。なにせドラゴンは古に大賢者”アレナ”によって滅ぼされたのだから。


『ドラゴンの生き残りが襲ってきた!』

『早く逃げるのよ、船を用意して』


 戸惑う国民の声にいち早く気づいたのは国王だった。国王は空を見上げると、すぐに秘書を呼び出した。


『アマンダよ、対ドラゴン用マニュアルを大図書に取りに行け。そして、戦闘統括責任者、防衛最高責任者、幻獣スペシャリスト、古生物学者を城の広間に召集させよ』王がそう命じた。


 すぐに広間には円卓の机が用意され、すぐに全員が到着した。


『これより、緊急にドラゴン討伐の会議を始める!』王が威厳のある声で言った。



 王都が騒がしい時、故郷に戻った彼女は久しぶりに懐かしい所に寄りたい気持ちを殺して、王城の正門前にドラゴンの背中から少し高いが飛び降りた。そして彼女が指を鳴らすとドラゴンは消えた。


 門には門兵が2人、周りには王国に住む住人達が群がっていた。周りの住人は驚き彼女から離れるように後ずさりをした。彼女は少しそれを嫌がったが、すぐにそれどころではないことを思い出し、門兵に言った。


 『今すぐ門を開けて、国王に伝えねばならぬことがあるのです』彼女は開けるよう要求した。

 『ダメだ。ドラゴンを操る者よ、何やつか。名を名乗れ』もちろん門を開けてもらえるわけはなかった。


 彼女は腰に付けた巾着袋を取り出すと、プラチナのバッチを取り出し、門兵に見せた。


 『私はディビット国王直属に任務を依頼させている。ケイト・フェニックスである』


 バッチにはこの国の紋章が刻まれている。


 『プラチナのバッチ、それは最高職業熟練者にのみ与えられる称号。各職業において一番熟練だと王が認めた者にのみ送られる称号。失礼をお許しください』


 門兵が頭を下げ、膝を地面につこうとすると、もう一人の門兵が止めた。


 『いやまて、最上位戦力制度は9年前に廃止されている。プラチナのバッチを受けた者は全員死んだろ。あの事件を忘れたのか……』


 どうやら彼女が王国をでてすぐに最上位戦力制度は廃止られていたようだ。王国に戻っていなかった彼女はそれを知らなかったのだ。


 『プラチナバッチの誰かを殺して奪ったのだ』住人の誰かがそうつぶやいた。


 門兵2人が顔を見合わせ頷くと、次の瞬間、彼女は捕らえられた。


 『離せ、離せ。緊急事態なのだ』


 彼女の力は弱く、屈強な男二人に腕をつかまれては抵抗できなかった。


 『ようやくおとなしくなったか、牢獄に連行しよう』

 『ドラゴンの親玉を捕らえたなんて、きっと俺ら昇格だぜ』

 『やっと門の警備から解放だな』


 門兵は彼女を両方から抱きかかえ門をくぐって行く。


 中庭に差し掛かった時、彼女の上着のポケットからネズミのような生物が這い出てきた。ネズミは彼女の背中に回ると、右の門兵の首裏を噛んだ。驚いた門兵は彼女から手を放してしまった。そのスキに彼女は空いた右手で左側の門兵を振り払うと、王城の広間の門に向かって走した。


 広間に向かって走る彼女をちょうど通りかかった騎士が気づき、止めた。彼女は門まであと少しのところで捕まってしまった。


 『中では大切会議が行われているのです。どのようなご用件でここに来たのですか』騎士が聞いた。


 『私は…』


 彼女の言葉を遮るように門兵が叫んだ。

 『ロバート様そいつはドラゴンの使いです。今しがた捕らえたところを逃げられたのです』


 『もう一度聞く、君は誰だね?』騎士は門兵の声耳を傾けずに聞いた


 彼女はしっかりと騎士の目を見てこう答えた。

 『私は幻獣使いのケイト・フェニックスです。遥か彼方の東の森から参りました。ここに来るまでに見たものを王に伝えたく、ここを通してください。この国の存亡にかかわることなのです』



 討伐会議が始まろうとした時、扉を勢い良く開けロバートが入ってきた。


 『国王陛下。至急、伝えたいことがございます』

 『構わん。入れ』


 国王が許可すると、ロバートは王の元まで行き、ひざまずき耳元で何やら伝えた。国王はロバートの顔を数秒見ると、円卓に集まった者たちに対し


 『作戦を変更する』

 『対ドラゴンマニュアルを戻し、悪魔に関するすべての本をかき集めてこい』王は秘書に向かって言った。


『衛兵は国中の賢者を至急召集させよ』壁際に立っている兵にそう言い放った。


 そういうと王は下を見ながら立ち上がった。これから起こることを考えているのだろう。顔には血が通うっていないようだった。


『サム、国民の速やかな非難を誘導しろ』防衛最高責任者向かって言った。

『陛下、いったい何が起きたのですか』


 誰が聞いたのかは国王にはわからなかった。そのぐらい動揺していたのだ。そして、机を見つめこうつぶやいた。


『ここに悪魔がやってくる』



 『久しいな、生きておったのか、ケイト。帰ってこないので依頼に失敗し、死んでいたと思っていたが』彼女は円卓に座り王と話している。


 『私のことを覚えておいでなのですね』

 『あぁ、そなたのような素質にあふれた者はそう居ないのでな。それより、先の我が兵の無礼を許してくれ』

 『いえ、滅相もございません』

 『そして、先ほど騎士長の方から聞いた話なのだが、何を見てきたのだ』

 『はい。ちょうど、全員集まりましたね。それでは順を追って説明させていただきたいと思います』


 ケイトは彼女が遭遇した悪魔の話、この王国を目指している間に見た国や村、街などが消滅していたこと、すべてを国王とその会議に集まったもの全員に話した。



 『なるほど』


 それ以上の言葉は国王には浮かばなかった。


 『賢者たちよ、そなたらの意見を聞かせてくれ』王が賢者達に問いた。


 しかしすぐに答えれる者はいなかった。少しの間、皆の沈黙が続いた。その沈黙を破るように賢者の一人が立ち上がり国王に見せるように本を開いき話し始めた。


 『勝てる確証はありませんが、はるか昔に悪魔を封印したとさせる聖なる黄金の鎖はどうでしょうか』

 『だが、それは多大なる生贄が必要になる』白いひげをたわわに生やした賢者が反論した。

 『わかっている。だが、全員で死ぬよりは幾分かマシだとは思わんか』


 国王もどこか腑に落ちないような表情を浮かべて言った。


 『天秤には架けられんか……』国王は躊躇いつつも話を続ける。

 『致し方あるまい。すぐに準備に取り掛かれ、ビクター、エド、エミリア、アンは国の端にある4つの塔にそれぞれ登り合図を待て、悪魔はいつ現れるかわからん。衛兵を気球に乗らせ、常に周りを監視し悪魔が現れたらすぐに知らせるように。連絡が入り次第。儀式を決行する』


 『陛下、生贄はどうなさいましょうか』戦闘統括責任者が聞いた。

 悔しそうな顔をしながら国王は答えた。

 『生贄だが、国民の中から募るのだ。だが、兵の拡張を名目に”国のために命をささげる者”を募集するのだ。連絡が入るまで、塔近くの小屋に待機させておけ』

 『了解いたしました』


 『他に確認したいことがある者はいるか』王がそう言うとケイトが答えた。

 『悪魔が現れた際、私が時間稼ぎをいたしましょう。儀式には少し準備が必要だと思われます』

 『あぁ、そうしてくれると助かる』国王がそう答えると会議は終わったのだった。



 ケイトは王城の一室を与えられ、ベッドに腹ばいで寝転がり“悪魔と神の伝説”と言う本の”決裂”という章を読んでいた。ちなみに、この本の著者にこの話を伝えたのは私なので真実の話である。それを彼女は知る由もないが——————


                     ~ 第27章 決裂 ~


 かつて同じ場所に住み共に暮らしていた悪魔と神だったが、平和な日々は永遠には続かなかった。


 神の中で階級による差別が広まり始めていた時に事件は起きた。一人の最下階級の神が上位階級の神に刺されたことからすべては始まった。神が刺された現場をたまたま悪魔が通りかかった。刺された神に気づき、神に治癒の力を与え、刺された神は何とか一命をとりとめた。


 だが、刺された神はのちの調査で誰に刺されたのかと聞かれた時に『悪魔に刺された』と事実とは異なることを話したのだ。刺された神は、神のあいだで広まってた差別を共通の敵を作ることで無くそうと考えたのか、ただ単に神が創造した相手に命を助けられたことが気に食わなかったのか、あるいはその両方だったのか。今となってはわからないが、この言葉をきっかけにあの時の悪魔が調査を受けることになった。


 調査の結果、悪魔は刺しておらず、上位階層の神が刺したことが分かった。だが、神間での差別の事実を公にすることは創造主たる神として他の生物に示しがつかない。という理由でこの事件の真相は闇に葬られた。その代償となったのが、あの悪魔であった。真実をしる悪魔たちは猛反発したが、神により真実をしる悪魔は跡形もなく消されてしまった。そして、この事件は悪魔の神に対する攻撃で片付けられた。急に事件と関連していた悪魔、その友人などがいなくなったことに不信感を覚えた悪魔は多く、悪魔側から独自の調査を進めることにした。


 悪魔の調査が難航している間に、この事件がきっかけとなり神が悪魔に対する嫌がらせや暴行などが少しずつ行われるようになった。そして、悪魔側が真実にたどり着くころには、今までは同じところに住んでいた両者であったが住む場所変え、お互いのエリアの間に壁を築き、完全に二分化していた。


 悪魔が事件の真実を突き止め。事実を神側に進言したが、神上層部にそれももみ消されてしまった。もみ消されたことを知らない悪魔たちは真実を伝えたことで2種族の関係も良好に戻るだろうと考えていた。


 そんな時だった、神の神殿で雑用をしていた悪魔が、掃除中に上位階層の神たちの会話を聞いてしまった。その内容は"あの事件の真犯人が神である"こと"真実を知った悪魔を殺そうという内容だった。


 この話はたちまち悪魔の中で広がった。悪魔たちは怒りに沸き上がり『戦おう!』そう声を上げる悪魔が1人また1人と増えていった。そして悪魔は一致団結し神に反旗を翻そうと決まった。その中でまたしても事件が起こった。


 悪魔の反旗を知らない神は事件の調査を行った悪魔たちの下に神がやって来たのだ。神は悪魔に触れると悪魔を消してしまった。それを物陰から目撃していた悪魔は、仲間が神に消されたことを他の悪魔に伝えた。激しく怒った悪魔たちは戦いの準備を始めた。そして次の日の朝、悪魔たちは同時に壁を抜け、神を殺し始めた。


 だが、創造主である神を殺すことは容易ではなく、戦いは悪魔にとって圧倒的に不利な状態になってしまった。そして、人間時間で1時間もしないうちに悪魔の9割は消されてしまった。残りの1割は神に捕らえられ、絶対的脱出不可能の檻”魔界”に送られ、神に逆らった罪で何もない空間に永遠に幽閉されることとなった。


 その日から幽閉された悪魔は神への怒りが募っている。悪魔は神が創り上げたものすべてを壊したい。そう思う者も多くなっていた。


 その後、神の中でも神上層部のやり方に疑問を抱くものが増え神内で争いが勃発した。


                               第28章  神の二極化 へ続く



 決戦の時はすぐに訪れた。それはケイトが故郷に戻った次の日のことだった。夕暮れ時に警告の鐘が鳴った。ケイトはすぐに部屋を飛び出し、バルコニーへ走った。バルコニーに着くと、口笛を吹き大鷹を呼び出すと、背中に乗り王都の外まで飛び、空中にとても大きな魔方陣を書き始めた。


 魔方陣が書き終わるとケイトは体力を消耗し今にも倒れそうだった。だが最後の力を振り絞り叫んだ。

 『ギガースッ!悪魔から国を守りなさい』


 すると、魔方陣をくぐるように巨人が現れた。ケイトは大鷹の上で体力が無くなり倒れてしまった。ケイトを乗せた鷹は森の方に飛んで行き消えた。


 巨人は魔方陣から出ると街を破壊しないように王国の外に立った。この巨人、巨人界の中でも伝説と謳われるほどの巨大さを誇り、あの悪魔と同等の体格をしている。巨人が国の外壁の前に立ち数分後、悪魔は隣街の破壊が終わったのかこちらを見ると————————次の瞬間、巨人の前に立っていた。


 隣街から距離にして100Kmはある。その距離を一瞬にして移動して来たのだ。悪魔の移動による衝撃波はあまりにもすさまじく王城の上半分は崩れ落ち、街の高い建物は塔を除くすべてが崩れ落ちていた。


 巨人が悪魔の存在を認識し、腕を振りかぶろうとした瞬間だった。もうそこに巨人の上半身は無かった。そして街中には血の雨が降った。悪魔の動きは認識できる速さでは無かった。だが、巨人の残った下半身を見れば、悪魔に上半身を殴られ消し飛んだことは容易に想像できた。



 悪魔が巨人を倒す15分前のこと。


 『鐘が鳴ったぞ、準備にかかれ』そう戦闘統括責任者が言った。


 兵力の拡張のためという名目で集められた約1000人もの人々が中央の公園に移動させられた。集まったのはやる気に満ち溢れた少年たちばかりであった。その中央公園はちょうど4つの塔の中心部に位置している。


 公園に人が集まったことを確認すると、それぞれの塔の一番上にある強大な松明に火が灯された。そして、松明の前に設置してある特殊な鏡を通して、公園に光が差した。塔の光はそれぞれ別の場所を照らし、すべての光が灯ると陰の部分が模様になっていた。その影で大きな王家の紋章が浮かび上がった。


 紋章が浮かび上がるとすぐに地面が真っ黒になった。すると、無数の黒い触手が地面から生え、生贄の人々を地面に引きずり込んで行く。まるでブラックホールのようなその地面は全員を飲み込むと何事も無かったようにいつもの公園に戻った。


 代わりに4つの塔が地面から徐々に汚染されるように黄金の輝きに包まれた。その黄金の輝きは塔の頂点まで来ると、さらに上空に鎖の形状で伸びた。そして、その光の鎖は上空に伸びきると、中央の公園に向かって伸び、クラーケンの触手のようにうごめいていた。その鎖は1本では無く1つの塔から1本、また1本と鎖が伸び続けている。ちょうど赤い雨が降った時、すべての鎖が生成した。1つの塔から数十本の鎖が伸びている。


 公園に向かっていた鎖は鎖の生成が終わると、一斉に街の外にいる悪魔めがけて伸びて行き、悪魔に絡まるった。だがそう簡単に動きを止めることはできない。悪魔の腕に鎖が巻き付いても、腕を振り払うと鎖は引きちぎられてしまう。だが壊れた鎖はすぐにまた生成し永遠に悪魔に向かって伸びる。悪魔は鎖に引っ張られ街の中へと少しずつ引きずられている。


 数時間の格闘の末に何とか悪魔を押さえつけることに成功した。悪魔は取り押さえるまでに街を破壊し、最終的に中央の公園で拘束された。そして、塔から新たな光の鎖が生成した。その鎖は先端が鋭く、剣の様になっている。その剣の鎖は何十本も同時に悪魔めがけて伸び、すべて悪魔の身体に突き刺さった。


 『グアアアアァァア』悪魔が叫び声をあげる。


 そして新たに何本も何本も突き刺さる。誰が見ても悪魔を追い込んでいたのは確かだった。


『良し、これで悪魔を倒せるぞ』

『街はめちゃくちゃだが、またみんなで再建すればいい』


 そう塔に上っている賢者たちから勝利を確信する声が聞こえた―――――――――――――。



 今思えば悪魔を追い詰めたことが過ちだった。あの時、一瞬で殺せなかった時点で我々に勝利は無かったのだ……。悪魔を追い込んだことで、悪魔を怒られてしまった。


 悪魔は身体に力を入れ刺さった剣を抜きとばした。そして青い血を身体の至る所から流しながら、全力で空に飛び立った。


 『神に創られた劣等種族が。図に乗るな!』


 怒りにより今まで以上の力になった悪魔は紫色のオーラをまとっていた。


 悪魔が飛んだことで、新しく生成される鎖は悪魔を狙い上空に伸びた。だが悪魔のオーラによって身体に到達する前に破壊されてしまい届かない。


 “我に傷をつけたのはお前たちが最初で最後だろう。劣等種族が頑張ったものだ。お前たちには敬意をもって我のフルパワーで殺してやろう。” 国中の人々の頭の中で悪魔の声が鳴り響く。


 悪魔の声は頭が割れるように痛く、中には痛さのせいか恐怖のせいか失神する者も数えきれないほどいた。


 怒った悪魔は空中でさらに強大化し、腕突き出し王国目掛けて急降下をした。あまりにも速い速度で空気が割れる音が轟いていた。誰もが間違いなく死ぬと確信した。


 だが、空中で悪魔の拳を何かが止めた。拳が止まると、風圧のみで城下街の家はすべて崩れ壊れた。そして地面には亀裂が入った。


 『我のこぶしを止めただと……』悪魔はつぶやいた。



 住人は城の真後ろにある地下に避難していた。地上では悪魔が暴れており、その振動が地下にも来る。


 『ママ、怖いよ』まだ小さい女の子がお母さんに抱きつく。


 女の子の母親”エミリー・ベル”は夫婦でパン屋を営んでおり、王国一のパン屋と言われるほどの人気を誇っていた。エミリーは何かを感じていた。抱き着いた娘をはがし目線を合わせ言った。

 『パパの言うことをしっかり聞くのよ』

 『あなた、許してね』そう夫に言うと消えた。



 そして空中にエミリーが現れると悪魔のこぶしを手で止めた。


 エミリーは先ほどまでとは明らかに違う見た目をしていた。背中からは大きな白い翼が2本と小さな白い翼が2本生えていた。


 悪魔の拳を止めた彼女の手から光が出ると、触れていた悪魔の腕を消滅させた。


 悪魔は表情一つ変えず、残った左手でエミリーを殴り飛ばした。もろにパンチを食らったエミリーはいくつも山を破壊しながら1万Kmほど飛ばされた。ようやくパンチの力を感じ無くなった頃すぐにエミリーは転移魔法で再び悪魔の前に舞い戻った。


『その翼はお前天使だな。天使と戦うのは初めてだ』


 悪魔がそう言うがエミリーは何も答えなかった。いや答えられなかった。悪魔の打撃の衝撃で一時的に声が出なかった。


 (久しぶりの力でまだ上手く扱えてないわ。それにしてもなんて力なの。ここで戦っては街が持たない。場所を変えなきゃ)


 エミリーは悪魔の腹に高速で突進し、悪魔を大気圏ぎりぎりのところまで連れて行った。


『なっ…、何をしたんだ』悪魔は驚きか隠せなかった。


悪魔がエミリーに殴りかかるが、すべて避けられてしまう。


 『さっきは油断して拳を貰いましたが、次からはそうはいきませんよ』

 『ほざけっ』


 そう言うと悪魔の拳はどんどん早くなっていった。


 (くッ、拳が早くなった。これは少し不味いわね)

 『どうした。避けるばかりでは俺は倒せんぞ』悪魔は高笑いをした。


 悪魔の拳はさらに速くなり、ついにまたエミリーに一発当たってしまった。そしてまた飛ばられた。だがとっさに起死回生のアイデアを思いつく。


(このまま転移魔法を使えば……)


 エミリーはパンチの圧力に耐えながらなんとか転移魔法を使うと、悪魔の前に現れた。勢いをそのままにして悪魔に突撃した。さすがの悪魔もこれは効いたようで少しよろける。だが、すぐに体制を直すとまたエミリーを殴った。


 3発目を食らいエミリーの意識が飛びかけた時、彼女は昔母に聞いたことを思い出した。


“もし天使の力を使っても大切なものが守れない時、自分の力が到底及ばない時、これを思い出して……”


 そして、エミリーは飛びかけた意識をハッキリ持ち直した。


『今がその時だよね。お母さん』そう言うと、首にかけえていたネックレスを外し壊した。

『な、なんなんだ。この圧力は』悪魔は今までの彼女とは違う力を感じていた。

『これは祖母が誕生日に母からもらったものよ。これを破壊した時、破壊した者は一時的に大天使の力を借りられるのよ!だけど、その代わりに役目を終えると消えてしまう……』


 エミリーは悪魔の前に立つと悪魔の腹に手を当てた。すると悪魔の腹には大きな風穴があいた。


『グハッ……』悪魔は口から血を吐く。

『それが大天使の力か』悪魔はそう言うとエミリーに殴りかかった。


 エミリーはそれをギリギリのところで避けると、悪魔の顔を1発殴打した。悪魔の顔は吹き飛んだ。悪魔は顔を無くしたがまだ攻撃してくる。


『すごい生命力ね』そうエミリーはつぶやいた。


 そしてエミリーは悪魔の後ろに回り込み、背中に手を置いた。悪魔が触られたことに気がついた時。それと同時に、エミリーの手から白い光が出て悪魔を包んだ。一瞬で悪魔を包み込むと光は消え、そこには悪魔は跡形もなく消えていた。


 『これで終わりね』そうエミリーがつぶやく。


 すると、エミリー身体はパズルのピースの様に徐々に崩れ始めた。


 『あの子なら大丈夫ね。きっと強い子に育つ・・・・』


 そう言うと彼女は消えていた。


 こうして王国に、いや地上に平和は戻ってきた。


ここまで読んでいただきありがとうございます!!

ブクマ、評価など頂けると嬉しいです。



章ごとに違うお話なので気になった章だけでも、どうぞ見て言ってください。


同じ世界戦の話なので繋がりはあったりなかったりしますが……。


個人的に好きなのは5章です。



よろしくお願いします。

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