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殺しの天才  作者: 迫田啓伸
53/134

5-8

 彼女はどういう子だったか。

 どういう人だと思いますか?

 まず、容姿はそれほどでもないです。俺以外の、普通の人が見れば「いや、ちょっと」というんじゃないかな。

 そう。実はそれほどの美少女ではなかったわけだ。

 はっきり言ってしまえば、不細工の枠に入るかもしれない。

 でも、俺には彼女が誰にも負けない美少女に見えた。外見ではなく、内面は今まで接してきた女の子の誰よりもきれいだった。

 そう。

 俺は、こんないい子と今まで知り合うこともできなかった。このことなら、一生付き合っていける。

 そう思えた。生まれて初めてのことだ。

 人は外見ではない。それは真実であるはずなのに、いつからか見た目だけに重きを置く癖がついてしまったらしい。

 俺は、その子と帰り道を一緒にした。しかし、余計なものが出てきたのだった。

 親。そう、俺の親だ。

 俺の帰りが遅いので見に来たらしい。ふざけるなよ、何考えてるんだよ。馬鹿じゃないか?

 なんでくるんだ。そんなに俺が勝手に動くのがいやなのか?

 すぐに俺は彼女とわかれ、車で追い立てられながら家に帰った。

 その後、俺は彼女と電話での連絡を取り合ったが、それもすぐにできなくなった。

 そりゃ、彼女が中学三年で、受験を控えているということもあるだろう。


 実は俺は、いざ彼女ができても、何をしていいかわからなかった。

 ドラマなんか全く見たことなかったんだ。恋愛小説も、一度も読んだことがない。

 それに、言い訳かもしれないけど、相手は受験生だった。高校受験を控えているため、俺が邪魔するのもどうかなぁと遠慮してしまった。

 たまに連絡取るぐらいで、日時を指定して会うということはなかった。

 結果、その子は公立高校に合格。

 俺は、合格発表の日に電話をかけてみた。本人が出た。

「はい、……です」

「Sですが」

「あっ、先輩。お久しぶりです」

 電話の向こうで、明るい声が聞こえた。受験結果がわかり、ほっとしているところなのだな。

 電話先で結果を聞き、俺もうれしくなった。

 が、彼女は福岡地区の学校。俺は北九州地区の学校。時間的にもちょっとずれがある。

 それからしばらく、俺たちは取り留めのない話をした。どんな話だったかはよく覚えていない。だが、俺は話した。今までろくに会話ができなかった分を取り戻していくみたいに。

 このときだったと思う。

 俺は野球ができなかったことを、初めて人に話した。彼女はうんうんと相槌を打ちながら、俺の話を聞いていた。話の途中で質問をはさむが、それ以外は何も言わなかった。

 俺が一方的に話していた。

 家族からは不審に思われたことだろう。話している時間もそれなりに長くなっていた。

 俺が話し終えたとき、彼女はこう返事して来た。

「それじゃ、また別に好きなこと見つけたらいいじゃないですか。ひとつのことにいつまでもこだわってないで、もっと前向きに考えましょうよ」

 今考えれば、よく世間で言われていることだよな。

 でも、よく聞くからといって、それをよく理解しているとは限らないんだよな。

 俺と違って彼女はとても前向きだった。

 野球ができなかったのはつらいかもしれない、でも、そのときには戻れないし、それよりもこれからのことを考えればいいと思う。

 こういう内容のことを言われた。

 確かに、その通りだった。

 そのとき、俺は何かに対して、もうすっかりあきらめていたようだった。

 学校では雑魚扱いから、馬鹿にされるのまで、果ては希望していたことまで意外なまでに、あっさりと放棄していた。

 これが俺の日常だと思っていた。

 いや、それ以上に俺は誰かにこのことを話せたということに驚いていた。

 今までまじめにこんなことを話すことはできなかった。話したとしても、何かあれば俺を馬鹿にしようとしているやつらばかりだった。

 こっちが一生懸命でも、相手は面白半分に俺の話を聞いて笑う。こっちがいかに真剣でも、向こうは馬鹿にして、まじめに取り合わない。

「あっ、ごめんなさい。生意気なこと言っちゃって」

「いや、いいんだ」

「私、こうやってえらそうに説教する癖があって……」

 それからも、俺たちは話し続けた。

 絵を描くことが好きだった。

 中学では放送部で色々な機材を扱っていたと話していたが、高校では美術部に入りたいらしい。

 そして、保母さんになりたいといっていた。子供が好きだから。そのためには短大に行く必要があった。

 だが、彼女の親は大学にやりたいらしい。彼女のほうも大変のようだったな。

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