第二話 ~異世界~
[前回のあらすじ]
目を覚ますと、そこは見知らぬ草原だった。
記憶を失った主人公は、突如現れた蜘蛛のような異形の怪物に襲われ、命の危機に陥る。
絶体絶命のその時、頭の中に謎の声が響く。
「お前の心臓を俺に渡せ。」
生きるため、主人公はその契約を受け入れ、意識を失うのだった。
「ん.....ぅ...?」
重い瞼をゆっくりと開く。
気持ちの良い風が頬を撫でる。
草の匂い。
遠くから聞こえる、鳥の鳴き声。
「....生き...てる....?」
ぼんやりとした意識の中、ゆっくり体を起こす。
「痛く....ない...?」
痛みがない。
全身を襲っていた激痛も、腕から流れていたはずの血の感覚も消えている。
「....どういう事だ?」
自分の腕を恐る恐る確認する、そこには傷一つ残っていなかった。
「...夢...だったのか...?」
そう呟き辺りを見回す。
だが、すぐに違和感に気付いた。
見渡す限りの草原は、まるで何かが暴れた後のようだった。
地面は抉れ、草は薙ぎ倒されていた。
「....一体...なんなんだ...?」
そして俺は一旦その場を離れるために歩き出す。
(誰かにこんな所を見られたら犯人だと決め付けられかね無い。)
(そもそもこの場所に人がいるのかすら、この場所がどこなのかも何も分かっていない。)
(そんな場所にずっと居る理由もないからな。)
そうしてしばらく歩いていると、道のような所に出た。
「道...?」
(道があるなら、もしかしたら人が居るかもしれない。)
わずかな希望を胸に、俺はその道に沿って歩き始めた。
(それにしても、さっき目が覚めてから体が変だ。)
「やっぱりどこか怪我しているのか?」
そう思い自分の身体をよく見る。
(……服が、少し大きい?)
たしかに歩くたびに、肩からずり落ちそうになる。
「……?」
ずり落ちそうになった服を直そうと手を伸ばす。
その時__。
さらり、と何かが腕をかすめた。
「……え?」
視線を向ける。
風になびく、長い銀色の髪。
肩どころか、腰の付け根ら辺まで伸びた髪が揺れていた。
「……は?」
思わず一本掴んで引っ張る。
髪は確かに、自分の頭から生えている。
「な、なんだよ……これ……。」
心臓が嫌な音を立て始めた。
ここに来てから、理解できないことばかりだ。
(性別が変わった……?)
(女になったのか……?)
色々な考えが頭をよぎるが__。
???「おーい!」
突然、風に乗って誰かの声が聞こえた。
「……!」
人の声だ。
「人か……!」
さっきまで頭を埋め尽くしていた疑問は、一瞬で吹き飛んだ。
今は自分の体のことを考えている場合じゃない。
ここがどこなのか。
何が起きているのか。
それを知るには、人に会うしかない。
俺は声のする方へ駆け出した。
冒険者A「おい!そこの嬢ちゃん危ねぇぞ!!」
「ここら辺はクロウラーが出るんだ!!」
(嬢ちゃん……?)
思わず後ろを振り返る。
「……?」
誰もいない。
冒険者A「おい! 何やってんだ! お前だ、お前!」
「俺......?」
冒険者B「そうだ、お前さんだ! 早くこっち来い!」
俺は男の方へ駆け寄る。
近くまで来ると、男は安堵したように息を吐いた。
冒険者A「嬢ちゃん1人で何やってるんだ...。」
冒険者A「ここら辺は最低でも4人で行動しないとだぞ?」
「いや、それより教えてくれ。」
「ここはどこなんだ?」
男は怪訝そうな顔で俺を見つめた。
冒険者B「嬢ちゃん、本気で言ってんのか?」
冒険者C「ここはナティア王国の西平原だ。」
「...?」
ナティア王国、聞いた事もない国に俺は困惑する。
冒険者D「まさか嬢ちゃん迷ったのか?」
「あ、あぁ...そうだな。」
(恐らくここは俺の知っている世界ではない、じゃなきゃ説明出来ない事が起こり過ぎている。)
冒険者D「嬢ちゃん、迷ったなら俺達に着いて来るか?」
冒険者D「今から国境を超えてレイグラス王国に行くからな!」
(レイグラス王国、この国も聞いた事が無いが今は情報を集めるのが優先だ。)
「......そうさせて貰うよ...。」
冒険者C「ところで嬢ちゃん、名前はなんて言うんだ?」
(名前か......俺の名前ってなんだっけ.....)
(なら、今だけでも......)
冒険者C「おーい、嬢ちゃん?」
冒険者A「具合でも悪いんか?」
「いや、何でもないよ。」
「俺の名前は、ルア・アーク。」
「......よろしく。」
冒険者A「ルアか!よろしくな!」
冒険者B「俺はマハルだ!」
冒険者C「俺はリーグリム!」
冒険者D「俺はクラム!」
冒険者A「俺はオルセだ!」
(全員個性強そうだし大丈夫か...)
〈2時間後...〉
オルセ「よし!着いたぞ!」
「おぉ...!」
巨大な城壁。
石造りの街並み。
馬車が行き交い、剣を腰に下げた人々が笑いながら歩いている。
日本では決して見ることのない景色。
俺は、あまりの光景に固唾を飲んだ。
そして、この時ようやく確信した。
(……ここは、本当に異世界なんだ。)
第2話まで読んでいただき、ありがとうございました!
ついに主人公は、自分が異世界にいることを確信しました。
これから世界の秘密や契約の真実も少しずつ明かしていく予定ですので、ブックマークや評価をいただけると励みになります!




