序章 その5
うっ。
直視できないほど麗しいお顔…。
「そうですね…。美しい装飾で誤魔化していますけど、これでは何の役にもたちません。」
私の言葉にクロード様は深く眉を寄せうつむいた。
よほど悔しかったのか、手を強く握っている。
「なぜ、役に立たないと?」
クロード様はうつむいたままの状態で私に尋ねてきた。
もちろん、これからお話しますよ。
そうしようと思っていましたよ。
私は護符の魔方陣をクロード様に見せながら説明を始めた。
「護符は魔方陣の構図で善し悪しが出ることはご存じですよね?」
「あ、ああ。」
もちろん、こんなことはこの世界の人間であれば誰でも知っていることだ。
まぁ、魔方陣の構図が読める人は特定の人しかいないんだけどね。
「この魔方陣、肝心なことが書かれていないんですよ。」
そういいながら私は魔方陣のある部分を指す。
「肝心なこと?」
クロード様は眉を寄せ、私が指した場所を見る。
護符の魔方陣はそれほど複雑ではない。
円の中心に魔を払う印を書き、その印の周囲に古代語で守る呪文を書くのだ。
「この魔方陣、一見魔を払うような印が書かれてますが全然違います。それに周囲か書かれてる古代語の文字も全くのでたらめ、というか…。」
私はここまで言うと言葉を切った。
この先を言っていいのか若干戸惑われる。
私がその先を言わないことにしびれを切らしたのか、クロード様は目を細め鋭い視線を私に向けた。
うん、めちゃくちゃ怖い…。
「えっと…。」
その視線を前に私はついついしどろもどろになってしまう。
「そんなに言い辛いことなのか?」
クロード様の声は視線よりは幾分柔らかい。
「言い辛いといいますか…。なんというか…。」
私はそこまで言うと、クロード様にその護符を押し付けるように渡した。
「恋愛成就?」
私の言葉にクロード様はたちまち苦い顔になる。
まぁ、そうだよね。守りの護符と思って持っていたものが恋が叶うおまじないと同じなのだから…。
私だったら怒る。
そんなことを思いながらもチラリとクロード様を見た。
クロード様は苦虫をすりつぶしたような顔をしている。
ああ、なんか悪いことをしたような気になる。
もちろん、私は悪いことなどしていないのだけど、気分的にはあまりよろしくない。
「あ、あの…。お忘れかと思いますが、あなた様は先ほどまで意識が朦朧とするほどの状態だったのであまり興奮しない方が…。」
私は控え目にそう言ってみた。
それほど、クロード様の怒りがありありと見て取れる。
まぁ、怒るなと言っても無理な話だろう。
お読みいただきありがとうございます!
あとちょっとで序章は終わります!…多分?




