表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選ばれしオッサン、宇宙の最果てで『星喰い』を打倒する  作者: オリスケ
辺境星のモラトリアム
7/33

6節



     ――星域区画ZⅨ:F6LC7  宇宙の最果て――



 静寂を保つ、広大な宇宙。

 そこを一つの金属塊――アロイが、凄まじい速度で飛来していく。

 速度は既に秒速百二十キロを越えている。空気でも微量な粒子でも、衝突すれば立ち所に粉微塵になる驚異的な速度だ。通常の隕石の何倍もの速度で、アロイは宇宙空間を飛翔する。



 その背後の空間が、突如としてぐにゃりと歪む。

 漆黒の空間に現れたねじれ。その隙間から、神々しい青色の光が漏れる。

 次の瞬間、ねじれの隙間から、巨大な船が姿を見せた。横幅八百メートルに及ぶ、鳥を模した巨大な揚星艦"ヴェルダンディ"だ。

 恒星間航行を終えて三次元空間に帰着した"ヴェルダンディ"は、具に周辺情報を取得し、管制室に情報を集約する。



「フォトンドライバ活動収束。ケージ撤廃。通常航行シークェンス移行、問題なし」

「座標は区画ZⅨ:F6LC7。予測との乖離は軽微! 対象の目標可視地点を維持」



 アロイは依然として"ヴェルダンディ"の前方を飛行している。到達点を目前として、その無機質な銀色の輝きは、どこか大いなる意思を感じさせる圧力に満ちていた。



「対象速度、秒速百二十キロまで上昇。熱式エンジンの限界速度を越えています――いかがいたしますか、艦長?」

「現行維持で構わない。観測班に通電しろ。標的はもう間もなく()()するはずだ。アロイの着弾予測位置とその情報を探れ」

「了解!」



 漆黒の鎧に身を包んだ艦長の指示で、各スタッフが情報の統制に向け動く。

 バケツをひっくり返したような騒ぎの中、後方のドアがスライドし、スウィニーとゼルが現れた。未だ年若いゼルを隣に並べていると、まるで親子……いや、人身売買を行う怪しい商人のようにも見える。

 スウィニーはうきうきと踊るような足取りで、艦長の隣に並ぶと、唇を吊り上げて笑う。



「いやぁ、長旅もこれでおしまい。お宝が見つかるといいねえ、艦長殿」

「静かにしていろスウィニー。お前がいると空気が壊れる……準備はもういいのか?」

「お嬢様の着付けに少々手間取ったけどね。命令一つでいつでも動けるよ」

「そうか、ご苦労」



 艦長は前方のスクリーンに向き直る。ちょうど、観測班からの通達があった所だった。



「観測班が着弾予測点を確認。映像、来ます!」



 張り上げられる声と一緒に、スクリーンにその映像がアップされた。



「……本当に、星があったんだ」



 ゼルが思わず声を上げる。

 美しい緑を持つ、小さな星。宇宙資源などゼロに等しい最果ての虚空に、ただ一つぽつりと浮かぶ、命を持つ球体。



「最大円周八千キロの岩石惑星、誕生年は百二十億年前と推定」

「僅かながら水素主成分の海を確認。乱気流なし。大気組成、適正。基礎環境はボルドル十八星に類似しているようです……凄いですね、炭素生命体の生息するお手本のような環境です」

「距離はどうだ」

「約二十万キロメートル……着弾まで、およそ三十分です!」

「分かった。惑星の観測を続けろ。戦闘の前に、できる限りの情報を取得するんだ」



 艦長の命令で、再び管制室が慌ただしく動き出す。

 モニターには、緑の自然を讃えた小さな惑星が、緩やかな自転運動を続けている。

 最果ての惑星に向けて、銀色の金属塊が、一目散に迫る――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ