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年下男子はお断りです!  作者: 篠宮かおる
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⑷強く賢く美しく

ノア様は今も昔も美しくお強い方だ。


「ノア様、今日は早いおかえりですね。どうされましたか?」


久しぶりに学園に登校されたノア様は、何時間も経たないうちに寮の、自分の部屋に戻ってきた。


「今すぐ貴方達はパンドュース家に帰りなさい。」


「なにかございましたか?」


久しぶりの学園、久しぶりに会うご友人。楽しみにしていたと思われたのに、どうも様子がおかしい。今だって、朝はあんなにルンルンとしていたのに表情は固く、顔色も少し悪い気が…


「……ようやく、ようやく自由になれたのよ。私は今からここを、国を出ます。」


「お嬢様、もしやお嬢様がこの前言っていたことが現実になったのですね。」


(この前言っていたこと?ココリアさんはお嬢様の異変の理由を知っているのか?)


なにがどうなっているかは分からない。ただ…


「ノア様が学園を、国を出られると言うのであれば、俺はノア様にどこまでも付いていきます。なので、その命令に応えることは出来ません。」


例えノア様がどこに行こうが、俺はノア様の傍にいたい。その意志だけは変わらない。


「この国を出た私には、お金も環境もまともに貴方達に支払うことはできないわ。何が起こるか分からないのよ。」


「尚更ついて行かないという選択肢はありません!ノア様は優秀でお美しく、お強い方です。しかし1つ欠点をあげるならば、少々天然で間が抜けて…」


「誰が間抜けですって。」


「拒否されても、俺は自分の意志を貫きます。最悪身を隠して、気づかれないようにしますから。」


「それ、私に言ったら意味が…」


パンパンと手を叩くココリアさんはいつもと変わらず冷静だった。


「そうと決まれば、早々にここを出ましょう。10分以内に準備をしてください、ユラン。私は、お嬢様の体調が再び悪くなったため一旦屋敷に帰るという名目で馬車を呼んできます。…ユランも私も意思が固く、説得などしていると時間がいくら合っても足りません。ですのでそれでよろしいでしょうか、お嬢様。」


「ココ、リアもついてきてくれるの?」


「もう一度お嬢様の傍に居られる許可を得た時から、決めておりました。足でまといになった時は見捨てて構いません。囮でもなんでも致します。ですので傍に居させてくださいませ。」


「私は、私は幸せ者ね。2人も味方がいるなんて。ありがとう、ココリア、ユラン。」


蕾が花開くように、固い表情も顔の気色もやわらぎ、いつものノア様に戻っていった。


※※※


ノア様になにがあったのか教えてもらったときには、既に船の上だった。


俺たちをのせた馬車は無事学園をでて、屋敷ではなくヒンドュー伯爵領に向かっていた。ノア様が体調不良でしばらく学園を休んでいたこともあって、あっさりと帰宅が許可されたのが大きかった。港にはたまたまドバードさんがいて、たまたまこれから出港する船があってと、スムーズにことは運んだ。スムーズすぎて怖いくらいだ。


「まっさか本当に頼まれた通りになるとはな。いやー、驚いたぜ。」


「私もよ。予定ではもう少し先のことだったのに。」


どうやらノア様は今回の自体を予想していたらしい。夏休み中、この方に会って荷物をお願いしていたことの意味をようやく理解した。


それにしても、あの殿下が婚約破棄を人前で宣言するとは。5年、5年俺はあの2人を見続けてきた。そんな俺の目には、殿下はノア様を好いていたようにしか見えなかった。

でも今、こうしてノア様は破棄され国を出ている。


いや殿下もだが、リュート様もだ。あのシスコンがノア様に冷たい目を向けること自体想像つかないのだが…一体なにが起こっていたのだろう。


考えても考えても答えは出ない。


「どうかしたの?ユラン。」


なら考えるのはやめよう。例えなにか理由があったとしてももう遅いのだ。今、ノア様は前を向いて生きていこうとしている。なら俺の役目はそんなノア様を傍で見守り、立ちはだかるものを場合によって排除するだけだ。


「いえ、これからの未来にワクワクしてしているだけです。」





「お嬢様とココリアさんとユラン君が!?え、私、なにも聞いてないんだけど!」


ノアは、いやココリアもユランでさえも忘れていたのだ。もう1人の使用人ターナのことを。ちょうどその日休みをもらっていたターナは、事の次第をパンドュース侯爵に聞き、1人項垂れていた。いや、ターナには養わなければいけない兄弟、家族がいる。だからきっと断っていた。


「それでも何か一言あっても良かったのに…」


同じ年のユランのことが好きだったのだ。一緒に働きだしてからこの2年、中々勇気が出ず、告白こそ出来なかったがそれでもこの2年間思い続けていた。


「気まずくなっても、伝えておけば良かった。」


思い出すのは、お嬢様を遠くから見つめるユランの優しげな顔だった。





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