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年下男子はお断りです!  作者: 篠宮かおる
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⑶別ゲーですか?

久しぶりに投稿しちゃいました。

今回はノアのおじい様とおばあ様のお話です。

「おじい様とおばあ様は政略結婚ですの?」


「え?どうしたの。急に。」


妻のクリオラと息子のランドの不仲により、今まで孫であるリュート君やノアちゃんとも会うことはほとんどなかったけど、ノアちゃんのお陰で無事2人の仲も元に戻り、ノアちゃんやリュート君が遊びにきてくれたり、こっちがお邪魔したりという時間が増えた。

今日は知り合いに会った帰りにお邪魔したんだけど、リュート君もランドも忙しそうで帰ろうとした時にノアちゃんに会ったのだった。


可愛い孫娘にお茶に誘われたら断る訳にはいかないでしょ。


「なんとなく、ふと思ったのです。おじい様とおばあ様は仲良しですから。」


殿下の婚約者であるノアちゃん。殿下から婚約の申し出をされたって聞いたけど、ノアちゃんはもしかしたら殿下のことを好きではない?だから政略結婚についての不安があるのかもしれない。


「そうだね。家のための結婚だったけど、クリオラのことは愛しているよ。」


「もっとおじい様とおばあ様のこと知りたいです!」


「うーん、クリオラにバレたら怒られそうだからね。でも、ノアちゃんが内緒にしてくれるなら話そうかな。」


「秘密にします!」


「ふふ、ありがとう。そうだね、僕とクリオラが初めて出会ったのは僕が学園を卒業した年だったよ。」



※※※


親に紹介されたのは、子爵とその娘。学園を卒業しても婚約者がいない僕に、贄を切らして婚約をするように言われてしまった。子爵家の娘、クリオラ=ブラウズ。学園では同級生だったものの特別クラスである彼女と普通クラスの僕、1度足りとも話したことはなかった。


「びっくりしたよ。まさか相手が君だったとは。話したことは無かったと思うけど、優秀なクリオラ嬢のことは知ってたよ。」


「そうですか。実は私も驚きました。女好きだと噂されていたパンドュース様に、未だ婚約者がいないだなんて。」


「あはは、そんな噂されてたんだね。確かに相談されたらのってたけど、女好きと言われるのは心外だなー。」


「自業自得では?」


表情が変わることはほぼない。いつも真顔で、澄ました顔をしている。女性と話してて話しづらいと思ったのは初めてだ。

娘の性格を知っているからこそ、僕が苦手と感じているのはなんとなく分かっていたのだろう。ブラウズ子爵は相手を妹のほうにかえるといったのはそれから2ヶ月後。


2つ年下のエレ二ーは可愛らしい。性格も穏やかで話しやすいタイプだった。


「そういえば、クリオラ嬢は元気?」


何回目かの彼女とのお茶で、ふとクリオラ嬢のことが頭をよぎり、問いかけた。しかし、彼女は困ったような顔を浮かべる。


「お姉様は…」


「何かあった?」


「お姉様は結婚されまして家にはもういません。」


「けっ、こん?誰と?」


思いがけない返答に驚いた。相手をエレ二ーに変えてからまだ1ヶ月しか経っていないのにもう結婚して家にいないだなんて、考えもしなかったから。


「ウォークマン伯爵です。」


「ウォークマン伯爵って、あの40代半ばの!その息子とかじゃなくて?」


「えぇ。ウォークマン伯爵はお姉様を一目見て気に入ったそうで、ぜひ、愛人になって欲しいと。」


「クリオラは断らなかったのかい?」


「はい。なにせ階級は私共より上ですし、お姉様は自分の行き遅れを気にしていましたから…以前、婚約者だった方に言われたそうです。こんな女を娶るやつなどいないと。その事もあり自棄になっていたのかも。」


「そう、なんだ。余程その元婚約者の方を愛していたんだね。」


「私もそうだと思ったのですが、どうやら勘違いでして。」


「勘違い?」


「えぇ。だってその元婚約者の方といるよりランドリュー様といらした時のほうが楽しそうでしたし、よくランドリュー様のお名前がお姉様から出ていましたもの。」


「え?」


楽しそう?いつも真顔で澄ました顔をしているのに?


「それこそ勘違いじゃないかな。クリオラ嬢はいつも…」


「ふふ、お姉様は分かりづらいだけなんです。平静とした態度を装っていますが、それはそれはランドリュー様との面会を楽しみに…すいません。余計なことを。」


「エレ二ー。君は僕と結婚をしたくないのかい?」


「いえ、そんなことありません。断じて!…ただ不公平ですから。」


「不公平?」


「はい。お姉様は世渡りが下手で、いつも勘違いばかりされます。そのせいもあり、今まで私が得をすること何度もありました。でも最後くらいは、正々堂々と勝負して見たかったのです。お姉様がいなくても、私は選ばれるのだと。最後に確かめてみたかったのです。もうその機会すら得られないでしょうから。」


「…」


ウォークマン伯爵の評判ははっきり言うと凄く悪い。愛人だって何人いるか分からないし、弱者が泣いて懇願することに興奮を覚える異常性を持ち合わせているらしい。自分より階級が下な愛人であるクリオラ嬢はきっといい扱いはされないだろう。そしてか弱いとは言い難い彼女が屈服する姿をみたいがために彼女を愛人として受け入れたに違いない。


「君たちは全て分かっていて、クリオラ嬢を送り出したのか?自分の家族がどうなろうとどうでもいいと。」


「私達は止めました。いくら金を積まれてもあの方はやめた方がいいと。ですがお姉様は聞き入れてくれませんでした…私達にはどうすることも出来なかったのです。」


まぁ、確かにあのクリオラ嬢のことだ。1度自分が決めたことに対して易々と意思を変えないだろう。


「そうか、だから母は彼女を選んだのか。」


今まで、なぜ母が子爵家の娘を相手として選んだかよく分からなかった。政略結婚とは家のための結婚。ブレイズ子爵家との結婚は、パンドュース侯爵家に全くと言っていいほど利益はないはずだった。

でも母はブレイズ子爵家を選んだ。きっと僕の幸せのために。


「さすが僕の母だ。」


「え?」


「エレ二ー。本当に済まない。今回のことは白紙にさせてくれないかな?」


「…お姉様の所ですか?」


「うん。」


「他の女性の名前を出されたらそれは許せないところでしたけど、お姉様なら仕方ないですね。ですが今更行ったところで、どうにか出来るとは限りませんよ?既婚とは言い難いですが、お姉様はもう人の物なのですから。ですから、もしお姉様との結婚が叶わないのならその時は私との結婚を真剣に考えて下さい。」


「エレ二ー。君は可愛いだけの女性じゃないね。クリオラ嬢がいなければ君との結婚を望んでいたよ。」


「ふふ、ありがとうございます。」


※※※


「お祖母様の妹君、つまり私の叔祖母に当たる方ですね。その方はお祖母様のことを慕ってらしたのね。」


「そうだね。実際エレ二ーはクリオラに負い目を感じてる部分はあったけど、それでも僕との結婚を機にその負い目も無くなった。そう言ってたよ。」


「で、その後どうなったんですか!」


「うんとね。僕はその後あらゆる情報網を駆使して、そしてウォークマン伯爵を摘発したんだ。」


「摘発。つまりその伯爵は悪いことをしてたのですね!」


「そう、よく難しい言葉を知ってるね。その伯爵は人身売買に関わっていたんだ。それに自分が気に入った子供を邸に閉じこめ、それは酷いことをして、大勢の子供を殺していたという最低最悪な伯爵なんだ。」


「まぁ!本当に最低最悪ですね!」


※※※


「クリオラ嬢、大丈夫か。本当悪い奴にかかったものだな。」


久しぶりにみるクリオラ嬢は酷く痩せていて顔色も悪く、顔には痛々しい青あざが出来ていた。きっと体の内にはもっとあるに違いない。


「な、んで邪魔を、したのですか。」


「邪魔って。君は分かってるのか!最悪死んでいたかもしれないんだよ。伯爵のそれは愛情なんかじゃない。ただ使い勝手が良い玩具で遊んでるだけだ!ボロボロになるまで遊ばれて、その後は雑巾のように捨てられるだけなんだぞ。」


柄にもなく言葉が荒れる。全く僕らしくない。そんなこと分かっているけど止められない。原因は、伯爵への苛立ちと、助けたと思った彼女に否定されたことであろう。


「それ、でも良かったのです。」


「それの、何が。」


「貴方に分かりますか!誰にも望まれない女の気持ちが!愛想もない話術もない、あるとしたら賢さだけ。その賢さが活用できるのは、結婚する相手が頼りない場合に限ります。普通は、誰しもそんな私より、愛嬌のある妹を選ぶに決まってます。家は兄が継ぎますから、私なんて必要ない。私の居場所なんて…」


「結婚して欲しい。クリオラ嬢。」


「…同情は、辞めてください。余計惨めな思いをします。」


「同情なんかじゃない。最初はまぁ話しにく苦手なタイプだと思ってた。それは事実だ。でも君のまっすぐ自分の道を貫くような頑固さは好ましいと思っている…僕の父親はさ、女癖が悪いんだ。だから僕は父のような人にはならないぞって小さい頃から思ってた。10歳の頃だったかな。婚約者とその友達の話を聞いてしまったんだ。」



『―――様ってランドリュー様の婚約者なんですよね?本当に羨ましいです。ランドリュー様ってとても美しく、優しいですもんね。』


『ふふ、ありがとうございます。』


『前はあんなにイグニオ様~!って言っていたのに、もうイグニオ様のことはいいんですか?』


『イグニオ様のことは今でもお慕いしておりますが、イグニオ様とはどうあっても結ばれることは無いでしょうから。これで良かったのです。』


『へぇー。まさか君が僕よりあいつのことを好きなんて知らなかった。』


『ランドリュー様!いえ、あの。これはただの世間話でして。』


『婚約は解消にしよう。大好きなイグニオの所へ勝手に行けばいいさ。』



「彼女の本音を知ったら、彼女が大嫌いな父親と重なりあって、嫌悪感が止まらなくなっていた。結局婚約は破談したよ。勿論向こう側は簡単に納得してもらえなかったけれど、そこは母が頑張ってくれてね。本当理解ある母で僕は幸せ者だよ。

…そんなことくらいでって思うでしょ?でも僕にとっては許せなかった。僕は誰になんと言われても彼女が好きだと答えるのに、彼女の心は本心では僕に向いてなかった。

それからは、開き治って色々な女の子と接してきたさ。結局結婚してもいいと思える相手はいなかったけど。さて。クリオラ嬢、僕は君さえ良ければ結婚したいと思ってる。勿論僕を生涯愛すことが条件だ。僕も生涯君1人を愛すことを誓う。ただその条件が破られれば、どんな目に合うかのリスクも考えて欲しい。何をするか僕でも想像つかないからね。」


「いい、のですか。」


「ん?何が?」


「エレ二ーのことは。」


「エレ二ー嬢が導いてくれたんだ。僕の結婚相手は貴方こそ応しいと。」


「わ、たしは、処女ではありません。伯爵の愛人として。」


「そんなこと僕には関係ない。もし君が伯爵の子を身ごもっていたとしても君を迎え入れるし、その子供も両方愛すさ。」


「でも、みんな反対されるんじゃ。」


「皆ってどこの皆を言ってるの?例え誰に何と反対されても変えることはしないよ…ごめんね。急ぎすぎたね。とりあえず今はゆっくり休んで。痣が全て消える頃には返事を貰えると。」


「楽しかったです。貴方とお話できて。柄にもなく、浮かれてドレス何しようかって悩んで。ただ楽しかったんです。妹、と変えられた時そうよねって納得して。だって妹は…私と違って愛らしいから。少し落ち込んでたんです。」


「それは結婚に対する答えとして受け取ってもいいのかな?」


「…貴方に惹かれて、きゃっ!」


「大切にするよ。クリオラ。」


※※※


ノアは思った。この祖父、ある意味異常だと。


(怖いよ。重いよおじい様。って言うか私のしらない別ゲーの攻略対象者じゃないの!こんなゲームみたいなこと普通起きないよ!)


例えそう思っていても決して口には出さない。大人の基本だ。


「おじい様は余程曾おじい様のことがお嫌いだったのですね。」


「僕は1人っ子だったけれど、僕には兄弟がどこかしらに沢山いるからね。何人いるかも定かではないけど。」


笑顔なんだけれど、笑顔の圧が凄い。なんとか話を変えなければ。


「エレ二ー様は今は?」


「あぁ。その後商人と結婚して、子供も3人いて幸せそうに暮らしているさ。今日もエレ二ー達に会いに商会に向かった帰りなんだ。」


「本当に仲のいい姉妹なのですね。私も会いたいです。エレ二ー様に。」


「エレ二ーも君に会いたいと思ってるよ。なにせノアちゃんとクリオラの初対面の時のいざこざ教えたらそれはそれは大爆笑して…」


「その話は初耳ですが?」


「ク、クリオラ。や、やぁ。」


「ノアさん、あちらの客間貸していただいてもよろしいかしら。」


「はい。」


「ノアちゃん、そこは断る所だよ?」


「あのおばあ様!あまりおじい様を叱らないであげてください。おじい様は政略結婚に不安を抱えている私に、政略結婚はそう悪いものではないとおばあ様との馴れ初めを話してくれただけなんです。」


「ラ・ン・ド・リュー!」


「あ、ごめんなさいおじい様。つい。」


「少し来なさい!!」


そうしておじい様はおばあ様に連れて行かれたのでした。


(うん?でもおじい様とおばあ様の場合、政略結婚というのかしら?ブレイズ子爵家側としたら政略かもしれないけれど、パンドュース侯爵家側は息子のためによりよい相手を見繕っただけなんだから。…政略結婚って難しいのね。)


ノア=パンドュース12歳の春でした。



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