62.最終話
「ただいま!ココリア!」
「おかえりなさい、ノア。」
「あのね、今日は賞金首を捕まえたんだ。みてみて今日の報酬。」
「すごいですね、さすがノアさん。今お茶とお菓子用意してきますね。」
「ありがとう!」
「姉さんがそんな褒めるからノアさんが調子に乗るんですよ。俺がどれだけヒヤヒヤしたか。」
「ユランは心配性なんだから。もうユランがいなくても1人前の冒険者として仕事をこなせるんだからね。なんなら証明しても…」
「ダメです!俺を1度でも置いていこうとすれば2度とギルドには行かせませんからね。」
「うぅー、分かってるわよ。」
「はは、相変わらず仲がいいね。アルセン兄弟は。羨ましい。」
「トニーさんの家族だって仲がいいくせに。こんな所でゆっくりせずにお家帰った方がいいんじゃない?」
「おいおい、客を追い出していいのかよ。」
私達はドバードさんの船に乗せてもらい、隣の国に向かった。宝石を売ったり、ドバードさんの知り合いにお世話になったりして生活の目処を立て、私とユランは冒険者となった。最初は薬草集めなどから始め、今では悪党狩り等も引き受けている。
ココリアはドバードさんの知り合いであり、最初お世話になったチルダさんが経営しているカフェ兼居酒屋で働かせて貰っている。事情が事情で説明も大変なので、私たち3人組は兄弟として通しているのだ。
やはり、冒険者の道は簡単ではなく大変な事がいっぱいあったけど、日々上達しているし充実した毎日を送っている。
「あ、ノアちゃん、おかえり。」
「クラスタ兄様。ただいま帰りました。」
変わったことと言えば、今年の春ココリアはチルダさんの息子さんと結婚した。クラスタ兄様は、ココリアより3つ下なのだけれど、ココリアへの愛を真っ直ぐに伝え、最初は断っていたココリアも遂に折れ、結婚することになったのだ。もちろんココリアもクラスタ兄様にどんどん惹かれていったのは確かなので両思いだ。
ユランもイケメンだし、冒険者としてはかなり有望なので女の子からの注目は集めているのだが、今のところ誰とも付き合ってはいないらしい。まぁそういう私もなのだが。やはり冒険者の女の子は中々モテないのだろう。
まぁ恋愛なんかで人生狂わされたくないからこのままでいいんだけど。
「おい、ココノア!」
「あ、あんたまた来たの?懲りないのね。それに年上を呼び捨てってどうなのかしら?」
「うるさい、俺の方が偉いからいいんだ。」
「はいはい。で、今日はなんの用かしら?」
突如店に現れた薄緑色の髪の少年は、実を言うとこの国の第3王子である。14歳になるにも関わらず、なんとゆうか俺様で、子供っぽい。いや、王子、グレンが大人っぽいというのか、大人過ぎただけで今どきの14歳男子はこういうものなのかもしれない。
たまたま悪人を追っていた先に、誘拐されたこの王子がいたのだ。助けたものの、こっちへの悪態がすごかったのでお説教なるものをしたら、敵対心を燃やされたのか偶に剣術を挑んでくるようになった。
自慢になるけど今のところ全勝である。
「…」
いつもなら勝負しろ!っていう彼が黙ったままなのだ。
「ガイ様?」
「母上がそろそろ婚約者を決めると。」
「あら良かったじゃない。普通はもっと小さい時から決まるものと思ってたけど中々遅かったわね。」
「…」
「それがどうしたの?」
「ココノア、俺の婚約者になって欲しい。」
「無理に決まってるじゃない。立場というものを考えてみて。いきなりどうしたの?そんなに相手のご令嬢が苦手なの?」
何故か、ユランやココリア、常連さんやクラスタ兄様までがため息をついていた。一体何事なのだろうか。
「俺、俺は、ココノアがす…」
「もちろん無理に決まっていますよ。なぜならこの僕がいるのですから。」
懐かしい声が聞こえた気がする。と思って、声のした入口をみると金色の髪の青年がニコニコ立っていた。
あれから2年は経過しているためか、記憶にあるより身長も声の音程もキラキラ度も変わっているけど、あれは…
「ね、ノア。」
「で、…グレン。」
「やっと見つけましたよ。」
間違いなくタリスミア王国第1王子、元婚約者のグレン
だった。
「いまさらなんの用ですか。」
「迎えにきたんですよ。」
「迎え?お父様やお兄様が迎えにくるならまだしも何の関わりもないグレンが何故ここに。」
「だってノアは僕の花嫁なんですから。」
「婚約を解消すると言ったのは王子のほうでは?」
「その件については、本当に申し訳ありませんでした。言い訳にもなると思うのですが…」
「聞きたくありません。私と貴方との婚約はもう終わってますもの。」
あとから思い出したことだが、断罪イベント前にお香事件というルートがある。ゲームでは悪役令嬢が攻略対象者に惚れ効果のあるお香を嗅がせることによりヒロインとの仲を裂くといったイベントだ。もちろん最後は愛により思い出すのだが、まさか学園中の生徒達に嗅がすとは…その効力にもヒロインの行動力にも驚かされた。
おかしいとは思っていたのだ。攻略対象者の気持ちの変化ならゲーム通りに修正されたとしてもおかしくない。だが悪役令嬢の取り巻きであるトルカまで私を避けたのだ。それならこれしか考えられなかった。まぁそのことに気づいたのは本当にだいぶ後だったけど。
「ふん、という訳だ。昔はどうだったか知らないが今じゃココノアは俺のものだ。」
「僕はノアを諦めるつもりはありませんからね。」
「上等だ!俺と勝負しろ!!」
「私はどちらとも付き合う気は…」
「ノア。」
「お兄様。なぜ…」
「…ノアは昔言ってくれたよね。なにがあっても僕の味方だって。覚えてる?」
「は、い。懐かしいですね。」
初めておじい様とおばあ様に会った時のことだ。おばあ様の発言にお兄様は傷ついて、だからおばあ様に喧嘩を売りにいって、そして。
「ノアは、そう言ってくれたのに、僕は、そんなノアを傷つけることを言ってしまった。本当に、ごめん。謝ったところで傷つけた事実は、変わらないけど、でも。」
「お兄、様、心配かけて、ごめんなさい。いきなり出ていって本当にごめんなさい。」
「ノアのことが、大好きなんだ。自慢の妹で、ずっと味方でい…」
「分かっています、分かっていますから。だって私もお兄様のことが大好きですから。」
2年ぶりのお兄様はさらに大人っぽくなっているのに、泣くのを我慢している様子が本当に愛らしかった。
「感動的すぎて入れないじゃないですか。」
「あのご兄弟は今も昔も仲良しですから。さぁ、グレン様の出番はないので元の場所へおかえりください。」
「なんだかさらに言葉に棘がありますね…」
「ノア様より何となく事情はきいています、がそれとこれとは別です。洗脳されたからといって、ノア様を傷つけたグレン様にはノア様のことをお任せできません。それならガイ様の方がノア様に相応しいかと。」
「ユラン、よく分かってるじゃないか。」
「絶対、絶対ノアは渡しませんからね。」
全くあの3人は、当事者である私を除いて何を言っているのだか。
これだから精神年齢が低い男共は。
結婚するならやっぱりお兄様みたいな、大人だけど偶に可愛らしい1面をみせる人がいい。
「お兄様、一緒にお茶をしましょう。その時、今まで何があったかお話しませんか?」
「うん、ノアの話も是非聞かせて。」
「勿論です!」
ゲームはもう既に終わってるけど、きっとこの終わりは悪役令嬢のハッピーなエンディングに違いない。なら最後に相応しいのは当然満面の笑みだ。
ご愛読ありがとうございました!なんだかんだ設定があやふやで、急展開などもありましたが、無事完結できてよかったなと思います。
番外編など入れさせていただこうと思うので、その時はぜひよろしくお願いします。




