52.誘拐された悪役令嬢
目を開けると暗くてよく見えないが、自分が今いる場所は自分の屋敷でも王宮でもないことは分かった。手は縛られているのか動かすことが出来ない。なぜ、こんな状況になったかを思い出そうとするが、さっぱり分からない。確か、私は王子の誕生祭に参加し、色々あって控え室に案内されたはずだ。そこから記憶になく、今の状況にある。新手のリアルな夢かと思って、床に頭を打ち付けてみると、凄く痛かったので夢では無さそうだ。
「コ、コリア?」
ハッと思い出し、彼女の名を呼ぶ。だってココリアは直前まで一緒に私といたはすだ。私がなにかに巻き込まれているのなら傍にいたココリアだってきっと…
「お、嬢様!目を覚ましたか!」
「ココリア。良かった。ねぇ、どういう状況か分かる?」
不謹慎だけど、今は1人じゃないことが分かり安心した。
「いえ、お嬢様が寝てしまった後、私も急に眠気に襲われたので。」
「そう、ココリア、怪我は?」
「大丈夫です。お嬢様こそお怪我はありませんか?」
「えぇ、縛られた手が痛いだけでなにもないと思うわ。多分私達は馬車か何かに乗せられているわよね。」
振動から自分達は動く乗り物に乗せられていることが分かる。
「だと思います。」
「なら最悪飛び降りましょう。」
「危険ではありませんか!」
「だって私達でさえ状況が分からないのよ。お父様方の助けは期待できないかも。それなら自分達の力で抜け出したほうがいいにきまってるじゃない。」
「そうかもしれませんが。…お嬢様はこの状況においても勇敢でいらっしゃいますね。」
「とりあえず縄をなんとかしないといけないわね。ココリアも手は縛られているのかしら。」
「縛られていたのですが、持っていたナイフで切る事に成功しました。」
「す、凄いわね。よくナイフ持っていたと思うわ。」
「お嬢様付きのメイドですから。」
「ココリアが起きてから、私達を誘拐した者は姿を見せにきた?」
「いえ、見ていません。私が起きたのもお嬢様が起きる30分程前です。」
犯人の目的はやっぱり金かしら?それとも私個人に対する恨み?
お金ならまだ助かる見込みはあるかもしれない。だって、私は人質だもの。殺したら価値がなくなるし。恨みなら確実に嫌な目に会うでしょうね。
「ココリア、この縄を解いてくれる?」
「分かりました。」
目も慣れてきて、近づいてくるココリアの姿を捕らえることができた。
「今向かいます。」
(そういえばスルーしてたけど、縄が解けていたのなら、ココリアの性格上、私の傍にくると思うんだけど。何かあったのかしら。)
暗闇にもなれ、近づくにつれココリアの顔が少し見えてきた。
「今縄を解きます。」
「ありがとう。」
「それにしてもお嬢様は本当に変わられましたよね。」
「そう、かしら。」
まぁそうでしょうね。ノアと私は真反対の性格だし。
「小さい頃のお嬢様は癇癪を起こすと使用人に当たり散らしていましたもの。もしあの頃のお嬢様が今この立場になっていたらひたすら泣いて謝っていたでしょう。」
「謝るって何をよ。」
「私は、お嬢様にはあの頃のまま大きくなって欲しかったはずです。」
「ココリア、ねぇ、どうしたの?何を言っているかわからないわ。あと話は置いといて先に縄を…」
ココリアの様子がおかしい事に気づいていた。誘拐されたことによるパニック的なものか、考えたくないけど、有り得ないけどこの誘拐にココリアも関与しているのか。
「本当に、どうして、どうしてですか!どうして変わられたんですか。変わるならもっと早く、自分の行いを見直してくれたら。そしたらサルパは…」
サルパ。そういえばこの前もココリアはサルパの名をだしていた。私はその人についてなにも覚えていないけど、動機はきっと…
「貴方もこの誘拐に関わって、いたのね。」
嘘だと言ってほしかった。否定してほしかった。
でもココリアは否定しなかった。
「こうでもしないとサルパが浮かばれません。お嬢様は自分の罪を忘れ、1人だけ幸せになろうとしている。そんなの…あってはいけないんです。」
「その方はココリアとどういう関係なの。私はその方に何をしたの。」
「サルパは…お嬢様のせいで自殺しました。」
頭を打つくらいの衝撃が全身に巡った。




