50.グレン様の誕生日
今日は王子の誕生日。この国では16歳が成人なため、今年の誕生日は知人を招き、盛大なパーティーが行われるのだ。それこそこの国の王太子となるものの誕生日なので、どの貴族の誕生日よりも規模はデカく、招待客も上位貴族から下位貴族と、参加人数も多い。
街では、お祝い事という名目で商品が値引きされるのでいつもは立ち寄れない購入出来ないものも手に入り安くなるため、平民も楽しみにしているらしい。
勿論値引き分は国家予算から引かれている。ゲームの世界と言う割には、本当よく作られているなと感心すらしてしまう。
「ノア。」
「お父様!」
学生も参加できるため、3日前より学園は休校をしている。そして参加する学生は帰宅してから準備を始める帰宅組と、ドレスなどの必要物品は夏の帰省時に持ってきておいて、そのまま参加するという居残り組に分かれる。勿論私は帰ろうかと思ったけど、トルカが残るというので、この3日はトルカと優雅に過ごしたり、1日ゆっくりという充実した日々を送った。
そして今日は生誕祭当日だ。朝早くから大勢来ており、城の入り口は馬車で混み合っていた。
「お父様!」
こんな人混みだ。お父様に会えるか不安だったが、無事合流できたようだ。トルカも男爵を見つけたらしく、一旦離れることになった。
「ノア。今日のドレス姿も美しいよ。さすが自慢の娘だ。」
「本当に似合っていますか?基本的に赤や黒しか着ないので似合ってないのではと不安に。いえ、王子が選んでくださったものに何か言いたい訳ではないのですが。」
この国では婚約者(男性)が有事の際に婚約者(女性)に自分の髪色や瞳の色のドレスを相手に送ることが多い。勿論全員とは言わないし、全員が自分の伴った色のドレスを送る訳ではないけど。
王子の瞳はブルー系にあたるので、今回用意してもらったドレスは淡いブルーのドレスなのだ。デザインが大人っぽいので気に入ってはいるものの、色がどうも合ってない気がしてならない。いや、ノアは性格はあれだけど綺麗な顔立ちしているから似合わない訳ではないのだけれど。
でも悪役令嬢なのに、ゲームでヒロインが着ていたドレスを着るなんて…まぁヒロインはノアと違って愛らしいため、ドレスのデザインも可愛らしいものだったけど、色や生地はまさしくヒロインが着ていたドレスである。
「分かってるさ。本当によく似合ってる。さすが殿下だね。」
「ありがとうございます。お父様。」
「ノア、綺麗だよ。」
「あ、りがとうございます。お兄様。」
いつの間にか後ろにいた兄に褒められ、顔が少し赤くなるのを感じる。やっぱりこの兄に褒められ慣れるのは無理みたいだ。小さい頃から幾度となく言われる言葉でも、綺麗とか可愛いとか言われるとドキドキが止まらないもの。
「それでは行こうか。」
「はい。」
※※※
国王陛下、王妃様の隣に第1王子であるグレンがすわっていた。王族に挨拶をするため、多くの貴族が控えている。勿論、挨拶は貴族の位が高いものから行うため、遅く来た私達でも順は早い。
「国王陛下、王妃様、本日はお招きありがとうございます。グレン殿下、お誕生日おめでとうございます。」
「よく来てくれた、ノアよ。今日は楽しむとよい。」
「ありがとうございます。」
「ノア、よく似合っています。」
「殿下のセンスがよろしいからです。ドレス、ありがとうございます。私には勿体ないと思うくらい素敵なドレスで、緊張してしまいます。」
「ふふ、全然そんな様子には見えないけど。僕と後で1曲踊っていただけますか?」
「勿論でございます。楽しみにしていますわ。」
ゲームで王子がエスコートしたのはヒロインだった。さらに大勢の貴族の前でヒロインと2回続けてダンスを踊るのだ。これは婚約者以外にしてはいけない行為で、蔑ろにされたノアは本格的にヒロインを虐めることになる。それこそヒロイン暗殺に向けてユランを雇うくらい。
まぁ、私は暗殺なんて絶対しないけどね。
※※※
「ノア、本当に綺麗です。」
「その言葉はさっきもいただきましたから、もう大丈夫です。」
「あれだけじゃ僕が物足りないんですよ。せっかくノアが、僕が選んだ僕の色のドレスを身にまとっているのですから、もっと味わせてください。」
軽やかな音楽とともに手を取り合い、王子と踊る。
「そう言えば、マティスから聞きましたが、ノアは一夫多妻制には反対なのですね。」
ダンスはそれほど下手ではないと自負しているものの、こんな大勢の中、見られまくったら誰だって緊張はするだろう。本当はダンスに集中したいのに、この王子はお構いなく話しかけてくる。これだから天才は…
「えぇ。私は愛されるなら自分だけを愛してほしいのです。ですので一夫多妻制には反対です。しかし、次期国王の妻としてはしっかく…」
「なら良かった。僕は貴方だけを愛します。なので、ノアも僕だけを愛してください。」
他の人には聞こえないよう耳元で囁かれる。これだけでも耐えられないのに、その内容が愛の言葉なんて。
気を張ってなければ大勢の前であろうと腰が抜けていました。いや本当にこんな大勢の前で、醜態を晒さないで良かった。
ちょうどいいタイミングで音楽が止んだため、王子に一言告げ、振りかえりもせず足早にその場を離れることにした。
更新にだいぶ時間が経っちゃいましたが、引き続きよろしくお願いします( ˊᵕˋ ;)




