44.ー閑話ー2人の出会い②
「うーん、どれがいいだろうか。さっぱり分からない。」
雑貨屋、服屋、アクセサリー、色々店を回ってみたけれどなかなか決まらない。
ベシャ
考えながら歩いていたせいで、前に何かがあることに気づかなかった。気づいた時には、何かにぶつかり何かが落ちる音がした。
「ちょっとあなた、どこ見て歩いてるの!ちゃんと前見てないと危ないでしょ。」
「あ、申し訳ありません。つい考え事をしていて。」
「ったくもう。」
ぶつかった女の人は、落としたであろうサンドイッチを拾っていた。
「気をつけなよ。」
「あ、あの弁償します。僕のせいで落としてしまったみたいですし。」
「いいよ、これくらい。食べれるから。」
落として、黒ずんだサンドイッチを口に含みながら笑みを浮かべる女性に、一瞬見とれてしまった。
「それでは。」
「あ、あの!」
つい自分から声を掛けてしまった。僕が呼んだせいで女性は振り返るけど、しまった、その後のことを考えていなかった。
「何か用ですか?」
「えっと、その…」
「私、忙しいので失礼するわね。」
「あっ…」
女性は本当に急ぎの用があるのか、急ぎ足でいなくなってしまった。
※※※
「で、何も買わなかったのかよ。」
「うん。やっぱり僕には難しかったみたいだ。」
「はぁ、お前ってやつは。」
「なぁコーク。」
「ん?」
「ある人の顔が忘れず、思い出すだけで胸がドキドキするんだが、これは…その恋、というやつだろうか。」
「はぁ!?」
「本でこの症状について色々調べたのだが、これが当てはまる気がして。」
「いや、割と冷静だな。お前にとっちゃ大事件じゃないのか。そんな真顔でいう内容じゃないだろ。てか相手誰なんだよ。」
「さぁ、分からない。」
「分からない?」
「街でぶつかった人で、名前すら知らない。」
「一目惚れかよ。それは探すのが大変だな。」
「…探しはしない。僕には既に婚約者がいる。それに、あの女性はきっと平民だ。母が許すはずがない。本当ならこの思いは僕の中だけに閉まっておいた方が良かったんだろうけど、でもどうしても抑えきれなくて。だからコークだけには聞いてほしかったんだ。」
「お貴族様っていうのは、大変だな。お前がそう決めたんなら何もいうことはないし、今のことは俺とお前だけの秘密だ。」
「ありがとう、コーク。君と友達になれて本当によかった。」
※※※
先週、俺にそういった友人はまた1週間後、俺を驚かせる発言をした。
「まてまてまて、聞き間違いかもしれない。もう1回言ってくれ。」
「あぁ、昨日初恋の人に再び出会って、告白してしまった。」
(聞き間違いじゃなかったのか。)
先週、恋に落ちた人がいて、でも絶対結ばれないことから諦めると宣言してた友人が、告白したと。
なかなか人の思いというのは、変えることが困難で、抑えきれなくなる気持ちは分かる。だから別の奴が言っていたことなら俺もここまで驚きはしない。
でも、今目の前にいるこいつは別だ。
最初はいけ好かないやつだと思っていた。身分を重要視して、下のものを見下すやつだと。でも一緒に居るうちにそれは勘違いということが分かった。周りの奴らがそうなだけで、上位貴族としての見栄とか誇りというものがランドにはない。いや、自分というものがないのかもしれない。いつもいつも言葉の行き着く先は「母が考えてくれていたから。」だ。自分で考えろよ!と何度苛立ったことか。
なのに、そんなランドが、諦めるといった矢先に告白したって。そんなの戸惑うにきまってんじゃねーか。
「で、でも婚約者がいるんじゃ…」
「ひとまず昨日、僕に好きな人がいること、なので結婚できないこと。また侯爵に謝罪にいくことについて手紙を出したさ。好きな人がいるのに、このまま婚約を続けることは出来ないからと。」
「行動はやいなぁ。それで?」
「直接あって話したいって言われて、授業が始まる前に会ってきて、彼女は賭けをしようかって。」
「賭け?」
「彼女も気になっている方がいるらしく、卒業までに2人とも想い人と結ばれたら、円満な婚約解消を。もし僕だけが結ばれたら、多額の違約金を。2人とも結ばれなかったら大人しく結婚する。」
「その婚約者だけが結ばれたら?」
「なにもないよ。僕も追求する気はないから、円満な婚約解消になるかな。」
「お前だけ条件重くないか?」
「元々言い出したのは僕だから。それに、マーガレットには幸せになって欲しい。」
「ふぅーん。割と仲がいいじゃねーの?」
「マーガレットは、僕にとってお姉さんみたいなものだから。」
俺は2人とも結ばれて欲しいと思いながら、2人が2人、望む結果になるとは思ってはいなかった。世の中はそんなに上手く行かないことをしっていたから。
そんな俺の予想を上回り、2人とも意中の相手と結ばれるなんてことを、1学年の俺が知る由もなかった。
次回本編もどります|ω`)




