37.悪役令嬢と秘密の荷物②
「話はわかりました。これからは私もご協力致しまします。」
「ありがとう、ココリア。」
「考えたのですが、マルチ船の方に預けてみるというのはいかがでしょうか。」
「マルチ船かぁ。」
あれは私たちが12歳の頃だったか。トルカの婚約者であるヒルド=ヒンドュー伯爵に会いに言ったとき、交易船を襲う所謂海賊というものがいた。その事に領主であるヒンドューが困っていたから、なんとかできないかと思い、なんとかしたのだった。
隣国の孤児の集まりらしく、孤児というだけで職につけない若者が、元商人であった男に拾われ、生きるために交易戦を襲っていたという。ということで私が伯爵に話をつけ、働き手を紹介したのだった。字や言葉遣い、仕事を覚え、最近交易船のひとつを任せられるようになったとか。
元商人の男ドバード=マルチの名をとってマルチ船という訳だ。
「お嬢様には恩もあるでしょうし協力してくれるのではないでしょうか。」
「そうね。相手の弱みを握って交渉する。これこそ悪役っぽいし。でも私がヒンドュー領にいくとトルカにバレちゃうかもしれないし、お父様も不審がるわよね。」
「なら手紙をだしてみては?マルチ船の誰かを近くまで呼び出したらどうでしょうか。お嬢様の名で出すと、返信が来た時に不審がられる可能性があるので私の名で私が出しておいたらなにも問題ないはずですが。」
「そうね、その方法でやってみましょう。」
その案にのり、ドバード=マルチ宛に手紙を出した。手紙には荷物を預かって欲しいということと、誰か1人こちらまで来てくれないだろうかというお願いをして、最後に誰のおかげで仕事に付けれているのかということを加えた。
「でも貴方自らいらっしゃるとは思わなかったわ。マルチさん。」
そして今日が会う日だった。マリベナに会いにいくように周りには説明し、非番のココリアと合流する形だ。護衛のユランだけにはどうせバレるので本当のことは話してあるし口止めもした。これなら誰にもバレない。
「そりゃ俺たちの姫たっての願いだからな。あんな脅し文句つけなくたって応じるに決まってんだろ。」
「姫っていうのはやめてくれる?私はただの平民なんだから。」
「あぁ、そうだな。でも俺たちの恩人にはかわらねーし。なんなら女神でも。」
「いや本当やめてくれる。」
「はいはい、分かったよ。で、荷物を預かればいいんだよな?」
「そう、1年以内には取りに行くから。」
「ふぅーん、これにはなにが入っているのやら。」
「中身をみたら命はないと思って。」
中には下着などが入っているのだ。年頃の娘だし、そんなの見られたら…恥ずかしすぎる。
「怖い怖い。それくらいならもちろんやらしてもらうぜ。本当に姫さ、じゃなくて嬢ちゃんには世話になったし。アイツらもさ笑顔が増えたんだよな。やっぱり奪うことでしか生きられない生活っていうのは受け入れようとしても心の奥底じゃ受け入れられなかったんだろうな。」
「貴方達は優しすぎるからね。向いてないのよ。」
「根が良い奴ばかりだからな。」
「貴方もよ、ドバード。」
「俺?」
「確かに私が職を紹介したかもしれない。けど、貴方が先に助けてなきゃ皆どっかで野垂れ死んでいたに違いないわ。」
「まぁ、そうかもしれねーけど。でもそれは自分の使いパシリが欲しかったからで。」
「ふふ、そんな理由で9人もの大人数を面倒みるかしら。もっと少なくても事足りたでしょ。」
「人数多い方が奪うのも早いだけだ。」
「まぁそういうことにしといてあげる。じゃあこれ、頼んだわよ?」
「はいはい。また今度アイツらにも会ってやってくれねぇか?」
「そうね、貴方がいなくても十分なほどには出来るようになったんだものね。」
「あと、なにかありゃ知らせてくれたら、俺たちはできる限り協力するから。」
「ありがとう、ドバード。頼りにしてるから。」
※※※
「今日はありがとうね、ココリア。おやすみだったのに。」
「いえ、お役に立てたのなら良かったです。」
「どうする?一緒に帰る?」
「いえ、少し用がありますので。本日はこれで失礼させていただきます。」
「そう、じゃあまたね。行くわよ、ユラン。」
「はい。」
簡単に説明はしたけどユランは不思議に思わなかっただろうか。なにも聞かれることはなかったけど。ユランにも話した方がいいのだろうか。ユランなら信じてくれると思うし、秘密は守ってくれるに違いない。
「また今度、話してみようかな。」
この時はまだ気づいてなかった。私はココリアのことをなにも分かっていないことを。




