36.悪役令嬢と秘密の荷物①
夏休みになったら、やらないといけないことがあった。パンドュース家にある私物を簡単にまとめておくことだった。ドレスなんかは要らないけど、下着や金になる宝石はどこにいくにしても必要だ。もしかしたら王家の監視もあって高価な物は持っていけないことかもしれない。だから前もって持ち出して置く必要があった。
ただ持ち出したものをそのときまでどう保管すべきか。
「うーん、どうしようかな。」
「何がどうしようなんですか?お嬢様。」
「ねぇ、ココリア。この国には、その、物を預かってもらう機関はないのかしら?」
「はぁー、えっと無いかと思います。」
「まぁ、そうですよね。」
銀行とかそういう機関があったら苦労しないよね。
「何をするつもりですか?」
「荷物をね。預かって貰いたくて。」
「荷物?何故でしょうか。」
「ほら、私この家でるから。」
「それなら王家の方々に。」
「違うのよ。ココリアにだけ話すんだけどね、私貴族じゃなくなるの。だから、その前に生きる糧を保って置かないといけないのよ。」
「……何を言っているかサッパリです。お嬢様はこれから王妃へとなられるのですよね?貴族じゃなくなるというのは。」
まぁこうなるとは思っていた。こんな話普通は信じられない。でも私が以前の記憶を思い出した時から傍にいてくれたココリアには本当のことを伝えたかった。
「ココリア、これは私たちだけの秘密。お父様にもお兄様にも言っちゃダメなの。そう約束してくれる?」
少し考える素振りをみせたが10秒後には頷いてくれた。
「私ね、これから断罪されるの。王子にいいよる令嬢に沢山嫌がらせをしてきたから。だからね、王妃に相応しくないって貴族の名を返上して、市民落ちか国外追放されるの。そうなった時に1人でも生きられるようにお金に変えられる宝石や生活に必要なものを、追い出される前に持ち出して置こうと思って。」
「それは夢でみた出来事なのですか?」
「夢、というより未来ね。小さい頃は未来が見えていたの。これは変えられない未来。ココリアだって学園での私の噂知ってるでしょ?」
そう、これは私たち、転生者だけが知る未来。夢だというと相手にされないから、小さい頃は未来が見えていたという設定にすることにした。中二病っぽいけど。
「だからお嬢様は殿下との婚約を快く思っていなかったのですね。お嬢様の言っていることはにわかには信じられません。ですが、お嬢様に嘘をつく理由はございません。私は信じます。」
「信じ、てくれるの?」
「嘘でございましたか?」
「いや、嘘じゃないけど、そんな簡単に信じてくれるとは思わなかったから。なに馬鹿なことをとか言われるかと思ってた。」
「お嬢様との付き合いも長いですから。何故泣いていらっしゃるのでしょうか!」
そう言われて初めて自分の頬を涙がつたっていることを知った。
(…ダメだな。年齢が幼いと精神年齢も幼くなっちゃうみたい。)
今まで、これからのことは同じ記憶持ちのマリちゃんとしか話すことはなかった。1人でも似た境遇の人がいるだけで幸せなのかもしれないけど、マリちゃんとはすぐ連絡をとることが難しいときが多く、話したい時に話せなかった。でもこれからはココリアがいる。その安心感が気を緩ませた。
「なんでもないの。ただ嬉しくて。ありがとう、ココリア。」
手で拭うけれど涙はなかなか止まらない。そんな私をみて、ハンカチを差し出してくれるココリア。それから5分程涙が止まらない私の頭をなにも言わず撫でてくれた。




