35.悪役令嬢と王家の方々
夏休みだからと行って勉強が無いわけではない。課題はあるし、王妃教育だってまだ続いている。
小さい頃は屋敷で家庭教師による勉強をおこなっていたが、この歳になると城にいき、王妃直々に指導されるようになった。
「はい、今日はここまで。ノアちゃんはやっぱり優秀ね。」
「勿体ないお言葉でございます。王妃様。」
「ふふ、こんな可愛くて優秀な娘がいて嬉しいわ。ぜひともお母様って呼んでくれないかしら?夢だったのよね。」
「エミリー様がいらっしゃるではありませんか。」
現王妃、カテリーヌ=タリスミア様には3人のお子がいる。長男で王太子であるグレン。長女のエミリー。次男のルドガー。
ゲームで下がいるとは知っていたが、1回も登場したことはなく、姿を知るどころか名前さえも知らなかった。ゲームの裏を知るというのは、ちょっぴり楽しい。
「エミリーもね、母上と呼んでくるの。ほら、グレンとルドがそう呼んでるから、自分も同じようにしようと思ったんじゃないかしら。だからね。ノアちゃんにはお母様って呼んで欲しいの!」
「もちろん、王妃様が良ければ2人だけの時はそのように呼ばせていただきます。」
「あら、どうして2人の時だけなの?」
「私はまだ婚約者。それなのに王妃様を人前でお義母様と呼ぶのは。」
「グレンとの婚約を解消することはないと思うんだけどな。それに、呼ぶことで周りのかたも意識するだろうし。」
王妃様はまだ知らないのだろう。王子がある伯爵令嬢に惹かれつつあるということを。そしてこの先私は断罪されて貴族の名を返上することを。
「念の為です。人生なにがあるか分かりませんから。」
「ノアちゃんって本当大人の考えしてるわよね。」
「そうでしょうか。」
「グレンの対応が気に入らなかったらいって?私が必ずグレンを矯正するから!もしそれでもグレンが嫌ならルドに乗り換えてもいいしね!その時はルドを王太子にしようかな。」
「それではルド様が可哀想ですわ。」
「次期王妃にはノアちゃん以外相応しい人はいないわ。だからね、グレンかルドと結婚して欲しいのよね。ルドだってノアちゃんのこと気に入ってるからそこについては問題無いからね。」
「王妃様にそのようにいってもらえて嬉しい限りです。ありがとうございます。」
(自分の息子より赤の他人の令嬢を気にしすぎではないだろうか。)
とはもちろん言えなかった。国王というのは素質も国を治めるための知力も必要だが、グレンはどちらも持ち合わせている。そんなグレンが、私なんかのために王太子の座を奪われるなんて…それこそ周りの貴族が黙っていないだろう。それに教養や礼儀は備えていても、王妃として国民に好かれる素質は私にはない。所詮悪役だし、三十路手前の売れ残りの女だし。
(やっぱり、私に王妃は向いてないなぁ。)
「母上。」
「あら、エミリー、どうしたの?」
金髪の長い髪をなびかせながら、王子に似た顔をしているけど、ドレスを身に纏っている女の子が部屋に現れた。
「お勉強は終わりましたか?」
「えぇ。終わったわ。」
「なら、ノアちゃんお借りしますね。」
「まだ話をしている最中なの。分からないかしら?」
「母上の話は長いんですよ。勉強が終わったならさっさとノアちゃんを解放してあげてください。ノアちゃん、一緒にお茶をしましょう!」
「私で良ければ。」
「なら私も参加しようかしら。」
「駄目でーす。母上は散々ノアちゃんとの時間を楽しんだでしょ?それに母上がいたらノアちゃんが無駄に気を遣いすぎてしまうますわ。さぁ、行きましょう!」
「僕も行く!」
「ルド様。」
「ノア姉と僕もお話したい!」
王家の方達はいい人ばかりだ。兄や息子の婚約者である私に対し、優しく接してくれる。嫁姑問題なんか微塵も感じさせないのだ。どの家もこんなんだったほのぼの過ごせていいのになぁと思う。
「皆さんでお茶をしましょう。人数が多い方が楽しいわ。」
結局その日は4人で茶会を楽しんだのであった。




