33.グレンとマティスの過ごす夜②
「グレン様ー!」
「なにかな?マティス。」
「カティー嬢がどうやらイジメを受けているようなんだ。」
「ノアが足を引っ掛けるってやつ?」
「いや、それ以外で教科書が破かれたり、私物が外に投げ飛ばされていたらしい。ノア嬢が関連しているかは知らないが、それとは別に今日ノア嬢が連れを何人か連れてカティー嬢と話をしていたところを見かけた。囲まれると話がしにくいだろうから1:1ですべきだと伝えると納得した様子で帰ったぞ。」
「その物を隠したりだとかは、ノアが命令していると思う?」
「ノア嬢ならそんなせこいやり方しないと思う。やるなら誰にも知られずに、もっと悪質な手段に出るだろう。引っ掛けてるっていう噂だって当てにはならない。第1、ノア嬢のことは俺よりグレン様のほうが詳しいはずだが。」
「買いかぶりすぎだよ。僕にはノアの考えていることなんか分からないさ。ただノアが自発的にそんなことをするとは思ってないさ。」
昔から変わった子だった。みんなが僕に向けてくる憧れや好意といった感情を一切僕に向けることはなく、いつも自分の道を真っ直ぐ進む。そんな彼女だから惹かれていったんだと思う。
「とにかく、話を聞いた以上俺はそういう卑劣な行為を許すことができない。カティー嬢のためになにかできないだろうか。」
カティー嬢とマティスとの3人でいることも少なくない。正義感の強いマティスのことだから、知り合いがそんな酷い目にあっている事が許せないのだろうけど。
「マティスはカティー嬢のこと好いているの
かい?」
「好いている?うーん、分からない感情だな。」
「最近、バレンタ先輩と仲が良いだろう?バレンタ先輩のことはどう思ってる?」
一時期ノアがバレンタ先輩にちょっかいをかけられていたということがあった。その際誰にも頼ることはなく1人で解決し、挙句マティスとバレンタ先輩を引き合わせることに成功していた。頼りにはなるし、威厳も教養も十分で、王妃に相応しい。だけど、僕としては…
「あぁ、可愛らしい先輩だよな!」
「好きじゃないのか?」
「好きかぁ。小説でいうと、ドキドキ苦しいだったか。うーん、苦しいと思ったことはないな。」
マティスは変わり者だと周りから言われている。空気は読めないし、真っ直ぐすぎる性格は相手を傷つけてしまうこともあった。そのせいで婚約者を泣かせ、解消になったこともある。
だけど本人は傷付けたという概念もないから改善しようもない。だから、人と関わることは少なかったと思う。そのせいか、感情まで疎くなってしまって…
(気づいてるのかい、マティス。可愛いと言っていることがどれだけマティスの中で価値があるのか。まぁ、それは自分で気づかないと意味がないから言わないけど。)
「とりあえず、生徒会の一員としてもイジメは見過ごせないなぁ。」
特進クラス上位2名は、生徒会に属するというルールがこの学園にはある。誰もが憧れる生徒会。その中に入れるものは特別なのだ。もちろん、1人は僕。もう1人は別のクラスメート。ぜひともノアと一緒になりたかったけど仕方ない。
「マティスはノアのことどう思っている?」
「ノア嬢?カッコイイよな。剣の腕も流石だし、どれだけ練習を積み重ねてきたのが分かる。彼女なら初めての女性騎士になれるんじゃないかと思うぞ。」
「残念ながら彼女がなるのは王妃だから。」
「もちろん知っているさ。ものの例えだよ。」
「ならいいんだ。とにかくイジメの件に関しては生徒会に上げておくよ。マティスはできるだけカティー嬢と共にいてくれないか。」
「分かった。ありがとう、グレン様。」
「カティー嬢は僕にとっても友人だからね。」
「じゃあ話を変えて、マリアンヌ=ツオールの新刊が出たので持ってきたぞ。」
「そうなんだ。これはまた買わないとね。」
最近平民の間で流行っているという恋愛小説。以前マティスに勧められ読んでみて、僕もハマってしまった。そのことをマティスは凄く喜び、新刊が出ると持ってきて一緒にみるようになった。男が恋愛小説を見ているというのは、やっぱり恥ずかしさがあるから、このことはマティスと僕だけの秘密。




