32.悪役令嬢とマティスの対立
ゲームの悪役令嬢ノアは、取り巻き共と一緒にヒロインのイジメを行っていた。暴言、物を隠したり捨てたりはもちろん、時には噴水の中に突き落とすこともあった。ただ今の私は、一緒に行動することはない。慕ってくれている者はいるが、適切な距離は取っている。
でもそれでもノアを理由にイジメは起きている。
「貴方のせいでノア様は、苦しんでいるのよ。分かってるのかしら?これ以上タリスミア様に近づくのはやめてください!」
ゲーム通り、ヒロインはご令嬢方に囲まれていた。1つ違うのはその中にノアはいないこと。私が行動を移さなくても、取り巻き共が勝手にヒロインをイジめるのだ。
いや、でもこれをイジメといっていいのかどうか。だって彼女達は正しいことしか言っていない。大体婚約者がいる相手にボディタッチなど普通することではないし、常識が疑われる。
(ゲームではそんなことするヒロインではなかったんだけどなぁ。)
「君達何してるんだ!」
「クロノワール様!別になにもしていませんわ。私達は常識を教えているだけで。」
「常識?そんな大人数で1人を囲んでするものなのか?」
マティスの言葉に、先頭に立っているアイセン伯爵令嬢は言葉をつまらせた。
「あら、クロノワール様。ご機嫌よう。ですが、私達は貴方ではなく、その方にお話があるのです。席を外していただけません?」
彼女らではマティスの相手は重いだろう。やはり悪役令嬢である私じゃないと。
「ノア嬢、君の指示でこんなことを?」
「ちがっ。」
アイセン伯爵令嬢の言葉を遮り、続ける。
「えぇ。私がアルヘルドさんにお話があったのですが、1人では心細くて。ですので、私がフラージュさん方についてきて欲しいとお願いしたのです。」
「さすがに人数が多すぎはしないか。」
「皆さん私のことが心配だっていって、わざわざ来てくださいましたのよ?私が断るなんてできないでしょう。さぁ、どいてくださるかしら?」
「マ、マティスさま~」
薄く涙を流しながら、マティスの服をつかむヒロイン。その手は少し震えている。可愛らしく、守ってあげないとと思わせる姿そのものだ。
「うーん、やはりこう裏でコソコソ何かやっているのは好きではない。という訳で俺がどく訳にはいかない!もし話があるなら1:1でするべきだ!」
さすがマティスだ。これをイジメとも思ってない様子。1:1なら言葉で詰めよってもいいと言っているようなものじゃん。まぁ人の裏を知らない彼にとっては、イジメというものがピンときてないんだろう。
「ではまたの機会にしますわ。アルヘルドさん、今度は1:1でお話しましょう。」
「ひぃっ。」とヒロインは怯えた様子をみせたが、マティスは満足気な顔だった。
※※※
取り巻き達を連れて、その場を離れるとアイセン伯爵令嬢を中心に謝られた。
「私の為を思って動いてくれたのでしょ?私はすっごく嬉しいわ。ありがとうね。でも、だからといって非人道的なことはやめてほしいの。私のせいで貴方達の手が汚れてしまうのは耐えきれないわ。」
「ノア様!」
よし、これで彼女達の好感度を多少上げることはできただろうし、これで手綱も取りやすいはずだ。
「ふふふふふふふふふ。」
さぁ、次はどう行動しようか。




