29.悪役令嬢だけど、積極的に手を下したくはありません
「いや、それ絶対私達と一緒だよ。」
「だよね。」
週末を利用して、今日もマリちゃんことマリベナのお家に遊びにきていた。気になるのは、ヒロインのこと。この前の歓迎パーティーでは、悪役令嬢である私が、足を引っ掛けてこかせるのだが、あの時、私は何もしていない。それどころか、ヒロインがすぐ後ろに居ることさえ気がつかなかったのだ。こかし用がない。それに、ヒロインと食堂や廊下でたまにすれ違うときに決まってヒロインはこけるのだ。もちろん、私は何もしていない。
『大丈夫?カティーさん!』
さすがヒロインというだけあって、交友関係も広く、周りの信頼も厚い。侯爵令嬢の私に文句を言う人はいないが、完全にその視線とコソコソ喋る声では完全に私を悪者扱いだ。
『だ、大丈夫。私がドジっちゃっただけだから。あはは。』
ヒロインの見せる姿が完璧なこともあり、これを見ている誰1人として、ヒロインの自作自演だとは思わないだろう。
まぁ私も、自分が手を下すのは極力避けたいから、願ったり叶ったりだ。
『元平民のくせに軽々しく王子に近づくのがいけないのよ。恥知らず。』
と悪役らしいセリフを吐いた後、まだ食べ終わって無かったけど、ここで居座るのは居心地悪いので退出する。本当に勿体ないことをした。折角の料理を残すなんて。当分食堂には近づきたくないと思ったのは最近だ。
「本当に断罪されたいのー?」
「勿論。」
「平民落ちなら私も嬉しいけど、国外追放されたら私にもおじいちゃんにも会えなくなるんだよ?」
「手紙くらいなら送れるでしょ。」
「ふぅーん。まぁ、前々から言ってたことだから、私は止めないけど。それにしても私達と同じかぁ~。1回話してみたいよね。」
「いやでもよく考えたら、相当性格の悪いただのヒロインかも…」
「そんなことあるwヒロインだよ?」
「まぁそうだよね。そういえば服ありがとうね!すっごく可愛かった。さすが働いているだけあるね。」
この前の約束通り、マリちゃんは平民に変装するための服を私に作ってくれたのだ。それがなんとも可愛らしいこと。アラサー手前の地味な私がこんなに可愛いい服を着ていることはちょっぴり恥ずかしいけど、ノアには良く似合う。
「気に入ってくれたんなら嬉しい~。やっぱり直接感想聞けるっていいよね。」
「本当、凄いなぁ、マリちゃんは。私にもこんな特技があったら、どこでもやって行けるんだけどな。」
「剣術があるじゃん。」
「でも、そこまでの腕かと言われたらそうでも無いし。料理も裁縫も人並み。そうだ、メイドなら出来そう。メイドの仕事も大体分かるし。」
「あーね。でもそんなことしなくても、誰かと結婚すればいいんじゃない?」
「うーん、いい人がいればかな。そういうマリちゃんはどうなのよ。いい人いるの?」
「私は誰とも付き合う気ないから。」
「どうして!?マリちゃん、こんなに可愛いのに。」
「いいのー。」
「ふぅーん。」
トントン
「ノアちゃん、お迎えがきたわよ。」
「分かりましたわ。おば様。ではマリベナさん、またお手紙送りますね。」
「楽しみにしています、ノア様。」
いつもはユランがマリちゃんの部屋に来るのに、今日は来ないことに違和感を感じていたけど、理由は直ぐに分かった。
「なん、でここに。」
「やぁ、ノア。」
マリちゃんの家の外には、庶民の服と帽子を身にまとった王子がいたのだ。




